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番外編(本編のネタバレあらすじ有です。ご注意くださいませ)
彼は私の特効薬 1
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ここまで悪化するとは思っていなかったけれど、無理をしすぎちゃったみたい。
元気なことが取り柄なはずだったのに……私は風邪をこじらせてしまって家でダウンしていた。
熱も上がってきたので、大人しくベッドで横になっているんだけど……色々気になって眠れない。
「仕事、大丈夫かな……」
私は橘コーポレーションの芸能部門ポイボスで、普段はスケジュール管理や雑務をしている。
社長で異母姉弟でもある橘海音は、太陽の王子様というあだ名がピッタリな明るい雰囲気と笑顔が爽やかイケメンだ。
そのルックスでモデルとしても活躍中なんだけど……彼のスケジュールも私が管理している状態だった。
だから余計に気になってしまうのかもしれない。
ぼーっとする頭でスマホを眺めていると、メールが届く。
「え? 秦弥さん早退するって……」
氷室秦弥さんは、この家の主であり私の大切な人だ。
社長を支える立場の副社長として、秦弥さんと私も同じ職場で働いている。
彼は社長とは違って、氷の王子様というあだ名で呼ばれているくらいクールな印象だ。
表情もあまり変わらないし、長四角の銀縁メガネも冷たい印象を持たれるのかもしれない。
私も最初は感じが悪い人だと思っていたくらい、話し方は丁寧なのに少し威圧感があるせいで誤解されやすい。
秦弥さんと同棲し始めてから暫く経ったけれど、彼は私の前ではクールな表情を崩していつも優しく微笑んでくれる。
氷を解かして微笑んでくれるのは私の前限定なので、私は未だにドキドキしてしまう。
「嬉しいけど……大丈夫なのかな?」
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが混ざっているのは分かるけど、やっぱり熱のせいで考えがまとまらない。
汗をかく前に着替えを準備しようと思って、ぼんやりしながら身体を起こしてみる。
「うぅ……頭がぐわんぐわんするー……」
少し動いただけでもダメだなんて、自分が情けなくなっちゃう。
必死になって身体を動かそうとした時に、私の部屋のドアが叩かれる音がした。
「風音、入るぞ」
「はい、今開けます……きゃあっ」
私はベッドから普通に降りようとしたつもりだったのに、ぼんやりとしているせいで前のめりになってしまう。
私の悲鳴が聞こえてしまったのか、秦弥さんがドアを開いて私の側に駆け寄ってくれた。
「無理をするなと言っただろう? こんなに身体が熱いのに立ち上がろうとしたのか」
「ごめんなさい。でも、秦弥さんお仕事は?」
私が問いかけると、久しぶりの盛大なため息が返ってくる。
この感じ、何だか出会った頃を思い出すやり取りだ。
秦弥さんはまだスーツ姿のままだったけど、私の身体を優しく支えてくれていた。
「今日は元々予定も少なかったし、問題ない。海音も心配していたぞ。まずは横になるんだ」
「でも、汗をかいてしまうし着替えを……」
「いいから。着替えは私が取って来よう。風音は恥ずかしいかもしれないが、今は緊急事態だ」
「そんな、大げさだよ? ちょっとふわふわってしてるだけだし」
私は何とか笑ってみせようとしたんだけど、秦弥さんは眉間に皺を寄せる。
この雰囲気は……怒ってるかも?
