地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第三章 自分のこと、これからのこと

33.本当の気持ちは

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 少しお茶を飲んで心を落ち着かせる。
 今まで気にしないようにしていただけで、本当は気になっていたのかもしれない。
 緊張で少し手が汗ばんできて、壁にかけられた時計の針の音がより大きく聞こえてくる気がした。

「落ち着いて聞いてね。風音ちゃん、あなたのお母様は亡くなっているの。だから、貴方のお父さんのことを知っている方はもう誰もいないのかもしれないわ」

 園長先生は静かな口調で事実を教えてくれた。
 身体が弱いって言ってたし少し頭を過ったけど……改めて聞くと心にぽかりと穴が開いたような……虚しさに襲われる。

「そう、ですか。会わなくていいと思ってましたけど、いざ会えないって聞くと……」

 ポロリと涙が目から流れた。
 一度溢れてしまうと自然とボロボロと泣き出してしまう。

 慌てて眼鏡を取ってハンカチを目に当てると、園長先生が昔のように私の頭を撫でてくれた。

「風音ちゃんは昔からいい子だったから、お母様も喜んでいるとはずよ。いいこ、いいこ……」

 ずっと聞き分けの良い子を演じてただけなのかな?
 なんだか、自信がなくなってくる。

 それでも撫でてくれる園長先生の手が温かくて、昔の私と重なった。

 +++

 泣いたら少しスッキリした。
 でも、これで終わりじゃない。
 問題は私の父親が誰なのか。
 生きているのか、死んでいるのか。

「園長先生……すみません、ありがとうございます。父のことも……私が婚外子なことは間違いないでしょうけど、戸籍謄本も取ってみます。お時間を割いてくださってありがとうございました」
「大して力にもなれなくてごめんなさいね。お母様のことは病院で聞けるといいのだけれど。入院先の病院は聞いていたから……」

 園長先生は病院の名前と住所、連絡先が書かれたメモを手渡してくれた。
 聖セフィド病院。
 住所は……スマホで入力してみると、隣の県の最寄り駅から二十分くらい。
 ただ、車だとここから行っても一時間弱くらいで行けるみたい。
 
「病院、行ってみます。まだ時間は間に合いそうだから」
「無理しないで行ってらっしゃい。私はいつもここにいるわ」

 最後まで優しい園長先生に見守られて、私は頬を軽く叩いて気合いを入れる。
 外に出てから簡単にメイクを直して、改めて電話でタクシーを呼ぶ。

「タクシー代、経費で落とすって行ったら怒られちゃうかな……」

 自分を鼓舞するように独り言で冗談を呟き、気持ちを少しでもあげていく。
 程なくして施設の入り口に到着したタクシーへ乗り込んで、病院の名前を告げた。

 私の休日はまだ、終わらない。
 もうひと踏ん張りだ。
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