地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第三章 自分のこと、これからのこと

50.伝えたかったことは

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 すっかりと日が落ちて夜になった街並みをゆっくりと歩く。
 その間もポツリポツリと言葉を交わすけど、なかなか本音は話してもらえない。

「すまない、結局駅前まで来てしまったな」
「いえ、歩きながらの方が話しやすいのなら、広場をのんびり歩きましょう」
 
 木々が少しライトアップされているので、歩いている人たちも立ち止まって写真を撮っている。
 周りにそこまで人も多くないから、真剣な話もしやすいかもしれない。

「私が君のことが気になったのはいつの頃だったか。やはり、パーティーの時だっただろうか。知識を詰め込んで頑張る姿も気づけば目で追っていたが、一番はドレスが汚されるというトラブルにも冷静に対処していたところだ」
「あの時、氷室さんが助けてくれましたよね」

 氷室さんが来てくれて本当に良かった。
 緊張していたし、正解もわからなかったから褒めてもらえたのは嬉しい。

「普通、私が注意すると皆逃げてしまうのだが、君はいつも真剣に聞いているし、逆に意見を交わしている時もある」
「でも、いつも文句を言っている気がしますけど」

 最初は氷室さんの言い方も気に食わなかったし、失礼な人だなあくらいで。
 今みたいな関係性になるとは、私も思っていなかったし。

「いつの間にか、君から目を離せなくなった。普段、小鳥さんは私に噛み付くくらいに言い返してくるのに、落ち込む姿を見て力になりたいと強く思い始めて。そこから、何かが変わってきた気がする」
「氷室さん……」

 この人はいつもストレートで真剣だから。
 私も素直に色々とぶつけられるのかもしれない。

 立ち止まって私を見つめる視線から、目を離せない。

「これが恋愛感情だと言うのなら、私は――」

 心臓の音が聞こえてしまうのではないかというくらいにうるさくて、緊張して固まってしまう。
 今は氷室さんしか見えない。

 ゆっくりと、両腕が伸ばされる。
 ぎこちない動きだけど、優しく抱きしめられた。

「君のことが、好きだ」

 端的に言われた言葉に、身体の中の力が抜けてしまう。
 氷室さんが慌てて、両腕で抱き止めてくれる。

「大丈夫か?」
「大丈夫です。私も緊張していたから、何だか力が抜けてしまって」

 そうだったらいいなと思っていたけど、自信は全くなかったから。
 私の勘違いだったらどうしようと、頭の中がグルグルとしていたし。

「驚かせてしまって、すまない 」
「謝らないでください。自分で教えてと言ったのに、勘違いだったらどうしようと思っていたから……」

 照れ隠しで笑って見上げると、氷室さんの顔も少し赤い。

「もしかして……」
「慣れないことをしているから、私も不思議な気持ちだ。でも嫌じゃない。気恥ずかしいものだな」

 そう言って笑う氷室さんの笑顔に、私もきちんと答えなくちゃ。
 今の私の気持ちを。
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