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第62話 入籍
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7月の週末昼下がり、鈴木と早苗は少し緊張しながら実家の玄関に立っていた。慣れ親しんだ実家のはずなのにこの日は違った。
鈴木はスーツ、早苗もネイビーの落ち着いたデザインのワンピースを着て、緊張した面持ちで深呼吸をしてインターホンを鳴らすと、温かい笑顔の両親が出迎えてくれた。
リビングに通されてから手土産を渡し、改めて二人の結婚の意志を伝えた。
鈴木と早苗の両親は、本人たちで決めたことだからと快諾し祝福してくれた。
「早苗さんのことを一生大切にします。」
鈴木の力強い言葉に、早苗の両親は安心したように頷いた。その後、二人は両親と結婚の準備や今後のことについて話をした。時折笑いが起こり緊張もほぐれていった。
数週間後、料亭の個室で行った両家顔合わせも、終始和やかな雰囲気で進み二人は重要任務を一つクリアした気分で安堵した。
9月に入り、お互いの上司たちにも報告を済ませた。9月下旬~10月上旬は下期に入ったばかりで慌ただしいことから比較的余裕のある9月上旬の月曜の朝にした。
社内結婚ということもあり、タイミングは同じにした方がいい。人づてで聞くことは良くないと話し合い月曜の朝イチに時間を取ってもらい直属の上司に報告した後、相手の上司の元へと挨拶にいった。
上司たちは、突然の報告と相手が社内だと知り驚いたが心から祝福してくれた。
そして、滝にも結婚することを伝えた。
「滝さん、あの……。私、結婚することになりました」
「そうなんですか!!?おめでとうございます。」
「ありがとうございます」
「相手は……鈴木さん?」
「……はい」
「やっぱり。勘は当たってたか。楠木さん、鈴木さんを見る目が違ったもんな。」
滝はそう言って微笑んだ。
「え?本当ですか?そんなことないと思っていたけど……」
「冗談です。でも、初めて鈴木さんに初めて会った時に威嚇オーラ感じたから、ただの同期ではないと思いました(笑)楠木さん愛されてますね。」
「……ありがとうございます」
「なんだか嬉しいな。入籍はいつするんですか?新居は?挙式は?新婚旅行は??」
早苗と鈴木の結婚を心から祝福しつつ、矢継ぎ早に質問してくる滝。
「入籍は11月で新居は今、鈴木さんが住んでいる部屋に一緒に住む予定。あとはまだ未定かな。」
「楽しみですね。新婚生活に悩んだら今度は僕がアドバイスしますからね!!!」
「ふふ、ありがとう」
周りからの祝福がとても嬉しかった。
一緒にはまだ住んでいないが、3か月前にプロポーズをされてから生活が少しずつ変化していった。周りに報告したことで、「夫婦になる」という実感が少しずつ芽生える。
早苗の部屋も思い切って断捨離をしてだいぶスッキリした部屋になっている。家具家電は鈴木の家にあるものを使うため必要ない。持っていくものは衣類と本と調理器具くらいだ。
「何か必要な物や置きたいものある?」と鈴木に聞かれたときに即座に思い浮かんだのは本棚と本だった。リビング脇のデスク横に本棚を置けるスペースを確保してもらった。カウンターキッチンの部屋にしてもらったので調理器具を置くスペースも十分にある。
それらを大切に箱詰めをしていく。昔は結婚する時に持っていく荷物を嫁入り道具と言ったそうだが早苗の嫁入り道具は本と調理器具だけでずいぶんコンパクトな量だった。
退去する前週に、車を借りてふたりで早苗の家にあるシングル向けのベッドマットや冷蔵庫・洗濯機などをすべて処分しにいった。
入社してからずっと使ってきた年季のあるものばかりで、もう古くなり動きが鈍くなっていたので愛着は湧かないが思い出深い。
感謝して一つずつ処理置き場に片していく。
「ふーーー。やっと片付いた。家具がなくなると印象変わるね」
「うん、違う部屋みたい。この部屋、こんな広かったんだ。」
備え付けのキッチンとエアコン以外に何もない部屋はとても広く感じた。
早苗は何もないがらんとした部屋を見るのは今回で2回目だ。
1回目は鈴木が海外へ行くとき。あの時は、二人で過ごした想い出の部屋に物がなくなり寂しさを覚えた。1年後に別れを告げられた後に、部屋の契約解除を知らされ、もう一度訪れたときは、冷めきった空気と誰もいない部屋に自分の泣き声だけが響き渡りとても虚しかった。
しかし、今回は違う。この部屋はなくなってしまうが次の場所は鈴木と一緒に暮らす部屋だ。胸が高鳴り希望に満ちている。
「片付け忘れないか一通り見てくるね。」
「俺も見るよ」
キッチン、クローゼットと順番に見て回る。
「そう言えば玄関の小物とかどうしたの?」
玄関にいる鈴木がふいに尋ねてきた。
「ああ。なんとなく飾っていたものが多かったから小物はほとんど処分したよ。」
「……そう、なんだ」
「だからこれからはここにした。」
早苗はそう言ってパーカーのポケットから鈴木に貰ったキーケースを開ける。中には新居の鍵と鈴木から預かった合鍵が入っていた。
「もう1つの鍵は使えないじゃん。」
苦笑しながらもどこか嬉しそうな表情の鈴木がからかう。
「いいの。この鍵は私にとってお守りなの!だから持っていたいの。」
