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22.なんか今日は暗いわね
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先日の事件で殴られた後頭部の痛みはもう治まり、日常生活は特に問題ない。あの悪党たちの親玉も倒されたそうだから、これで王都にも平穏が戻るわね。ただ私個人として後悔しているのは、あの時ミランダ様をお守りし切れなかったこと。ミランダ様は『大丈夫』と言ってくださったけれど、私がもっときっちり賊を倒しておけば……前回の大蛇の時は夜中にこっそり倒しにいって成功したから今回も簡単にミランダ様をお守りできる、そう言う傲りがあったんだわ。
私は領地にいた時から狩りはもちろん魔物や山賊の討伐にも参加していたし、それが当然だと思っていた。相手が悪党だったら斬り倒すことも躊躇はないし、あの時手元に剣があればと悔やまれてならない。でも、王都の常識は領地の常識とは少し違っているから、ミランダ様の前で悪党を斬ったら怖がられてしまっただろうか。思わず『大事なお方』なんて言ってしまったけれど……彼女は今まで知り合った女性とは違うし、その後抱きしめられてドキドキしちゃった。今まで恋愛をしたことがないんだけど、これはミランダ様のことが好きってこと? メイドの皆が彼女を見てキャーキャー言う気持ちが、今なら分かる気がする。
パトリシア様はドキドキする相手と言うよりは仲のいい友達の様な雰囲気。メイドの中には彼女のことを『わがまま姫』なんて呼ぶ人もいるけれど、実際はとても無邪気で可愛らしい女性なの。それでいて王族としての意識もしっかり持っておられて、素敵な女性よ。お喋りしていても楽しいし、ついつい身分の違いを忘れそうになってしまう。田舎者のメイドである私を近くにおいてくださって、特別に扱ってくださるパトリシア様にはとても感謝しているわ。
一方でメイドの先輩方は私にとって姉の様な存在。最初こそ少し行き違いもあったけれど、今はニッキーさんもローナさんも、他のメイドの方々だって私を可愛がってくれる。彼女たちと一緒に仕事していると楽しいし、分からないことを色々と教えてくれるのも嬉しい。私のできることで皆のお役に立てるなら、精一杯頑張りたいと思ってる。
メイド長のヘザーさんはお母さんみたいな存在ね。学園の制服を褒めてくれたときはとても嬉しかったし、最近メイドの皆がまとまって仕事に精を出しているのは私のお陰だと言ってくれた。事件があったからしばらく休んでいいと言われたけれど、健康なんだからサボっていられないわ。
「おはようございます!」
「おはよう……って、あんた、あれから全然休んでないけど大丈夫なの?」
「はい。もうすっかり痛みも引いてますので」
「ならいんだけど、あんまり無理しないでよ」
ローナさんに心配されながらお仕事の準備。先日はシャロン様に注意されてしまって窓拭きが途中だったから、終わらせてしまわないと。今日は彼女に見付からない様にしよう。あとは庭の草刈りと廊下の掃除か。早めに終わりそうだから、午後から以前に狩った鹿の角と皮を売りに行こうかな。
シャロン様に見付かることなく窓拭きも終えて、午後の比較的早い時間に全ての仕事を終える。うん、これなら街に行けそうね。一度家に戻って着替えてから、大きな鹿の角を背負って家を出ると……そこには驚いた顔のミランダ様が立っていた。
「ミランダ様!?」
「フフフ……ハハハハ、君はいつでも私を驚かせてくれるね! それは鹿の角かい?」
「はい……売りに行こうかと……」
ああ、恥ずかしい! ミランダ様にこんなところを見られてしまうなんて。いや、普段の私なら恥ずかしがることもないだろうけれど、相手がミランダ様だととにかく恥ずかしくて顔から火が出そうだわ。
「あの、よろしければ中へどうぞ」
「角はいいのかい? 忙しければまた今度にするけど」
「だ、大丈夫です!」
顔が火照っているのを感じつつ、とにかくミランダ様を中へ招き入れた。鹿の角は奥の部屋に押し込んで、お茶の準備よ!
「急に来てすまなかったね。改めて先日のことを謝りたくて」
「そんな! ミランダ様に謝って頂くことなんて何もありません。私がもっとしっかり相手を倒していれば……」
「いや、これは私のわがままだけど、君を守りたかった。先輩が後輩を守るのはごく自然なことだろう?」
「そうかも知れませんが、ミランダ様はお顔に怪我を……」
「もう腫れも引いたし大丈夫さ。マリオンは大丈夫なのかい?」
「はい。私は体が丈夫にできている様なので、今日もしっかり働いてきました」
「そうか……鹿の角を売りに行くぐらいだから、きっと元気なんだろうね」
ちょっと意地悪に笑うミランダ様。お茶を出して彼女の対面に座っていたけれど、恥ずかしくて俯いてしまう。
「意地悪……言わないでください」
「ハハハ、すまない。君の反応が可愛くてつい、ね」
「それも意地悪です!」
「可愛いのは本当さ」
テーブルの上で私の手を取り、じっと見つめられる。ああ、もうドキドキしすぎて心臓が破裂してしまいそうだわ。人との会話でこんな恥ずかしくて困ったことは初めてだ。何か言おうとしても言葉が出てこず、顔を赤らめたままミランダ様を見つめることしかできなかった。なぜだか分からないけれど、泣いちゃいそう……
「それで、結局君は研修に参加できなかったから、是非埋め合わせをさせて欲しいんだ。これは私だけでなくフランツとパトリシアからも言われていてね」
「よろしいのですか?」
「是非、私に学園を案内させてくれ。パトリシアも付いてくると言っていたがね」
「有り難うございます! 楽しみです」
「決まりだね。明日私は授業が午前で終わるから、午後からパトリシアと一緒に来てくれるかい? メイドの仕事は午前中だけにしてもらえる様に、私からかけ合っておくから」
「はい!」
爽やかな笑顔で手を振りながら帰っていったミランダ様。彼女が帰った後もドキドキがなかなか治まらない。ミランダ様はどういうおつもりで私なんかを構ってくださるのかしら? 『可愛い』と仰ってくださるけれど、私からするとパトリシア様の方がずっと可愛いお方だし、それこそ王宮内で良く見かける貴族のご令嬢は華やかでキラキラしていて……冴えないメイドの私なんて比べ物にならないのだから。ミランダ様とは身分の違いがありすぎて、私なんかが好意を寄せて良いお方ではないことも分かっているつもりだけど、彼女に誘われると嬉しい……あー、もう! 私、どうしたらいいの!?
その答えは出ないまま翌日になって、午前の仕事の後制服に着替えてパトリシア様の元へ。
「パトリシア様、お待たせしました」
「マリオン!」
いつもの様に走ってきて抱き付いてくださるパトリシア様。よくよく考えると、最も高いご身分の彼女と、こうやって友達の様にお付き合いさせて頂いているのも異例なのかも知れない。最初は『田舎者で無知だから』で許されたかも知れないけれど、メイドとして働いていると特に身分については分かってきた気がするので、余計にそんなことを考えずにはいられなかった。
パトリシア様の馬車に同乗させて頂いたけれど、身分云々のことを考えているとついつい無口になってしまう。表情にも出てしまっていた様で、パトリシア様に顔を覗きまれる。
「なんか今日は暗いわね。何かあった?」
「あ、いえ、何もありませんよ。朝から仕事をしていたので、疲れたのかも知れません」
「そう? 本当は何か心配事でもあるんじゃないの? 私で良ければ相談に乗るわ!」
そう言って私の手を取ったパトリシア様。凄く真っ直ぐな目で、私のことを心配してくれているのが分かる。彼女に相談しても良いことなのか……一瞬躊躇したけれど、思い切って相談してみようかな。パトリシア様なら良い答えであっても悪い答えであっても、正直に彼女の考えを答えてくださるはずだから。
「実は……」
