40 / 194
学園編 16歳
38 隠しキャラを出しましょう
しおりを挟む
隠しキャラを出してほしいと望みを口にしたリズの顔には「お願い」とでかでかと書かれている。意外な頼みごとに、興味が惹かれたエリーナは話を聞いてみることにした。
「隠しキャラ? このゲームにいるの?」
「はい。全ルートを完全攻略した後にしか開けないルートなんです……昨日、前世の私はこのゲームをプレイしている途中で死んだって言いましたよね。……四徹で完全攻略をして、隠しキャラルートを少しだけプレイしてから学校に行く途中で事故に遭ったんです」
哀愁漂うリズに、ご愁傷様ねと声をかけることしかできない。ゲームキャラとしてはそれほどやりこんでくれていることが純粋に嬉しかったが……。
「けど、この世界で隠しキャラを出すことはできるの? わたくしはまだ誰も攻略したことがないわよ」
「大丈夫です。実は、攻略可能になると私たちのリボンの色が紫から赤に変わるんです」
「そんな設定があったの」
二人のリボンは赤色だ。
「はい。それで、全キャラのルートを解放しつつ卒業パーティーで四人をエスコートに選ばなければいいそうです」
「ふ~ん。いいわ、それくらいならやってあげる」
「本当ですか! ありがとうございます!」
パッと笑顔を輝かせ、胸の前で手を組んで神とエリーナを崇め始めた。その反応におおげさねと苦笑いをする。
「そんなにいいの? 隠しキャラ」
「口コミによると、すっごくイケメンで他国の王子様らしいんです。それに、これはそのルートをクリアした人が口を揃えて言うんですけど、隠しキャラが出てきてからが本当のストーリーだって。今までのストーリーが覆され、衝撃を受けるそうです」
拳を握って力説され、エリーナはそうと苦笑いを浮かべる。リズは攻略サイトは見ない派だったらしく、詳しくは知らないらしい。
「まるでミステリーね。まぁいいわ。悪役令嬢をする目的もなくなったし、暇つぶしにはなりそう」
「……本当に、いいんですよね」
急にリズの声が小さくなった。先ほどまで喜んでいたのに、今度は不安げに瞳を揺らしている。本当に感情がコロコロと変わる子だ。
「どうして?」
「卒業パーティーでエスコートをつけないということは、誰とも結婚しないということです。そしたら家が……」
リズはゲームのストーリーを気にしているようだが、エリーナには大した問題ではない。
「平気よ?」
何を心配しているのかと、言葉を被せた。
(それに、どうせ隠しルートが終わったら、この役ともさよならだし)
「でも……」
「私が結婚しなくても、クリスが家を継ぐもの」
実力も財力も十分ある。後家に収まるつもりはないが、四人以外の結婚相手を見つけるまで面倒を見てくれるだろう。
「クリス?」
知っているだろうと思い口にした名前だったが、リズは困惑した顔で首を傾げていた。
「誰ですか?」
「え? ローゼンディアナ家に養子に入った兄みたいな人よ」
ヒロインの家族の描写くらいありそうなのにと思いつつ、二杯目のお茶を飲み干す。カップを戻しながらリズに視線をやると、彼女は真っ青になっていた。そして震える唇で言葉を絞り出す。
「クリスは……いません」
「え?」
「ゲームに、クリスなんて人は出てきません。ヒロインに家族はいないんです」
それを聞いた瞬間、指の間からカップが滑り落ち、乾いた虚しい音がサロンの空気を切り裂いた。
「隠しキャラ? このゲームにいるの?」
「はい。全ルートを完全攻略した後にしか開けないルートなんです……昨日、前世の私はこのゲームをプレイしている途中で死んだって言いましたよね。……四徹で完全攻略をして、隠しキャラルートを少しだけプレイしてから学校に行く途中で事故に遭ったんです」
哀愁漂うリズに、ご愁傷様ねと声をかけることしかできない。ゲームキャラとしてはそれほどやりこんでくれていることが純粋に嬉しかったが……。
「けど、この世界で隠しキャラを出すことはできるの? わたくしはまだ誰も攻略したことがないわよ」
「大丈夫です。実は、攻略可能になると私たちのリボンの色が紫から赤に変わるんです」
「そんな設定があったの」
二人のリボンは赤色だ。
「はい。それで、全キャラのルートを解放しつつ卒業パーティーで四人をエスコートに選ばなければいいそうです」
「ふ~ん。いいわ、それくらいならやってあげる」
「本当ですか! ありがとうございます!」
パッと笑顔を輝かせ、胸の前で手を組んで神とエリーナを崇め始めた。その反応におおげさねと苦笑いをする。
「そんなにいいの? 隠しキャラ」
「口コミによると、すっごくイケメンで他国の王子様らしいんです。それに、これはそのルートをクリアした人が口を揃えて言うんですけど、隠しキャラが出てきてからが本当のストーリーだって。今までのストーリーが覆され、衝撃を受けるそうです」
拳を握って力説され、エリーナはそうと苦笑いを浮かべる。リズは攻略サイトは見ない派だったらしく、詳しくは知らないらしい。
「まるでミステリーね。まぁいいわ。悪役令嬢をする目的もなくなったし、暇つぶしにはなりそう」
「……本当に、いいんですよね」
急にリズの声が小さくなった。先ほどまで喜んでいたのに、今度は不安げに瞳を揺らしている。本当に感情がコロコロと変わる子だ。
「どうして?」
「卒業パーティーでエスコートをつけないということは、誰とも結婚しないということです。そしたら家が……」
リズはゲームのストーリーを気にしているようだが、エリーナには大した問題ではない。
「平気よ?」
何を心配しているのかと、言葉を被せた。
(それに、どうせ隠しルートが終わったら、この役ともさよならだし)
「でも……」
「私が結婚しなくても、クリスが家を継ぐもの」
実力も財力も十分ある。後家に収まるつもりはないが、四人以外の結婚相手を見つけるまで面倒を見てくれるだろう。
「クリス?」
知っているだろうと思い口にした名前だったが、リズは困惑した顔で首を傾げていた。
「誰ですか?」
「え? ローゼンディアナ家に養子に入った兄みたいな人よ」
ヒロインの家族の描写くらいありそうなのにと思いつつ、二杯目のお茶を飲み干す。カップを戻しながらリズに視線をやると、彼女は真っ青になっていた。そして震える唇で言葉を絞り出す。
「クリスは……いません」
「え?」
「ゲームに、クリスなんて人は出てきません。ヒロインに家族はいないんです」
それを聞いた瞬間、指の間からカップが滑り落ち、乾いた虚しい音がサロンの空気を切り裂いた。
3
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた
ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。
シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。
そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。
恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。
気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない
As-me.com
恋愛
完結しました。
自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。
そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。
ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。
そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。
周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。
※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。
こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。
ゆっくり亀更新です。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる