地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

文字の大きさ
56 / 85
第三章 自分のこと、これからのこと

55.気晴らしのお誘い

しおりを挟む
 二人の様子をクスクスと笑って眺めていると、氷室さんが不本意だという気持ちを全面に出してくる。
 
「そんな顔しなくても……」
「コイツと同列にされるのは困る」
「いやいや、お前こそそんなキャラだっけ? 女の子の前でカッコつけたいみたいな……」

 氷室さんが流し目で社長を睨みつけると、社長は視線で動きが凍ったように固まってしまった。
 この視線は、私から見てもちょっと怖い。

「社長、死なないうちにこの話題はやめた方がいいと思いますよ。私も止められませんし」
「何か、俺の扱い酷くない? はぁ……まあいいんだけどさ。重苦しい話はこういうノリで流す方が好きだし。小鳥ちゃんの休める枝が出来たと思えば、安心なんだけどね。コイツは簡単には折れないからさ」

 片目を瞑る顔も似合ってるところが、アイドル的な社長の良いところなんだろうけど。
 氷室さんが、私の反応を気にしてジッとこっちを見ているのが気になるから、冗談でもカッコいいとか言えない。

「話が伝わったのなら、お前はさっさと仕事をしろ。会長と奥様たちを説得できるのはお前しかいないのだから」
「分かってるって。今日、早速話をしておくから、待ってて。さて、決意も聞いたことだし。本日も働きますかー」

 社長も気持ちを切り替えるように、グッと両腕を伸ばして背伸びをする。
 氷室さんも通常運転に戻ったので、私も今日のスケジュールの確認のために、タブレットを取り出した。

 +++

 滞りなく仕事は終わったけど、私がどうなるかは社長次第だと思うと少し落ち着かない。
 社長も早々と上がって、任せておいて! と、言ってくれたけど。
 私の気持ちを誤解されないといいんだけどな。

「やはり、心配か?」
「そうですね。社長と氷室さんも私の気持ちを理解してくれたけど、会長や奥様にとってはどうなんだろうって」

 二人でオフィスを出て、話しながら歩く。
 考え込んでも仕方ないと思って、今日の夕飯の話でも切り出そうと思っていた矢先に、氷室さんが一度立ち止まった。

「昨日の今日ではあるのだが、少し気晴らしにでも行かないか?」
「気晴らし、ですか?」
「あぁ。今日は車で出社しているから、良かったらどうかと思ってな」

 車でということは、もしかしてドライブに誘ってくれているのかな?
 私は免許を持っていないから運転したことはないけど、車に乗ること自体は好きかもしれない。
 氷室さんの言うように、気晴らしになる気がする。

「氷室さんが良いなら、お願いします」

 私が改めてお願いすると、行こうか、と優しい声色で微笑される。
 この階層には誰もいないからいいけど、会社を出るまではニヤニヤしないように気をつけないと。
 少し浮ついている気持ちが、外に出てしまいそう。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」 (三度目はないからっ!) ──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない! 「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」 倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。 ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。 それで彼との関係は終わったと思っていたのに!? エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。 客室乗務員(CA)倉木莉桜 × 五十里重工(取締役部長)五十里武尊 『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……

処理中です...