熱のない部屋で

中道舞夜

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最終話 熱のない部屋

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社内表彰があった夜、家に帰り二人はリビングのソファーで受賞の喜びを分かち合った。


「浩太、おめでとう。今日の浩太いつも以上に輝いて見えて、なんだか自分の事のように……ううん、自分の事以上に嬉しい。」
そう言って早苗が嬉し泣きをするを見て、鈴木は受賞時よりも嬉しく感極まっていた。

「ありがとう。でも、今があるのは早苗がいつもそばで支えてくれたからだよ」

「ねえ、浩太」

「ん?」

「私たち、色々なことがあったね」

早苗の言葉に鈴木は優しく微笑んだ。

「ああ、本当に。でもこうして早苗と一緒にいられて嬉しいよ」

鈴木の言葉に早苗は嬉しそうに微笑んだ。

「私も。浩太と出会えて本当に良かった。」


早苗は、鈴木の手にそっと自分の手を重ねた。鈴木も早苗の手を握り返す。二人はしばらくの間、言葉もなくただ互いの温もりを感じていた。

「浩太」
早苗が再び口を開いた。

「ん?」

「ありがとう。大好き。」

結婚してから好きという言葉はまた少しずつ遠ざかっていたので、早苗の言葉に鈴木はドキッとした。

「ありがとう。俺も好きだよ。」


久々に愛情表現の言葉を口にした二人は微笑み合いそっとキスをした。
そのキスは、二人の愛を確かめ合う穏やかで温かいものだった。



二人は、紆余曲折を経てようやく穏やかな日々を手に入れた。

最初はお互い思いを寄せながらも積極的になれず、ただの仲の良い同期という関係に甘んじていた。

しかし、鈴木が海外出向を理由に早苗に合鍵を預かってほしいとメールを送ったことがきっかけで二人の恋は実を結んだ。


だが、恋人同士になってからも二人の道のりは決して平坦ではなかった。お互いのことを深く考えるあまりすれ違いを繰り返した。まだ想いがあるのに相手の幸せを願い、別れを選んだこともあった。
ヨリを戻さずに曖昧な関係で過ごした時期もあった。お互い想いが通じ合っているはずなのに、どうしてハッピーエンドにならないのだろうと、早苗は何度も涙を流した。


しかし、二人はその度にお互いの気持ちを確かめ合い再び歩み寄った。
相手のことを想い身を引いたこともあったが、未来なんて誰にも分からない。

どんなに願っても思い通りにならないこともある。相手のことを想い、引くことも優しさや誠実さなのかもしれない。しかし、相手の本心とは違う思いやりでは時として傷つけてしまうこともある。そのことをすれ違いながらも二人は学んだ。


今後も、意見が食い違ったり、衝突したりすることはあるだろう。しかし、今の二人は、過去のようにすれ違うことはない。問題が起きたら共に手を取り合い解決の道を探す。ぶつかることもあるかもしれないが二人で考え、二人なりの解決策で進んでいく。


お互いに自分の気持ちをさらけ出し、ありのままの相手を受け入れ、寄り添い合っていく。そんな信頼感と絆が二人の間には生まれていた。


付き合いたてや新婚当初のような、甘く熱い関係とは変わっていた。しかし、二人の間にはいつも穏やかな熱が通っている。それは、信頼や安心、家族愛など、穏やかで簡単には消えない熱へと変わっていった。

二人は、これからも共に歩み温かい関係を作っていくだろう。どんな時もお互いを思いやり、支え合いながら。二人の愛はこれからもゆっくりとしかし確実に深まっていく。


熱のない部屋はもうない。2人は信頼という絆と深め、関係を築き上げている。これからあたたかく、温もりのある部屋を作っていくだろう。



ーーー完ーーー


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