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第53話 高鳴る鼓動
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「楠木さん、鈴木さん帰ってくるんですね。来期から日本か。」
誰のいないことを確認してから滝が話しかけてくる。まだ社内で公にはなっていないが、関連部門には情報が流れ一部の人は知る事実となった。付き合っていることは言っていないが、滝は多分気付いている。
「そうだね」
早苗は否定も肯定もしない。滝を信用していないわけではないが社内の人たちには報告する出来事が出来たときまで秘密にしておこうと思っていた。
鈴木は、引っ越し手続きもかねて12月下旬から年明けまで3週間ほど滞在する。その間はウィークリーマンション暮らしらしい。
引っ越し繁忙期前の2月末までには手続きを終えて3月は慣らし期間で4月からは本格的に日本勤務になるそうだ。
11月の末、2週間後には鈴木が帰国する。この日は、仕事終わりに電話をした。
「おつかれさま。」
「おつかれさま。新しい部屋、見たよ。素敵だね。」
鈴木が決めたと送ってきた物件情報を見ると、早苗の要望でもあったカウンターキッチンのある1LDKの部屋だった。ウォークインクローゼットもあり収納スペースも申し分ない。
「ああ、早苗が気に入ってくれるような部屋にしたかったからな」
「そういえば再来週には帰国だよね?年末年始はどう過ごすの?」
「引っ越し準備で忙しいと思うけど少しはゆっくりしたいな。早苗ともどこかに行けたら嬉しいんだけど……クリスマスと年末年始は空いてる?誰かと過ごす予定ある?」
「空いてる(笑)浩太と一緒に過ごせたらいいなって思っていた。」
鈴木は自分で聞いておきながら、早苗が素直に一緒に過ごしたいと言ってきたので、ニヤけてしまった。
「じゃあ、どこ行くか探そうか。」
「うん、嬉しい!」
二人はクリスマスと年末年始の予定を立て始めた。
クリスマスや年末年始は、どこも予約でいっぱいで高いため早苗の家で過ごし、帰国してすぐの12月の3週目の月曜日に有給を使い2泊3日で旅行に行くことにした。
旅行の手配は鈴木が、クリスマスの食事は早苗が担当することにしてお互いに任せた。
早苗は、料理教室でクリスマス向けのコース料理のレッスンがあったのでそこで学んだレシピを振る舞うことにした。いつもより少しいいワインも手配済みだ。
お互いに当日まで秘密にしようと話をしていたので、旅行の目的地は分かるが宿のことはまったく教えてもらえなかった。
『浩太、どんなところ選んだのかな?』
帰国して最初の週末。鈴木が計画していた旅行に出かけた。場所は、ずっと話に上がっていた温泉。観光地としても有名で外国人観光客も多い。温泉街の周りでは観光名所も多くありアクセスのしやすさも魅力だった。
「宿、ついたよ」
鈴木に案内されたのは、モダンな作りの昔ながらの旅館だった。高い天井に梁がむきだしになっており開放感がある。
造りは古いが隅々まで掃除が行き届き清潔感のある空間は高級感もあり洗練されていた。
「本日から2泊される菊の間でございます」
仲居さんから鍵を預かり部屋に入ると広い畳と出窓がある部屋に案内された。
「夕食は18時からとなりますので、それまでごゆっくりおくつろぎください」
そう言って出て行ったあと部屋の中を見渡す。小高い丘の上にある旅館で窓から見る眺望が美しい。晴れた日は街並みや海も見渡せそうだ。
「わーー。景色綺麗だね」
「そうだな。」
椅子に腰かけ窓の景色を味わいながらもどこか落ち着かない様子の鈴木を不思議に思いながらも、荷物入れや洗面スペースなどを見渡していく。
「あ!!!」
鈴木が落ち着かない理由を理解する。洗面スペースの奥にある浴室の扉を開くと大人二人が余裕で入れるサイズの内湯と景色を眺める用の小窓がある。
「……浩太?」
「ん?」
「なんかすっごく広いお風呂あったんだけど」
「う、うん。早苗は絶対選ばないと思ったから俺が予約した」
当日まで秘密にしていたのは、これがあったからか……。早苗はじっと鈴木の顔をみつめるが、視線を逸らされてしまう。
「……もーーしょうがないな。」
恥ずかしさはあるが、嫌ではなかった。本当のことを言うと実際に見てみたら、早苗自身も興味をそそられていた。
「本当?良かった。一度やってみたくて」
鈴木は安堵しギュッと抱きしめてくる。普段なら一緒にお風呂は恥ずかしくて入らないが、旅の恥は掻き捨てだ。
雰囲気のある浴槽と小窓からの情景を見たら、この景色を鈴木と見たくなった。結局、食事前、食後、朝と滞在中に何度も風呂からの景色を鈴木と楽しんだ。
年越しは、部屋で時計を見ながら年越しそばを食べて新年を迎えた。新しい年の幕開けに二人で過ごせることが嬉しかった。
何年も一緒にいるのに、二人で迎える年越しは初めてだった。