ミランダ様が親切にしてくださることや、パトリシア様が仲良くしてくださること、そしてそれに対する自分の気持ちを正直に話すと、真剣に聞いてくださっていたパトリシア様は一瞬驚いた様な顔をして、すぐに笑い出した。
「アハハハ、そんなこと気にしてたの!?」
「そんなことと仰いますが、私にとってはとても重要なことなんですよ」
「んー、まあ、そうかもね。私は王族だし、ヘンストリッジ家も二位の貴族だし。王宮じゃ私は王女であなたはメイドだから、周りから見れば不釣り合いだわ。でもね……」
そう言いながら再び私の手を取ったパトリシア様。
「あなたが私の命の恩人であることは変わらないし、私は身分なんて関係なくあなたと一緒にいたいと思ったわ。だから学園に誘ったのよ。聞いていると思うけど学園内では身分なんて関係ないわ。フランツお兄様にも身分関係なく沢山の友達がいるし、グラハムお兄様の側近中の側近と言われる人は学園の同期で、あなたと同じ六位の貴族と聞いたわ」
「そうなのですね!?」
「そう、だからマリオンももう身分のことで悩まないで。入学して身分がどうこう言う者がいたら、王族の私がぶっ飛ばしてやるんだから!」
「フフフ、有り難うございます、パトリシア様。でも、身分が関係ないのに王族の方として、と言うのはダメですよね?」
「あ、それもそうね」
笑うパトリシア様を見て心がフッと軽くなるのを感じた。もちろん急に馴れ馴れしくしていいわけではないけれど、彼女が私を必要としてくださるのなら、私も彼女に寄り添っていこう。
「あっ! それと学園では敬語禁止! 私のことは『パトリシア』って呼び捨てにしてよね」
「!! それは……急には難しいかも知れません」
「いいから言ってみて!」
「パ、パトリシア」
そう呼んでみると、彼女は凄く嬉しそうな顔をして抱き付いてきた。日頃から姫様や、パトリシア様、姫殿下などと呼ばれることが多いので、こうやって呼び捨てにされるととても親近感が湧くのだそう。まだ少し抵抗があって慣れるまでは無口になってしまうかも知れませんが、それは許してくださいね、パトリシア様……いえ、パトリシア!
私は領地にいた時から狩りはもちろん魔物や山賊の討伐にも参加していたし、それが当然だと思っていた。相手が悪党だったら斬り倒すことも躊躇はないし、あの時手元に剣があればと悔やまれてならない。でも、王都の常識は領地の常識とは少し違っているから、ミランダ様の前で悪党を斬ったら怖がられてしまっただろうか。思わず『大事なお方』なんて言ってしまったけれど……彼女は今まで知り合った女性とは違うし、その後抱きしめられてドキドキしちゃった。今まで恋愛をしたことがないんだけど、これはミランダ様のことが好きってこと? メイドの皆が彼女を見てキャーキャー言う気持ちが、今なら分かる気がする。
パトリシア様はドキドキする相手と言うよりは仲のいい友達の様な雰囲気。メイドの中には彼女のことを『わがまま姫』なんて呼ぶ人もいるけれど、実際はとても無邪気で可愛らしい女性なの。それでいて王族としての意識もしっかり持っておられて、素敵な女性よ。お喋りしていても楽しいし、ついつい身分の違いを忘れそうになってしまう。田舎者のメイドである私を近くにおいてくださって、特別に扱ってくださるパトリシア様にはとても感謝しているわ。
一方でメイドの先輩方は私にとって姉の様な存在。最初こそ少し行き違いもあったけれど、今はニッキーさんもローナさんも、他のメイドの方々だって私を可愛がってくれる。彼女たちと一緒に仕事していると楽しいし、分からないことを色々と教えてくれるのも嬉しい。私のできることで皆のお役に立てるなら、精一杯頑張りたいと思ってる。
メイド長のヘザーさんはお母さんみたいな存在ね。学園の制服を褒めてくれたときはとても嬉しかったし、最近メイドの皆がまとまって仕事に精を出しているのは私のお陰だと言ってくれた。事件があったからしばらく休んでいいと言われたけれど、健康なんだからサボっていられないわ。
