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学園編 16歳
49 ディナーをいただきましょう
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余韻に浸りながらディナーのレストランに案内され、個室に通される。そして周りに人がいないことをいいことに、エリーナは感動を爆発させたのだ。
「素晴らしかったですわ! キャラクターが動いていて、悪役令嬢が断罪されるシーンは涙が溢れて見えなかったです!」
興奮冷めやらぬと饒舌に語るエリーナに、ルドルフは微笑みを浮かべて相槌を打つ。
「いい演出だった。だが、正直エリーナの表情を見ているほうが楽しかったな」
キャラが出てくるたびに目を輝かせ、シーンに合わせて驚き、怒り、喜び、悲しむ。途中から目を離せなくなっていた。
「え……あの素晴らしい劇を観てください。悪役令嬢なんて最高でしたわ」
そこは赤面して照れて欲しいところだったなとルドルフは苦笑するが、エリーナに伝わることはない。まっすぐ好きなロマンス小説に向き合うのがエリーナなのだから。
「あぁ。もちろん見ていたよ」
そして運ばれてくる料理に舌鼓を打ちつつ、会話を弾ませる。エリーナは話が合うか不安に思っていたがルドルフは話が上手で、話題も豊富だった。知らず知らずに話に引き込まれていく。そのルドルフもエリーナの返答におもしろそうに笑い、相好を崩す。学園や夜会では張り詰めた大人びた表情をしているが、今日は年相応に見える。
打ち解けた雰囲気になり、エリーナは気になっていたことを訊いてみた。
「あの、ルドルフ様……どうしてわたくしをお誘いになったのですか?」
それはジークとミシェルにも感じていることだ。このデート自体はイベントの一環だが、彼らの思いも知っておきたかった。ヒロインだからという理由で済ませたくはない。
その問いかけは予想外だったのか、ルドルフは一瞬目を見張った後、小さく笑った。
「最初は……興味が湧いたんだ。ジークが側室にいれようとし、ベロニカ嬢の友人になったエリーナに。それに、ジークが手に入れられないものを手にしてみたくなったというのもある」
と、腹黒い笑みを浮かべたルドルフを見て、やはり腹黒眼鏡枠かと苦手意識が首をもたげた。だが、ルドルフはくいっと眼鏡の鼻当てを指で押し上げ、少し照れたように続ける。
「だが、こうして何度か話すうちに、君自身に惹かれたのは嘘じゃない。好きなものに一心に向かっていく姿は、とても好感が持てる」
正面から見つめられ褒められると、背中がむずがゆくなる。返事に困り曖昧に笑っていると、デザートが運ばれてきた。南の国のプリンと聞いて、エリーナの視線が奪われる。甘い空気はプリンによってかき消され、ルドルフは喉の奥で笑っていた。
「私もまだまだということかな……これは、南の国にあるココナッツプリンだ」
「ココナッツプリン」
そのまま復唱し、じっと器に盛られプルプルしている白いプリンに視線を落とす。黄色くもなく、カラメルソースもないこれのどこがプリンなのか。ココナッツというものも馴染はなく、南の国の特産だと知識にあるぐらいだ。
「初めての、プリン……」
おそるおそるスプーンですくい、口に運ぶ。
「これは……」
それは新たなプリンの境地だった。食感はプリンそのものだが、甘さは方向性が異なる。あっさりと自然な甘みは、やみつきになりそうだ。
「おいしいです!」
キラキラと目を輝かせ、二口三口と食べ進めるエリーナを見てルドルフは満足げにコーヒーを飲む。ルドルフは甘いものが苦手なのか、プリンを食べていなかった。その器をじっと見つめるエリーナに気づき、苦笑を浮かべてそっと自分のプリンをエリーナの方に押しやった。
「私の母は南の国出身で、このプリンが好きなんだ」
「そうだったんですか。すごくおいしいです」
ルドルフの分までぺろりとおいしくいただいた。こんなにおいしいものがあるとは、南の国に行ってみたくなった。
そしてディナーが終わり、遅くなっては危ないからと馬車で送ってくれる。馬車の中でもエリーナが退屈しないように、色々な話をしてくれた。
「エリーナ、足元に気を付けて」
ルドルフに手を引かれ、馬車から降りる。外は薄暗く、街灯が彼の顔を照らしていた。
「今日は楽しかったよ、エリーナ」
「はい、わたくしこそありがとうございました」
そしてルドルフは紫色の目を細めると、エリーナの手を取りその甲に口づけた。
「エリーナ。私とのことを真剣に考えて欲しい……私は本気だから」
眼鏡の奥の瞳には甘い色気があり、エリーナの頬は朱がさし、熱くなる。顔の破壊力に加え、ロマンス小説のキャラクターのような行動をされたら、エリーナだって狼狽えてしまう。悪役令嬢の皮を被り損ねてしまった。
「あ、あの……その」
「返事はいつでもいいよ。ゆっくり、その気にさせるから」
その瞳は捉えたら逃がさないと語っており、瞳から熱がすっと消えると何もなかったように玄関までエスコートをされる。お土産にココナッツプリンまで渡され、何が何やらわからないままエリーナは自室のベッドに倒れこんだのだった。