また新しい年が始まる。今年は鈴木が帰国して二人の時間が長くなる。「今年も、二人で幸せに過ごせますように」 二人はそう願いながらお参りをした。
誰のいないことを確認してから滝が話しかけてくる。まだ社内で公にはなっていないが、関連部門には情報が流れ一部の人は知る事実となった。付き合っていることは言っていないが、滝は多分気付いている。
「そうだね」
早苗は否定も肯定もしない。滝を信用していないわけではないが社内の人たちには報告する出来事が出来たときまで秘密にしておこうと思っていた。
鈴木は、引っ越し手続きもかねて12月下旬から年明けまで3週間ほど滞在する。その間はウィークリーマンション暮らしらしい。
引っ越し繁忙期前の2月末までには手続きを終えて3月は慣らし期間で4月からは本格的に日本勤務になるそうだ。
11月の末、2週間後には鈴木が帰国する。この日は、仕事終わりに電話をした。
「おつかれさま。」
「おつかれさま。新しい部屋、見たよ。素敵だね。」
鈴木が決めたと送ってきた物件情報を見ると、早苗の要望でもあったカウンターキッチンのある1LDKの部屋だった。ウォークインクローゼットもあり収納スペースも申し分ない。
「ああ、早苗が気に入ってくれるような部屋にしたかったからな」
「そういえば再来週には帰国だよね?年末年始はどう過ごすの?」
「引っ越し準備で忙しいと思うけど少しはゆっくりしたいな。早苗ともどこかに行けたら嬉しいんだけど……クリスマスと年末年始は空いてる?誰かと過ごす予定ある?」
「空いてる(笑)浩太と一緒に過ごせたらいいなって思っていた。」
鈴木は自分で聞いておきながら、早苗が素直に一緒に過ごしたいと言ってきたので、ニヤけてしまった。
「じゃあ、どこ行くか探そうか。」
「うん、嬉しい!」
二人はクリスマスと年末年始の予定を立て始めた。
クリスマスや年末年始は、どこも予約でいっぱいで高いため早苗の家で過ごし、帰国してすぐの12月の3週目の月曜日に有給を使い2泊3日で旅行に行くことにした。
旅行の手配は鈴木が、クリスマスの食事は早苗が担当することにしてお互いに任せた。
早苗は、料理教室でクリスマス向けのコース料理のレッスンがあったのでそこで学んだレシピを振る舞うことにした。いつもより少しいいワインも手配済みだ。
お互いに当日まで秘密にしようと話をしていたので、旅行の目的地は分かるが宿のことはまったく教えてもらえなかった。
『浩太、どんなところ選んだのかな?』
帰国して最初の週末。鈴木が計画していた旅行に出かけた。場所は、ずっと話に上がっていた温泉。観光地としても有名で外国人観光客も多い。温泉街の周りでは観光名所も多くありアクセスのしやすさも魅力だった。
「宿、ついたよ」
鈴木に案内されたのは、モダンな作りの昔ながらの旅館だった。高い天井に梁がむきだしになっており開放感がある。
造りは古いが隅々まで掃除が行き届き清潔感のある空間は高級感もあり洗練されていた。
「本日から2泊される菊の間でございます」
仲居さんから鍵を預かり部屋に入ると広い畳と出窓がある部屋に案内された。
「夕食は18時からとなりますので、それまでごゆっくりおくつろぎください」
そう言って出て行ったあと部屋の中を見渡す。小高い丘の上にある旅館で窓から見る眺望が美しい。晴れた日は街並みや海も見渡せそうだ。
「わーー。景色綺麗だね」
「そうだな。」
椅子に腰かけ窓の景色を味わいながらもどこか落ち着かない様子の鈴木を不思議に思いながらも、荷物入れや洗面スペースなどを見渡していく。
「あ!!!」
鈴木が落ち着かない理由を理解する。洗面スペースの奥にある浴室の扉を開くと大人二人が余裕で入れるサイズの内湯と景色を眺める用の小窓がある。
「……浩太?」
「ん?」
「なんかすっごく広いお風呂あったんだけど」
「う、うん。早苗は絶対選ばないと思ったから俺が予約した」
当日まで秘密にしていたのは、これがあったからか……。早苗はじっと鈴木の顔をみつめるが、視線を逸らされてしまう。
「……もーーしょうがないな。」
恥ずかしさはあるが、嫌ではなかった。本当のことを言うと実際に見てみたら、早苗自身も興味をそそられていた。
「本当?良かった。一度やってみたくて」
鈴木は安堵しギュッと抱きしめてくる。普段なら一緒にお風呂は恥ずかしくて入らないが、旅の恥は掻き捨てだ。
雰囲気のある浴槽と小窓からの情景を見たら、この景色を鈴木と見たくなった。結局、食事前、食後、朝と滞在中に何度も風呂からの景色を鈴木と楽しんだ。
年越しは、部屋で時計を見ながら年越しそばを食べて新年を迎えた。新しい年の幕開けに二人で過ごせることが嬉しかった。
何年も一緒にいるのに、二人で迎える年越しは初めてだった。
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