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アスタリア王国編
163 気弱な令嬢をデートに連れ出しましょう
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そしてナディヤ応援計画も進んでいく。エリーナは、鏡に映るナディヤを見てニマリと楽し気な笑みを浮かべた。それを鏡越しに見たナディヤはびくりと肩を震わせる。ナディヤの髪を微調整していたリズは満足げに頷き、パッと笑顔を見せた。
「渾身の出来です!」
「さすがね。可愛くて儚げなヒロインだわ!」
「ド、ドレスにお化粧まで……も、申し訳ありません!」
今日は約束をしてたナディヤとのデートだ。朝から来てもらってドレスを選び、先ほど化粧が終わったところだった。二人の異母姉がいるため、ドレスをもらうのは見つかったら困るとナディヤが漏らしたため、エリーナのところで着替えることにしたのだ。
来た時はいつもの地味なワンピースドレスだったナディヤは、垢ぬけた可憐な令嬢となっている。二人は達成感に浸り、目を合わせて頷き合った。ドレスはエリーナのお古だが、一度しか袖を通していないものであり、流行りに左右されないデザインのものを選んだ。他にも数着夜会でも着られるものを用意してある。
「こんな立派なドレス、何かにひっかけないか怖くて歩けません」
立ち上がったナディヤはフリルがふんだんに使われたスカートの部分を見て、気が引けていた。
「問題ないわよ。それはナディヤさんのだから、破けても汚れてもかまわないわ」
「そ、そんな! わたくしは何もお返しできないのに!」
悲壮な表情を向けられ、エリーナは「う~ん」と頭を悩ませる。先ほどから似たようなやりとりを繰り返しており、どうも心の負担になっているようだ。
「なら、これからもわたくしの友達として、お茶を飲んだり遊びにいったりしてくれる?」
「は、はい! もちろんです!」
素直に頷き返すナディヤの背に手を回し、軽く押して歩き始める。
「わたくしのお友達ということは、わたくしのものだもの。わたくしのものを好きに着飾っても問題ないでしょう?」
「は、はい……?」
「だから気にすることなんてないのよ」
「あ、はい。……ん?」
エリーナは暴論でナディヤを言いくるめる。相手に考える隙を与えないのは詐欺の手口だと、後ろを歩くリズは心の中で突っ込む。そして流されているナディヤがますます心配になった。
おめかしをした二人は王宮の廊下を歩き、画廊へと向かった。常にそこでシルヴィオの絵が展示されているのだが、今回は新作を多数公開しているのだ。ナディヤは図書室に飾られていた絵でシルヴィオの作品を知ったようで、王宮の画廊へ来るのは初めてらしい。
ナディヤは緊張しているようで動きがぎこちない。リズはそんな状態でこの先どうするんだと呆れるが、そこは侍女として顔には出さなかった。
画廊は王宮の入り口に近いところにあり、謁見に来た人や商人がよく立ち寄っていた。その重厚感のあるドアには貸切の札がかかっている。
「え、貸切?」
それを目にしたナディヤが驚けば、エリーナは胸を張って得意げな顔をした。
「当然よ。今日はデートでなんだもの。二人でゆっくり見たいじゃない」
「そ、そんな、わたくし如きが……」
「だから、卑下しないの。それにもともとこの時間は人も少ないし、それほど迷惑はかかっていないわ」
エリーナはすかさずフォローを入れておいた。そうでも言っておかないと気に病むからだ。
そしてリズがドアを開け、一歩部屋に踏み入れたナディヤは目を見開いてぐるりと部屋中を見回した。口を開けて圧倒されている。エリーナも初めて入ったのだが、その絵の数々に感嘆の声が漏れた。
「これはすごいわ」
ざっと見ただけで百は超えるであろう絵画の数々。正面には二人で持ってやっとのぐらい大きな絵が飾られ、王宮から見た夕日に染まる城下町が鮮明に描かれていた。まるで本物を見ているかのようだ。
