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第04話 一家総出の救出作戦
9.何を感じてる?
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***
「ヴァン、あっちだ! 息の音が聞こえる!」
被災地の住宅街。ユウノが民家の一つを指し示す。
ヴァンには何一つ聞こえなかったが、即座にユウノを抱き抱えてその家の中にテレポートした。外からは倒壊を免れた幸運な建物に見えていたが、内部では家具が倒れ、物が散乱していた。
一階のリビングに入室。人影は無い。ユウノは頭部に手を添えた。被っている魔術戦隊・マジュンジャーのマスクの下に猫耳がある。
「……二階だ!」
ユウノは言うや否や率先して階段を駆け上がっていく。マスクから溢れたロングヘアーをヒラヒラさせ、まるで慣れ親しんだ自宅の中を移動するようにある一室の前に辿り着いた。ドアノブを掴み、乱暴に動かそうとする。
「クッ、ドア開かねえ……! 壊すぜ!」
素早い決断。ユウノは内鍵がかけられていた扉を蹴破った。
「お、おい。俺が居ればどこでも入れるぞ……?」
後を追っていたヴァンは彼女を諌める。救助のためとはいえ、人様の家でこれはちょっと気が引けた。しかしヴァンのその感覚はテレポートを使いこなす魔導師ファクターならではのもの。彼女が侵入に手段を選ばないのは当然の判断だったのだろう。
「あ、いた! おい! 大丈夫か⁉︎」
倒れた本棚の下敷きになっていた女性を発見する。ユウノの呼びかけに反応を示さない。
「……気を失っているみたいだな。すぐ病院に連れて行く」
ヴァンは魔法で本棚を浮遊させ、その女性を救い出す。分身を増やして病院へテレポート。目立った外傷はなかった。呼吸をしていたのも確かだ。きっと命に別状はないだろう。
「……さすがだな、ユウノ。俺だけなら見逃していたかもしれない」
残った方のヴァンはユウノの頭を撫でくりまわす。
「へへ、連れてきて良かったろ?」
ユウノはくすぐったそうにその手を払い除けたが、多分マスクの下では誇らしげに頬を緩ませている。
ユウノは音や匂い、あるいは純然たる野生の勘のみで次々と被災者を見つけ出していた。ヴァンの調査では今回のように倒壊していない建物の中で気絶しているケースをいくつか取りこぼしてしまっていた。彼女を連れて来なかったらと思うと身震いする。
「この辺は今の人で最後だと思うぜ。勘だけどな」
彼女がそう言うなら根拠としては充分だった。
「もうここが最後のエリアだ。次は避難所の方を手伝ってくれるか?」
「わかった。あ、でも最終確認しようぜ。アタシ乗せて飛んでくれ」
「飛ぶ……?」
「上から見渡した方が早えだろ?」
ヴァンが返事をする前に、ユウノはまるでよじ登るようにヴァンの背中にくっついて無理やりおんぶの体勢になった。上空からユウノのセンサーに引っかかる建物を探そうとのことらしい。
「……しっかり捕まっておけよ。あと暴れないこと」
妻を乗せて飛ぶなんて危険、と言いたいところだがユウノの身体能力なら心配ないだろう。ユウノが頷くと彼女の顎がヴァンの肩に食い込んだ。ヴァンは彼女の太ももをしっかりホールドし、彼女もヴァンの首に回した腕を固める。胸をヴァンの背中に押し当て、密着できるだけ密着した。
「あと尻尾を俺に巻きつけてもいいぞ? 安全のために」
「それ本当に安全のためか? 性欲で言ってんなら肩噛むけど」
「……甘噛みしてくれ」
「半分正解ってとこかよ……」
ユウノは呆れつつも尻尾をヴァンの右太ももに絡めた。ご褒美過ぎた。
ヴァンがテレポートすると、そこはすでにミカデルハ上空。地上から五十メートル。
「わっ! すげえ! 飛んでるぜ!」
ユウノは歓喜の声を漏らす。ちょっとした絶叫マシーンの気分なのだろう。ヴァンはついでにバリアを張り、風と雪を避けると同時に内部の空気を魔法で暖めた。尻尾のお返しとばかりに快適な空の旅をお約束する。
「街中を巡回するぞ。気になった建物があったら言ってくれ」
「おう!」
ヴァンは彼女が見落とさないようにゆったりとしたスピードで上空を進む。
「今んとこ何にもないぜ。……あー、これ楽しいな! 今度全速力でぶっ放すやつもやってくれよ!」
「それはダメだ。危ないぞ」
「えー? お前なら大丈夫だろ? それにほら、また尻尾味わえるぞ? ほーれ」
ユウノは尻尾で絡みつく力を強めたり弱めたり、緩急をつけてヴァンの太ももを責める。尻尾の先で内股をそっと撫でられたあたりでヴァンは根を上げた。
「ユウノ! わ、分かったからそれやめてくれ! 気を失いそうだ!」
「き、効きすぎだろ……」
ヴァンは性癖の前であまりにチョロかった。強烈な刺激を受け、ずっと堪えていた怒りが自然と口から溢れる。
「クソっ! こんな地震さえ無ければ今頃たっぷり堪能できたのに! 俺は全ての自然災害に抗うぞ! 絶対全員助け出してやるからな!」
「り、立派なんだか不純なんだかだな……」
ユウノはよしよしとヴァンの頭を撫で、耳元でそっと呟く。
「……後でな。アタシは逃げないから」
聞いたぞ。逃げても追い回すからな。
「あ、ヴァン! あの赤い屋根の家!」
ユウノは地上を指差した。何の変哲もない民家。見たところこれといったダメージはない。
