熱のない部屋で

中道舞夜

文字の大きさ
48 / 69

第47話 嫉妬心

しおりを挟む
「え!!!そうだったの?」

早苗は驚いて顔を鈴木の方に向けようとすると、唇を重ねられてしまいそれ以上喋れなかった。

「ん……。」
「今は見ちゃダメ。」
意地悪く微笑んで鈴木がまた唇を重ねる。


今、早苗はソファで鈴木の足の間に座り、後ろから抱きしめられている。
包み込まれるように抱くので、早苗は手を鈴木の太ももに置き身動きが取れない。


30分前、食事が終わりソファでくつろいでいたがもっとお互いのことを知っていきたいと早苗は真剣な面持ちで鈴木に伝えた。


『私、浩太の事もっと知りたい。楽しさだけを共有するんじゃなくて、浩太の価値観や嫌だったことや悔しかったことも聞きたい。一緒に悔しがったり受け止めたい。』



最初は無言で手を組んで聞いていた鈴木だったが、早苗の言葉を聞き優しい声で言った。

「な、こっち来て。」


隣同士で座っていたが、手をひいて自分の足の間に座るよう促し、後ろからやさしく抱きしめた。首元を唇で触れるか触れないかくらいの絶妙なバランスで撫でてくる。くすぐったさと背中越しに鈴木の温かさが伝わってくる。


「なんかさ、今まで自分の弱みやかっこ悪い部分は見せたくないから思っても避けてきたんだ。だけど、早苗が一緒に受け止めたいと言ってくれて嬉しかった。気を張っていたわけではないんだけど、肩の荷が下りたというか少し楽になった気分。」


「うん。」


「滝さん、滝さん、って言うから最初はあまりおもしろくなかったけど、今こうして過ごせているのが滝さんのおかげなら感謝しなくちゃな」


「え!!!そうだったの?」


おもしろくないと思っていたなんて知らずに、早苗は驚いて顔を鈴木の方に向けようとすると、唇を重ねられてしまいそれ以上喋れなかった。


「ん……。」 

「今は見ちゃダメ。」


ゆっくりと舌をいれて絡め合わせる。二人はしばらくの間キスを交わし、互いの温もりを感じていた。 


「前に帰ってきたとき、早苗が滝さんと親しげに話しているのを見てちょっと嫉妬した。待たせるのは悪いから他の男と……って一時は考えていたのに、いざ自分が知らない男と早苗が楽しそうに話しているの見たら悔しかったんだ」


「そうだったの……?」


昨年末に鈴木が帰国した際に、社内で滝と話している時に偶然すれ違った。
その時、滝から『鈴木さん、僕のこと少し威嚇している感じがありましたよ。嫉妬したんじゃないですか。』と指摘された。


日頃から社内に敵を作らないように謙虚な姿勢で、常に感謝の言葉を口にすることを意識している浩太に限って嫉妬なんてないだろう。まして威嚇なんてありえないと思っていた。


『相変わらず、滝さんはするどいな……。』
 

そう思ったが口にするのはやめた。思ったことを言うと約束したがこのタイミングではない気がした。


「浩太も嫉妬とかするの?」


「……する。束縛とか男の連絡先全部消してほしいとかは思わないけどいい気はしない」


先ほどまで早苗の首に唇を這わせていたが、嫉妬していることを言うのは照れ臭かったのか顔を逸らしボソッと呟いている。


早苗は指を絡ませてから振り向き鈴木の顔を見た。鈴木は窓の方に顔を向けており横顔しか見えない。

「浩太?」


両手で鈴木の頬を包み込み、膝の上に乗りキスをした。


「……浩太、好き」


早苗は、もう一度名前を囁き微笑んでから深く口づけた。 普段は受け身な早苗が自分から膝にまたがりキスをしてくるので鈴木はドキッとしたが、甘美な響きにそのまま身を任せた。



早苗は、唇をゆっくりと離すと鈴木の首筋に顔を埋めた。 首筋から肩へとゆっくりとキスを落としていく。 早苗の体温が鈴木の肌をじんわりと温める。 


「んん……」

鈴木が声をもらすと早苗は上目づかいで見つめて微笑んでいる。視線の先が目ではなく唇をみているところがなまめかしい。


 鈴木は、早苗の髪を撫でてから再び唇を重ねた。 今度はさっきよりも深く情熱的なねっとりとしたキスだった。早苗の服に手をかけゆっくりと脱がせていく。 二人は舌や指や足を絡めあわせ甘い時間が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

紙の上の空

中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。 容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。 欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。 血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。 公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

処理中です...