「どう? ナディヤ……?」
喜んでくれただろうかとナディヤに視線を向けたエリーナは、その顔を見て目を瞬かせた。
「泣いているの?」
静かに涙を流しており、じっと正面の大きな絵に見入っていた。引き寄せられるように近づいて行き、顔を近づけて細かな描き方を見ている。自分の世界に入り込んでおり、エリーナの声は届いていないようだった。
じっくり一つ一つの絵を目に焼き付けるように見ていくナディヤを横目に、エリーナも絵を見ていく。新たにラルフレアに留学していた時の絵が増えたようで、見覚えのある景色や人々が描かれていた。中にはエリーナとクリスを描いたものもある。二人一緒に描いてもらった記憶はないので、肖像画をもとに描いたのだろう。どうしてエリーナの手にプリンがあるのかとつっこみたくなった。
そして一周見終わり、中央に置かれたソファーで休んでいるとナディヤがハッとエリーナの存在を思い出し、血相を変えて近づいて来た。
「あ、その、申し訳ございませんでした。わたくしだけ勝手に見てしまって」
「いいのよ。絵なんて一人で見るものでしょ? どうだった?」
エリーナは立ち上がって微笑みかける。するとナディヤは今までで一番の笑みを浮かべて声を弾ませた。
「素晴らしいです! 画集で見た絵の本物を見られるなんて。もう、わたくしは死んでも後悔しません」
「おおげさよ。なら、少し案内してもらえる?」
以前お茶会をした時に、画集を見ながらいくつか説明をしてもらっていた。ナディヤの絵に関する知識は相当であり、エリーナでは絵を見ても綺麗という感想しか出てこない。
「もちろんです!」
そしてナディヤは喜々としてエリーナを絵の側まで案内して、一つ一つ説明を始める。いつ、どこで、どうやって描かれたのか。その時の国の情勢や王家の事情、また絵に関するエピソードなどを披露してくれる。エリーナは絵一つをとっても裏に様々なストーリーがあるのねと感心していた。
じっくり時間をかけ、熱心に絵について語るナディヤに気弱な令嬢の影はない。自分の好きにまっすぐな、可愛い女の子だった。
絵の世界に入り込み、丁寧に説明をしているナディヤには後ろでドアが開いた音に気付かない。
誰かが近づいていることにも。
「渾身の出来です!」
「さすがね。可愛くて儚げなヒロインだわ!」
「ド、ドレスにお化粧まで……も、申し訳ありません!」
今日は約束をしてたナディヤとのデートだ。朝から来てもらってドレスを選び、先ほど化粧が終わったところだった。二人の異母姉がいるため、ドレスをもらうのは見つかったら困るとナディヤが漏らしたため、エリーナのところで着替えることにしたのだ。
来た時はいつもの地味なワンピースドレスだったナディヤは、垢ぬけた可憐な令嬢となっている。二人は達成感に浸り、目を合わせて頷き合った。ドレスはエリーナのお古だが、一度しか袖を通していないものであり、流行りに左右されないデザインのものを選んだ。他にも数着夜会でも着られるものを用意してある。
「こんな立派なドレス、何かにひっかけないか怖くて歩けません」
立ち上がったナディヤはフリルがふんだんに使われたスカートの部分を見て、気が引けていた。
「問題ないわよ。それはナディヤさんのだから、破けても汚れてもかまわないわ」
「そ、そんな! わたくしは何もお返しできないのに!」
悲壮な表情を向けられ、エリーナは「う~ん」と頭を悩ませる。先ほどから似たようなやりとりを繰り返しており、どうも心の負担になっているようだ。
「なら、これからもわたくしの友達として、お茶を飲んだり遊びにいったりしてくれる?」
「は、はい! もちろんです!」
素直に頷き返すナディヤの背に手を回し、軽く押して歩き始める。
「わたくしのお友達ということは、わたくしのものだもの。わたくしのものを好きに着飾っても問題ないでしょう?」
「は、はい……?」
「だから気にすることなんてないのよ」
「あ、はい。……ん?」
