地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

文字の大きさ
25 / 85
第二章 社長のための期間限定パートナー

24.疲れたときにはやっぱり甘いもの

しおりを挟む
 社長のご家族との食事会の日取りが決まってから、私も慌ただしく動いていた。
 氷室さんにも引き続き色々教えてもらったおかげで、少しずつ身に付いてきている気がする。

 今日は氷室さんが別件でどうしても外せない用事があって休暇を取っているので、代わりのボディーガードの人と一緒に社長とお得意様のところに出向いて直接会議をしてきた……んだけど。

 会社を出てから何か社長の様子がいつもと違うというか。
 この後の予定は帰社して、パソコンで支社の人たちとオンライン会議。

 赤い手帳を取り出してもう一度確認するけど、やっぱり合ってる。

「社長? お加減が優れないんですか?」
「え? あぁ……大丈夫。いやぁ、昨日お気に入りの子とずっと電話してたから。睡眠時間が少なかったのかも」
「はあ。それならいいんですが」

 話していると車は自社の前で止まる。
 ボディーガードの人が降りて、運転手が降りて社長のドアを開ける。
 私も自分でドアを開けて社長に続く。

「では、行きましょう」
「あともうひと仕事、頑張るかー」

 へらっと笑う感じはいつもの社長なんだけど……。
 違和感を感じたまま、社長室へと急ぐ。

 +++

 オンライン会議も無事終わって、やっと就業時間が終わる頃――

 受け答えもいつも通り完璧にこなしていたはずの社長が甘めのコーヒーを所望したし、社長も疲れているのかもしれない。

 社長お気に入りの豆は浅煎りだけど、あえて深煎りの豆を選んでコーヒーメーカーで挽く。
 普段より濃いめに入れて、砂糖とミルクをたっぷり入れていく。

「後で私の分も入れようかな? 疲れている時は甘いもの、だよね」

 ついでに頂いた高級チョコレートを二粒小皿に乗せる。
 シンプルな味の小さい四角のチョコレートだけど、甘めのコーヒーとならちょうどいいと思う。

 社長の元へ戻ると、デスクの上に淹れたてのコーヒーとチョコの小皿をそっと置いた。

「あぁ、ありがとうー。あ、チョコレートも。俺そんなに疲れてる感じに見える?」
「普段よりは元気がないように見えたので。チョコレートはそこまで甘くないはずですが、コーヒーは甘めです」
「確かに。香りは香ばしい感じだけど、ミルクたっぷりで良さそうだね。普段はこういうの飲まないから何か新鮮だな」

 社長が少し嬉しそうに笑ってくれたから安心する。
 最初はコーヒーもうまく入れられなくって、岬さんに聞いてばかりだったけど。
 氷室さんは深煎りのブラックで、社長は浅煎りの砂糖入りが好みだって分かってから豆選びもちょっと楽しくなった。
 私もコーヒーはあまり飲まなかったんだけど、淹れたての香りは良い香りだから最近は自分の分も用意して甘めで飲んだりしてる。

 社長は私の入れたコーヒーとチョコを摘んで、また綺麗に微笑んでくれた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」 (三度目はないからっ!) ──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない! 「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」 倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。 ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。 それで彼との関係は終わったと思っていたのに!? エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。 客室乗務員(CA)倉木莉桜 × 五十里重工(取締役部長)五十里武尊 『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……

処理中です...