「おはようございます!」
「おはよう……って、あんた、あれから全然休んでないけど大丈夫なの?」
「はい。もうすっかり痛みも引いてますので」
「ならいんだけど、あんまり無理しないでよ」
ローナさんに心配されながらお仕事の準備。先日はシャロン様に注意されてしまって窓拭きが途中だったから、終わらせてしまわないと。今日は彼女に見付からない様にしよう。あとは庭の草刈りと廊下の掃除か。早めに終わりそうだから、午後から以前に狩った鹿の角と皮を売りに行こうかな。
シャロン様に見付かることなく窓拭きも終えて、午後の比較的早い時間に全ての仕事を終える。うん、これなら街に行けそうね。一度家に戻って着替えてから、大きな鹿の角を背負って家を出ると……そこには驚いた顔のミランダ様が立っていた。
「ミランダ様!?」
「フフフ……ハハハハ、君はいつでも私を驚かせてくれるね! それは鹿の角かい?」
「はい……売りに行こうかと……」
ああ、恥ずかしい! ミランダ様にこんなところを見られてしまうなんて。いや、普段の私なら恥ずかしがることもないだろうけれど、相手がミランダ様だととにかく恥ずかしくて顔から火が出そうだわ。
「あの、よろしければ中へどうぞ」
「角はいいのかい? 忙しければまた今度にするけど」
「だ、大丈夫です!」
顔が火照っているのを感じつつ、とにかくミランダ様を中へ招き入れた。鹿の角は奥の部屋に押し込んで、お茶の準備よ!
「急に来てすまなかったね。改めて先日のことを謝りたくて」
「そんな! ミランダ様に謝って頂くことなんて何もありません。私がもっとしっかり相手を倒していれば……」
「いや、これは私のわがままだけど、君を守りたかった。先輩が後輩を守るのはごく自然なことだろう?」
「そうかも知れませんが、ミランダ様はお顔に怪我を……」
「もう腫れも引いたし大丈夫さ。マリオンは大丈夫なのかい?」
「はい。私は体が丈夫にできている様なので、今日もしっかり働いてきました」
「そうか……鹿の角を売りに行くぐらいだから、きっと元気なんだろうね」
ちょっと意地悪に笑うミランダ様。お茶を出して彼女の対面に座っていたけれど、恥ずかしくて俯いてしまう。
「意地悪……言わないでください」
「ハハハ、すまない。君の反応が可愛くてつい、ね」
「それも意地悪です!」
「可愛いのは本当さ」
テーブルの上で私の手を取り、じっと見つめられる。ああ、もうドキドキしすぎて心臓が破裂してしまいそうだわ。人との会話でこんな恥ずかしくて困ったことは初めてだ。何か言おうとしても言葉が出てこず、顔を赤らめたままミランダ様を見つめることしかできなかった。なぜだか分からないけれど、泣いちゃいそう……
「それで、結局君は研修に参加できなかったから、是非埋め合わせをさせて欲しいんだ。これは私だけでなくフランツとパトリシアからも言われていてね」
「よろしいのですか?」
「是非、私に学園を案内させてくれ。パトリシアも付いてくると言っていたがね」
「有り難うございます! 楽しみです」
「決まりだね。明日私は授業が午前で終わるから、午後からパトリシアと一緒に来てくれるかい? メイドの仕事は午前中だけにしてもらえる様に、私からかけ合っておくから」
「はい!」
爽やかな笑顔で手を振りながら帰っていったミランダ様。彼女が帰った後もドキドキがなかなか治まらない。ミランダ様はどういうおつもりで私なんかを構ってくださるのかしら? 『可愛い』と仰ってくださるけれど、私からするとパトリシア様の方がずっと可愛いお方だし、それこそ王宮内で良く見かける貴族のご令嬢は華やかでキラキラしていて……冴えないメイドの私なんて比べ物にならないのだから。ミランダ様とは身分の違いがありすぎて、私なんかが好意を寄せて良いお方ではないことも分かっているつもりだけど、彼女に誘われると嬉しい……あー、もう! 私、どうしたらいいの!?
