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第一章 太陽の王子様と氷の王子様
21.氷の微笑
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「初めてにしては良くやった、と思う。緊張していただろう? まぁ、あそこで食い気に走るのは予想外だったが」
「ちょっと、慰めてくれてるのかけなしているのか。どっちかにしてください。そういうところ、中途半端はよくないと思います」
「……それだけ言い返せる元気があるなら大丈夫そうだな。ドレスのことは気にしなくていい。今、着替えを何か用意させるから、この部屋で待っていてくれ」
そう言って氷室さんが微笑する。
さっきまでその場が凍りそうなほど怖かったのに、そうやって笑うと眼鏡の奥の瞳まで優しく見えてくるから不思議。
心の中がほっこりと温かく励まされた感じ。
「はい、ありがとうございます」
「濡れていて気持ち悪いだろうが、少しの辛抱だ」
「あ……あの、上着!」
私を部屋に入れてすぐに出ていこうとする氷室さんに慌てて上着を返そうとする。
でも、氷室さんはやんわりとそれを遠慮すると、すぐ戻る、と言い残して部屋の外へと出ていった。
氷室さんが助けてくれて、ちょっと嬉しかったな。
私のこと気にしてくれてたんだなって思ってちょっと感動したというか。
私も緊張はしてたからホッとした。
今日は眼鏡じゃなくてコンタクトだから、目が乾燥してきた。
バッグの中から目薬を取ってさしていると、氷室さんが戻ってきた。
「手配できたが、移動できそうか?」
「はい、大丈夫です」
座って立ち上がろうとしたのに、ヒールが突っかかってふらりとしてしまう。
側にいた氷室さんがさっと肩を支えてくれた。
また縮まった距離に少しだけドキっとする。
普通に助けてくれただけなのは分かっているけど、何だか変な感じ。
「すみません、さっきから……」
「靴は大丈夫か? ヒールが折れたりは?」
「それは大丈夫です。歩けます」
慌てて笑いかけると氷室さんもそっと手を離す。
付き添われたまま扉を開けると、係の女性が立っていた。
「私は一旦会場に戻る。着替えたら今日は帰ってもらって構わない。社長にもそう伝えておく」
「え? でも、まだ……」
私が言いかけると、氷室さんが首を振る。
「大丈夫だ。君は十分成果を残した。会長に気に入られたようだし、あの騒ぎの中でも落ち着いた振る舞いは皆の目に留まっていたはずだ」
氷室さんが言い切ってくれると、私も安心できる。
本来は社長の側に戻るべきなんだろうけど、アクシデントもあったので早めに失礼するということで説明もしてくれるみたい。
「じゃあ今度こそ、上着お返ししますね。色々と助けてくださってありがとうございました」
「いや。送っていけなくてすまないが、こちらのことは社長が何とかするし、私もサポートするつもりだ。君はゆっくりと休んでくれ」
「はい。では、失礼します」
頭を下げてこの場を後にする。
ドレスが湿ってしまったことを忘れてしまうくらいに、緊張から解放された気がする。
氷室さんが少しだけでも私のことを認めてくれたし、今日は自分を少しくらい褒めてあげようかな。
「ちょっと、慰めてくれてるのかけなしているのか。どっちかにしてください。そういうところ、中途半端はよくないと思います」
「……それだけ言い返せる元気があるなら大丈夫そうだな。ドレスのことは気にしなくていい。今、着替えを何か用意させるから、この部屋で待っていてくれ」
そう言って氷室さんが微笑する。
さっきまでその場が凍りそうなほど怖かったのに、そうやって笑うと眼鏡の奥の瞳まで優しく見えてくるから不思議。
心の中がほっこりと温かく励まされた感じ。
「はい、ありがとうございます」
「濡れていて気持ち悪いだろうが、少しの辛抱だ」
「あ……あの、上着!」
私を部屋に入れてすぐに出ていこうとする氷室さんに慌てて上着を返そうとする。
でも、氷室さんはやんわりとそれを遠慮すると、すぐ戻る、と言い残して部屋の外へと出ていった。
氷室さんが助けてくれて、ちょっと嬉しかったな。
私のこと気にしてくれてたんだなって思ってちょっと感動したというか。
私も緊張はしてたからホッとした。
今日は眼鏡じゃなくてコンタクトだから、目が乾燥してきた。
バッグの中から目薬を取ってさしていると、氷室さんが戻ってきた。
「手配できたが、移動できそうか?」
「はい、大丈夫です」
座って立ち上がろうとしたのに、ヒールが突っかかってふらりとしてしまう。
側にいた氷室さんがさっと肩を支えてくれた。
また縮まった距離に少しだけドキっとする。
普通に助けてくれただけなのは分かっているけど、何だか変な感じ。
「すみません、さっきから……」
「靴は大丈夫か? ヒールが折れたりは?」
「それは大丈夫です。歩けます」
慌てて笑いかけると氷室さんもそっと手を離す。
付き添われたまま扉を開けると、係の女性が立っていた。
「私は一旦会場に戻る。着替えたら今日は帰ってもらって構わない。社長にもそう伝えておく」
「え? でも、まだ……」
私が言いかけると、氷室さんが首を振る。
「大丈夫だ。君は十分成果を残した。会長に気に入られたようだし、あの騒ぎの中でも落ち着いた振る舞いは皆の目に留まっていたはずだ」
氷室さんが言い切ってくれると、私も安心できる。
本来は社長の側に戻るべきなんだろうけど、アクシデントもあったので早めに失礼するということで説明もしてくれるみたい。
「じゃあ今度こそ、上着お返ししますね。色々と助けてくださってありがとうございました」
「いや。送っていけなくてすまないが、こちらのことは社長が何とかするし、私もサポートするつもりだ。君はゆっくりと休んでくれ」
「はい。では、失礼します」
頭を下げてこの場を後にする。
ドレスが湿ってしまったことを忘れてしまうくらいに、緊張から解放された気がする。
氷室さんが少しだけでも私のことを認めてくれたし、今日は自分を少しくらい褒めてあげようかな。
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