エリーナは暴論でナディヤを言いくるめる。相手に考える隙を与えないのは詐欺の手口だと、後ろを歩くリズは心の中で突っ込む。そして流されているナディヤがますます心配になった。
おめかしをした二人は王宮の廊下を歩き、画廊へと向かった。常にそこでシルヴィオの絵が展示されているのだが、今回は新作を多数公開しているのだ。ナディヤは図書室に飾られていた絵でシルヴィオの作品を知ったようで、王宮の画廊へ来るのは初めてらしい。
ナディヤは緊張しているようで動きがぎこちない。リズはそんな状態でこの先どうするんだと呆れるが、そこは侍女として顔には出さなかった。
画廊は王宮の入り口に近いところにあり、謁見に来た人や商人がよく立ち寄っていた。その重厚感のあるドアには貸切の札がかかっている。
「え、貸切?」
それを目にしたナディヤが驚けば、エリーナは胸を張って得意げな顔をした。
「当然よ。今日はデートでなんだもの。二人でゆっくり見たいじゃない」
「そ、そんな、わたくし如きが……」
「だから、卑下しないの。それにもともとこの時間は人も少ないし、それほど迷惑はかかっていないわ」
エリーナはすかさずフォローを入れておいた。そうでも言っておかないと気に病むからだ。
そしてリズがドアを開け、一歩部屋に踏み入れたナディヤは目を見開いてぐるりと部屋中を見回した。口を開けて圧倒されている。エリーナも初めて入ったのだが、その絵の数々に感嘆の声が漏れた。
「これはすごいわ」
ざっと見ただけで百は超えるであろう絵画の数々。正面には二人で持ってやっとのぐらい大きな絵が飾られ、王宮から見た夕日に染まる城下町が鮮明に描かれていた。まるで本物を見ているかのようだ。
「どう? ナディヤ……?」
喜んでくれただろうかとナディヤに視線を向けたエリーナは、その顔を見て目を瞬かせた。
「泣いているの?」
静かに涙を流しており、じっと正面の大きな絵に見入っていた。引き寄せられるように近づいて行き、顔を近づけて細かな描き方を見ている。自分の世界に入り込んでおり、エリーナの声は届いていないようだった。
じっくり一つ一つの絵を目に焼き付けるように見ていくナディヤを横目に、エリーナも絵を見ていく。新たにラルフレアに留学していた時の絵が増えたようで、見覚えのある景色や人々が描かれていた。中にはエリーナとクリスを描いたものもある。二人一緒に描いてもらった記憶はないので、肖像画をもとに描いたのだろう。どうしてエリーナの手にプリンがあるのかとつっこみたくなった。
そして一周見終わり、中央に置かれたソファーで休んでいるとナディヤがハッとエリーナの存在を思い出し、血相を変えて近づいて来た。
「あ、その、申し訳ございませんでした。わたくしだけ勝手に見てしまって」
「いいのよ。絵なんて一人で見るものでしょ? どうだった?」
エリーナは立ち上がって微笑みかける。するとナディヤは今までで一番の笑みを浮かべて声を弾ませた。
「素晴らしいです! 画集で見た絵の本物を見られるなんて。もう、わたくしは死んでも後悔しません」
「おおげさよ。なら、少し案内してもらえる?」
以前お茶会をした時に、画集を見ながらいくつか説明をしてもらっていた。ナディヤの絵に関する知識は相当であり、エリーナでは絵を見ても綺麗という感想しか出てこない。
「もちろんです!」
そしてナディヤは喜々としてエリーナを絵の側まで案内して、一つ一つ説明を始める。いつ、どこで、どうやって描かれたのか。その時の国の情勢や王家の事情、また絵に関するエピソードなどを披露してくれる。エリーナは絵一つをとっても裏に様々なストーリーがあるのねと感心していた。
じっくり時間をかけ、熱心に絵について語るナディヤに気弱な令嬢の影はない。自分の好きにまっすぐな、可愛い女の子だった。
絵の世界に入り込み、丁寧に説明をしているナディヤには後ろでドアが開いた音に気付かない。
誰かが近づいていることにも。
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