その答えは出ないまま翌日になって、午前の仕事の後制服に着替えてパトリシア様の元へ。
「パトリシア様、お待たせしました」
「マリオン!」
いつもの様に走ってきて抱き付いてくださるパトリシア様。よくよく考えると、最も高いご身分の彼女と、こうやって友達の様にお付き合いさせて頂いているのも異例なのかも知れない。最初は『田舎者で無知だから』で許されたかも知れないけれど、メイドとして働いていると特に身分については分かってきた気がするので、余計にそんなことを考えずにはいられなかった。
パトリシア様の馬車に同乗させて頂いたけれど、身分云々のことを考えているとついつい無口になってしまう。表情にも出てしまっていた様で、パトリシア様に顔を覗きまれる。
「なんか今日は暗いわね。何かあった?」
「あ、いえ、何もありませんよ。朝から仕事をしていたので、疲れたのかも知れません」
「そう? 本当は何か心配事でもあるんじゃないの? 私で良ければ相談に乗るわ!」
そう言って私の手を取ったパトリシア様。凄く真っ直ぐな目で、私のことを心配してくれているのが分かる。彼女に相談しても良いことなのか……一瞬躊躇したけれど、思い切って相談してみようかな。パトリシア様なら良い答えであっても悪い答えであっても、正直に彼女の考えを答えてくださるはずだから。
「実は……」
ミランダ様が親切にしてくださることや、パトリシア様が仲良くしてくださること、そしてそれに対する自分の気持ちを正直に話すと、真剣に聞いてくださっていたパトリシア様は一瞬驚いた様な顔をして、すぐに笑い出した。
「アハハハ、そんなこと気にしてたの!?」
「そんなことと仰いますが、私にとってはとても重要なことなんですよ」
「んー、まあ、そうかもね。私は王族だし、ヘンストリッジ家も二位の貴族だし。王宮じゃ私は王女であなたはメイドだから、周りから見れば不釣り合いだわ。でもね……」
そう言いながら再び私の手を取ったパトリシア様。
「あなたが私の命の恩人であることは変わらないし、私は身分なんて関係なくあなたと一緒にいたいと思ったわ。だから学園に誘ったのよ。聞いていると思うけど学園内では身分なんて関係ないわ。フランツお兄様にも身分関係なく沢山の友達がいるし、グラハムお兄様の側近中の側近と言われる人は学園の同期で、あなたと同じ六位の貴族と聞いたわ」
「そうなのですね!?」
「そう、だからマリオンももう身分のことで悩まないで。入学して身分がどうこう言う者がいたら、王族の私がぶっ飛ばしてやるんだから!」
「フフフ、有り難うございます、パトリシア様。でも、身分が関係ないのに王族の方として、と言うのはダメですよね?」
「あ、それもそうね」
笑うパトリシア様を見て心がフッと軽くなるのを感じた。もちろん急に馴れ馴れしくしていいわけではないけれど、彼女が私を必要としてくださるのなら、私も彼女に寄り添っていこう。
「あっ! それと学園では敬語禁止! 私のことは『パトリシア』って呼び捨てにしてよね」
「!! それは……急には難しいかも知れません」
「いいから言ってみて!」
「パ、パトリシア」
そう呼んでみると、彼女は凄く嬉しそうな顔をして抱き付いてきた。日頃から姫様や、パトリシア様、姫殿下などと呼ばれることが多いので、こうやって呼び捨てにされるととても親近感が湧くのだそう。まだ少し抵抗があって慣れるまでは無口になってしまうかも知れませんが、それは許してくださいね、パトリシア様……いえ、パトリシア!
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