「正常な判断ができていない。私がいいと言うまでここから動いては駄目だ。いいな?」
「う……はい」
秦弥さんは私の目を覗き込んで、真剣な眼差しを向けてくる。
私は頷くしかなかった。
+++
私がベッドの上で横になっていると、またドアが叩かれる。
返事をすると、私服に着替えた秦弥さんがトレーの上に色々と載せて持ってきてくれた。
トレーをベッドサイドテーブルへ置いてから、私の熱を測るように額に手のひらを乗せた。
秦弥さんの手はひんやりとしていて気持ちいい。
「まだだいぶ熱が高いな。喉の痛みや鼻の調子は?」
「喉は少し痛いけど、鼻は大丈夫」
「そうか。おかゆを作ってみたから、少しでも食べて欲しい」
彼はトレーの上に置いてある土鍋の蓋を取ると、白い器へ移す。
レンゲの上にすくってから、ふーふーと優しく冷ましてくれているのが分かる。
私は秦弥さんに優しく身体を支えられながら、身体を少し起こした。
元気なことが取り柄なはずだったのに……私は風邪をこじらせてしまって家でダウンしていた。
熱も上がってきたので、大人しくベッドで横になっているんだけど……色々気になって眠れない。
「仕事、大丈夫かな……」
私は橘コーポレーションの芸能部門ポイボスで、普段はスケジュール管理や雑務をしている。
社長で異母姉弟でもある橘海音は、太陽の王子様というあだ名がピッタリな明るい雰囲気と笑顔が爽やかイケメンだ。
そのルックスでモデルとしても活躍中なんだけど……彼のスケジュールも私が管理している状態だった。
だから余計に気になってしまうのかもしれない。
ぼーっとする頭でスマホを眺めていると、メールが届く。
「え? 秦弥さん早退するって……」
氷室秦弥さんは、この家の主であり私の大切な人だ。
社長を支える立場の副社長として、秦弥さんと私も同じ職場で働いている。
彼は社長とは違って、氷の王子様というあだ名で呼ばれているくらいクールな印象だ。
表情もあまり変わらないし、長四角の銀縁メガネも冷たい印象を持たれるのかもしれない。
私も最初は感じが悪い人だと思っていたくらい、話し方は丁寧なのに少し威圧感があるせいで誤解されやすい。
秦弥さんと同棲し始めてから暫く経ったけれど、彼は私の前ではクールな表情を崩していつも優しく微笑んでくれる。
氷を解かして微笑んでくれるのは私の前限定なので、私は未だにドキドキしてしまう。
「嬉しいけど……大丈夫なのかな?」
嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが混ざっているのは分かるけど、やっぱり熱のせいで考えがまとまらない。
汗をかく前に着替えを準備しようと思って、ぼんやりしながら身体を起こしてみる。
「うぅ……頭がぐわんぐわんするー……」
少し動いただけでもダメだなんて、自分が情けなくなっちゃう。
必死になって身体を動かそうとした時に、私の部屋のドアが叩かれる音がした。
「風音、入るぞ」
「はい、今開けます……きゃあっ」
私はベッドから普通に降りようとしたつもりだったのに、ぼんやりとしているせいで前のめりになってしまう。
私の悲鳴が聞こえてしまったのか、秦弥さんがドアを開いて私の側に駆け寄ってくれた。
「無理をするなと言っただろう? こんなに身体が熱いのに立ち上がろうとしたのか」
「ごめんなさい。でも、秦弥さんお仕事は?」
私が問いかけると、久しぶりの盛大なため息が返ってくる。
この感じ、何だか出会った頃を思い出すやり取りだ。
秦弥さんはまだスーツ姿のままだったけど、私の身体を優しく支えてくれていた。
「今日は元々予定も少なかったし、問題ない。海音も心配していたぞ。まずは横になるんだ」
「でも、汗をかいてしまうし着替えを……」
「いいから。着替えは私が取って来よう。風音は恥ずかしいかもしれないが、今は緊急事態だ」
「そんな、大げさだよ? ちょっとふわふわってしてるだけだし」
私は何とか笑ってみせようとしたんだけど、秦弥さんは眉間に皺を寄せる。
この雰囲気は……怒ってるかも?
「正常な判断ができていない。私がいいと言うまでここから動いては駄目だ。いいな?」
「う……はい」
秦弥さんは私の目を覗き込んで、真剣な眼差しを向けてくる。
私は頷くしかなかった。
+++
私がベッドの上で横になっていると、またドアが叩かれる。
返事をすると、私服に着替えた秦弥さんがトレーの上に色々と載せて持ってきてくれた。
トレーをベッドサイドテーブルへ置いてから、私の熱を測るように額に手のひらを乗せた。
秦弥さんの手はひんやりとしていて気持ちいい。
「まだだいぶ熱が高いな。喉の痛みや鼻の調子は?」
「喉は少し痛いけど、鼻は大丈夫」
「そうか。おかゆを作ってみたから、少しでも食べて欲しい」
彼はトレーの上に置いてある土鍋の蓋を取ると、白い器へ移す。
レンゲの上にすくってから、ふーふーと優しく冷ましてくれているのが分かる。
私は秦弥さんに優しく身体を支えられながら、身体を少し起こした。
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