「人が居そうか?」
「多分。……けど何か、変な感じだ」
「……?」
よく分からないが何らかの違和感を感じ取ったらしい。ヴァンは言われるままその家の中にテレポートする。
「ヴァン、あっちだ! 息の音が聞こえる!」
被災地の住宅街。ユウノが民家の一つを指し示す。
ヴァンには何一つ聞こえなかったが、即座にユウノを抱き抱えてその家の中にテレポートした。外からは倒壊を免れた幸運な建物に見えていたが、内部では家具が倒れ、物が散乱していた。
一階のリビングに入室。人影は無い。ユウノは頭部に手を添えた。被っている魔術戦隊・マジュンジャーのマスクの下に猫耳がある。
「……二階だ!」
ユウノは言うや否や率先して階段を駆け上がっていく。マスクから溢れたロングヘアーをヒラヒラさせ、まるで慣れ親しんだ自宅の中を移動するようにある一室の前に辿り着いた。ドアノブを掴み、乱暴に動かそうとする。
「クッ、ドア開かねえ……! 壊すぜ!」
素早い決断。ユウノは内鍵がかけられていた扉を蹴破った。
「お、おい。俺が居ればどこでも入れるぞ……?」
後を追っていたヴァンは彼女を諌める。救助のためとはいえ、人様の家でこれはちょっと気が引けた。しかしヴァンのその感覚はテレポートを使いこなす魔導師ファクターならではのもの。彼女が侵入に手段を選ばないのは当然の判断だったのだろう。
「あ、いた! おい! 大丈夫か⁉︎」
倒れた本棚の下敷きになっていた女性を発見する。ユウノの呼びかけに反応を示さない。
「……気を失っているみたいだな。すぐ病院に連れて行く」
ヴァンは魔法で本棚を浮遊させ、その女性を救い出す。分身を増やして病院へテレポート。目立った外傷はなかった。呼吸をしていたのも確かだ。きっと命に別状はないだろう。
「……さすがだな、ユウノ。俺だけなら見逃していたかもしれない」
残った方のヴァンはユウノの頭を撫でくりまわす。
「へへ、連れてきて良かったろ?」
ユウノはくすぐったそうにその手を払い除けたが、多分マスクの下では誇らしげに頬を緩ませている。
ユウノは音や匂い、あるいは純然たる野生の勘のみで次々と被災者を見つけ出していた。ヴァンの調査では今回のように倒壊していない建物の中で気絶しているケースをいくつか取りこぼしてしまっていた。彼女を連れて来なかったらと思うと身震いする。
「この辺は今の人で最後だと思うぜ。勘だけどな」
彼女がそう言うなら根拠としては充分だった。
「もうここが最後のエリアだ。次は避難所の方を手伝ってくれるか?」
「わかった。あ、でも最終確認しようぜ。アタシ乗せて飛んでくれ」
「飛ぶ……?」
「上から見渡した方が早えだろ?」
ヴァンが返事をする前に、ユウノはまるでよじ登るようにヴァンの背中にくっついて無理やりおんぶの体勢になった。上空からユウノのセンサーに引っかかる建物を探そうとのことらしい。
「……しっかり捕まっておけよ。あと暴れないこと」
妻を乗せて飛ぶなんて危険、と言いたいところだがユウノの身体能力なら心配ないだろう。ユウノが頷くと彼女の顎がヴァンの肩に食い込んだ。ヴァンは彼女の太ももをしっかりホールドし、彼女もヴァンの首に回した腕を固める。胸をヴァンの背中に押し当て、密着できるだけ密着した。
「あと尻尾を俺に巻きつけてもいいぞ? 安全のために」
「それ本当に安全のためか? 性欲で言ってんなら肩噛むけど」
「……甘噛みしてくれ」
「半分正解ってとこかよ……」
ユウノは呆れつつも尻尾をヴァンの右太ももに絡めた。ご褒美過ぎた。
ヴァンがテレポートすると、そこはすでにミカデルハ上空。地上から五十メートル。
「わっ! すげえ! 飛んでるぜ!」
ユウノは歓喜の声を漏らす。ちょっとした絶叫マシーンの気分なのだろう。ヴァンはついでにバリアを張り、風と雪を避けると同時に内部の空気を魔法で暖めた。尻尾のお返しとばかりに快適な空の旅をお約束する。
「街中を巡回するぞ。気になった建物があったら言ってくれ」
「おう!」
ヴァンは彼女が見落とさないようにゆったりとしたスピードで上空を進む。
「今んとこ何にもないぜ。……あー、これ楽しいな! 今度全速力でぶっ放すやつもやってくれよ!」
「それはダメだ。危ないぞ」
「えー? お前なら大丈夫だろ? それにほら、また尻尾味わえるぞ? ほーれ」
ユウノは尻尾で絡みつく力を強めたり弱めたり、緩急をつけてヴァンの太ももを責める。尻尾の先で内股をそっと撫でられたあたりでヴァンは根を上げた。
「ユウノ! わ、分かったからそれやめてくれ! 気を失いそうだ!」
「き、効きすぎだろ……」
ヴァンは性癖の前であまりにチョロかった。強烈な刺激を受け、ずっと堪えていた怒りが自然と口から溢れる。
「クソっ! こんな地震さえ無ければ今頃たっぷり堪能できたのに! 俺は全ての自然災害に抗うぞ! 絶対全員助け出してやるからな!」
「り、立派なんだか不純なんだかだな……」
ユウノはよしよしとヴァンの頭を撫で、耳元でそっと呟く。
「……後でな。アタシは逃げないから」
聞いたぞ。逃げても追い回すからな。
「あ、ヴァン! あの赤い屋根の家!」
ユウノは地上を指差した。何の変哲もない民家。見たところこれといったダメージはない。
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