「そっか。……よし!!今日は早めに終わらせて、夜この前の店に飲みに行かない?マスターにも報告したいし。」
「いいね、行きたい!あと少し頑張ろう!」
こうして11/22のいい夫婦の日。鈴木と早苗は入籍をし晴れて夫婦となった。
鈴木はスーツ、早苗もネイビーの落ち着いたデザインのワンピースを着て、緊張した面持ちで深呼吸をしてインターホンを鳴らすと、温かい笑顔の両親が出迎えてくれた。
リビングに通されてから手土産を渡し、改めて二人の結婚の意志を伝えた。
鈴木と早苗の両親は、本人たちで決めたことだからと快諾し祝福してくれた。
「早苗さんのことを一生大切にします。」
鈴木の力強い言葉に、早苗の両親は安心したように頷いた。その後、二人は両親と結婚の準備や今後のことについて話をした。時折笑いが起こり緊張もほぐれていった。
数週間後、料亭の個室で行った両家顔合わせも、終始和やかな雰囲気で進み二人は重要任務を一つクリアした気分で安堵した。
9月に入り、お互いの上司たちにも報告を済ませた。9月下旬~10月上旬は下期に入ったばかりで慌ただしいことから比較的余裕のある9月上旬の月曜の朝にした。
社内結婚ということもあり、タイミングは同じにした方がいい。人づてで聞くことは良くないと話し合い月曜の朝イチに時間を取ってもらい直属の上司に報告した後、相手の上司の元へと挨拶にいった。
上司たちは、突然の報告と相手が社内だと知り驚いたが心から祝福してくれた。
そして、滝にも結婚することを伝えた。
「滝さん、あの……。私、結婚することになりました」
「そうなんですか!!?おめでとうございます。」
「ありがとうございます」
「相手は……鈴木さん?」
「……はい」
「やっぱり。勘は当たってたか。楠木さん、鈴木さんを見る目が違ったもんな。」
滝はそう言って微笑んだ。
「え?本当ですか?そんなことないと思っていたけど……」
「冗談です。でも、初めて鈴木さんに初めて会った時に威嚇オーラ感じたから、ただの同期ではないと思いました(笑)楠木さん愛されてますね。」
「……ありがとうございます」
「なんだか嬉しいな。入籍はいつするんですか?新居は?挙式は?新婚旅行は??」
早苗と鈴木の結婚を心から祝福しつつ、矢継ぎ早に質問してくる滝。
「入籍は11月で新居は今、鈴木さんが住んでいる部屋に一緒に住む予定。あとはまだ未定かな。」
「楽しみですね。新婚生活に悩んだら今度は僕がアドバイスしますからね!!!」
「ふふ、ありがとう」
周りからの祝福がとても嬉しかった。
一緒にはまだ住んでいないが、3か月前にプロポーズをされてから生活が少しずつ変化していった。周りに報告したことで、「夫婦になる」という実感が少しずつ芽生える。
早苗の部屋も思い切って断捨離をしてだいぶスッキリした部屋になっている。家具家電は鈴木の家にあるものを使うため必要ない。持っていくものは衣類と本と調理器具くらいだ。
「何か必要な物や置きたいものある?」と鈴木に聞かれたときに即座に思い浮かんだのは本棚と本だった。リビング脇のデスク横に本棚を置けるスペースを確保してもらった。カウンターキッチンの部屋にしてもらったので調理器具を置くスペースも十分にある。
それらを大切に箱詰めをしていく。昔は結婚する時に持っていく荷物を嫁入り道具と言ったそうだが早苗の嫁入り道具は本と調理器具だけでずいぶんコンパクトな量だった。
退去する前週に、車を借りてふたりで早苗の家にあるシングル向けのベッドマットや冷蔵庫・洗濯機などをすべて処分しにいった。
入社してからずっと使ってきた年季のあるものばかりで、もう古くなり動きが鈍くなっていたので愛着は湧かないが思い出深い。
感謝して一つずつ処理置き場に片していく。
「ふーーー。やっと片付いた。家具がなくなると印象変わるね」
「うん、違う部屋みたい。この部屋、こんな広かったんだ。」
備え付けのキッチンとエアコン以外に何もない部屋はとても広く感じた。
早苗は何もないがらんとした部屋を見るのは今回で2回目だ。
1回目は鈴木が海外へ行くとき。あの時は、二人で過ごした想い出の部屋に物がなくなり寂しさを覚えた。1年後に別れを告げられた後に、部屋の契約解除を知らされ、もう一度訪れたときは、冷めきった空気と誰もいない部屋に自分の泣き声だけが響き渡りとても虚しかった。
しかし、今回は違う。この部屋はなくなってしまうが次の場所は鈴木と一緒に暮らす部屋だ。胸が高鳴り希望に満ちている。
「片付け忘れないか一通り見てくるね。」
「俺も見るよ」
キッチン、クローゼットと順番に見て回る。
「そう言えば玄関の小物とかどうしたの?」
玄関にいる鈴木がふいに尋ねてきた。
「ああ。なんとなく飾っていたものが多かったから小物はほとんど処分したよ。」
「……そう、なんだ」
「だからこれからはここにした。」
早苗はそう言ってパーカーのポケットから鈴木に貰ったキーケースを開ける。中には新居の鍵と鈴木から預かった合鍵が入っていた。
「もう1つの鍵は使えないじゃん。」
苦笑しながらもどこか嬉しそうな表情の鈴木がからかう。
「いいの。この鍵は私にとってお守りなの!だから持っていたいの。」
「そっか。……よし!!今日は早めに終わらせて、夜この前の店に飲みに行かない?マスターにも報告したいし。」
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