「ヒロインのような鋼の心臓が欲しいわ」
攻略キャラは心臓に悪いと学んだエリーナだった。
「素晴らしかったですわ! キャラクターが動いていて、悪役令嬢が断罪されるシーンは涙が溢れて見えなかったです!」
興奮冷めやらぬと饒舌に語るエリーナに、ルドルフは微笑みを浮かべて相槌を打つ。
「いい演出だった。だが、正直エリーナの表情を見ているほうが楽しかったな」
キャラが出てくるたびに目を輝かせ、シーンに合わせて驚き、怒り、喜び、悲しむ。途中から目を離せなくなっていた。
「え……あの素晴らしい劇を観てください。悪役令嬢なんて最高でしたわ」
そこは赤面して照れて欲しいところだったなとルドルフは苦笑するが、エリーナに伝わることはない。まっすぐ好きなロマンス小説に向き合うのがエリーナなのだから。
「あぁ。もちろん見ていたよ」
そして運ばれてくる料理に舌鼓を打ちつつ、会話を弾ませる。エリーナは話が合うか不安に思っていたがルドルフは話が上手で、話題も豊富だった。知らず知らずに話に引き込まれていく。そのルドルフもエリーナの返答におもしろそうに笑い、相好を崩す。学園や夜会では張り詰めた大人びた表情をしているが、今日は年相応に見える。
打ち解けた雰囲気になり、エリーナは気になっていたことを訊いてみた。
「あの、ルドルフ様……どうしてわたくしをお誘いになったのですか?」
それはジークとミシェルにも感じていることだ。このデート自体はイベントの一環だが、彼らの思いも知っておきたかった。ヒロインだからという理由で済ませたくはない。
その問いかけは予想外だったのか、ルドルフは一瞬目を見張った後、小さく笑った。
「最初は……興味が湧いたんだ。ジークが側室にいれようとし、ベロニカ嬢の友人になったエリーナに。それに、ジークが手に入れられないものを手にしてみたくなったというのもある」
と、腹黒い笑みを浮かべたルドルフを見て、やはり腹黒眼鏡枠かと苦手意識が首をもたげた。だが、ルドルフはくいっと眼鏡の鼻当てを指で押し上げ、少し照れたように続ける。
「だが、こうして何度か話すうちに、君自身に惹かれたのは嘘じゃない。好きなものに一心に向かっていく姿は、とても好感が持てる」
正面から見つめられ褒められると、背中がむずがゆくなる。返事に困り曖昧に笑っていると、デザートが運ばれてきた。南の国のプリンと聞いて、エリーナの視線が奪われる。甘い空気はプリンによってかき消され、ルドルフは喉の奥で笑っていた。
「私もまだまだということかな……これは、南の国にあるココナッツプリンだ」
「ココナッツプリン」
そのまま復唱し、じっと器に盛られプルプルしている白いプリンに視線を落とす。黄色くもなく、カラメルソースもないこれのどこがプリンなのか。ココナッツというものも馴染はなく、南の国の特産だと知識にあるぐらいだ。
「初めての、プリン……」
おそるおそるスプーンですくい、口に運ぶ。
「これは……」
それは新たなプリンの境地だった。食感はプリンそのものだが、甘さは方向性が異なる。あっさりと自然な甘みは、やみつきになりそうだ。
「おいしいです!」
キラキラと目を輝かせ、二口三口と食べ進めるエリーナを見てルドルフは満足げにコーヒーを飲む。ルドルフは甘いものが苦手なのか、プリンを食べていなかった。その器をじっと見つめるエリーナに気づき、苦笑を浮かべてそっと自分のプリンをエリーナの方に押しやった。
「私の母は南の国出身で、このプリンが好きなんだ」
「そうだったんですか。すごくおいしいです」
ルドルフの分までぺろりとおいしくいただいた。こんなにおいしいものがあるとは、南の国に行ってみたくなった。
そしてディナーが終わり、遅くなっては危ないからと馬車で送ってくれる。馬車の中でもエリーナが退屈しないように、色々な話をしてくれた。
「エリーナ、足元に気を付けて」
ルドルフに手を引かれ、馬車から降りる。外は薄暗く、街灯が彼の顔を照らしていた。
「今日は楽しかったよ、エリーナ」
「はい、わたくしこそありがとうございました」
そしてルドルフは紫色の目を細めると、エリーナの手を取りその甲に口づけた。
「エリーナ。私とのことを真剣に考えて欲しい……私は本気だから」
眼鏡の奥の瞳には甘い色気があり、エリーナの頬は朱がさし、熱くなる。顔の破壊力に加え、ロマンス小説のキャラクターのような行動をされたら、エリーナだって狼狽えてしまう。悪役令嬢の皮を被り損ねてしまった。
「あ、あの……その」
「返事はいつでもいいよ。ゆっくり、その気にさせるから」
その瞳は捉えたら逃がさないと語っており、瞳から熱がすっと消えると何もなかったように玄関までエスコートをされる。お土産にココナッツプリンまで渡され、何が何やらわからないままエリーナは自室のベッドに倒れこんだのだった。
「ヒロインのような鋼の心臓が欲しいわ」
攻略キャラは心臓に悪いと学んだエリーナだった。
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