ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第05話 結婚反対デモ騒動

10.先輩と後輩

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 ***

 ミオとシュリルワは映画『ダブル』を観終え、カフェで休憩していた。

「……ん? 何か外混んできたわねぇ?」
「ホントです。……何ですあれ? ビースティアの子を囲んでるです」
「フフ、うちの夫でも出没したのかしらぁ♡」
「ふ、不審者みたいに言うなです」

 シュリルワに怪訝な目を向けられ、ミオはすっとぼけて視線を上に逸らす。ミオとしてはいっそネタにしてあげた方が良いという考えだった。

「もう……帰り大変そうです。わざわざアラムまで来ることなかったですのに……」
「いいじゃない。こっちの映画館の方が画面大きいし椅子もフカフカなんだからぁ」

 二人は首都アラムにまで赴いていた。家の最寄り駅にも映画館があるというのに、ミオが無理を言って連れ出した格好だ。かわいい後輩との久しぶりのお出かけということもあり、ミオは少し浮かれていた。

「……でも、映画自体はまあまあだったわねぇ」
「ですね。まさかどっちもフラれるとは……」

 映画『ダブル』はその名の通りダブルヒロインの恋愛映画だった。二時間かけて散々「主人公はどっちを選ぶんだ?」と煽った末、結局どちらも選ばないというオチだった。意外性はあったもののイマイチ腑に落ちない。

「お姉さんなら俄然マチルダちゃんだったわぁ。ちっちゃくて可愛いもん♡」

 二人のヒロインのビジュアルは対照的で、片方は背の小さい小動物系のマチルダ、もう片方はスラっとモデル体型のエレナ。ミオとしてはいい女風のエレナはどこか鼻につき、家庭的なマチルダはドタイプだった。少しシュリルワに似ていたように思う。

「えー? シュリならエレナがいいです。背高くて細くて乳が出てて」
「ず、随分エッチな目で見てたのねぇ……」

 シュリルワは背の低さを気にしているらしい。高身長のミオを羨んで突っかかってくることもしばしばある。ミオからすれば背が高いのなんて不便なだけで、小柄で愛らしいシュリルワこそ羨ましかった。乳に関してはシュリルワもしっかり出ているし、ミオの理想の体型である。

 ────まあ、お互い無いものねだりというやつなのだろう。どうしたって自分は自分だ。比べても仕方がない。

「あの男はどっちかだけでも選べば良かったですのに。誰も報われなかったです。……ん? むぅ……」

 シュリルワは呟いて、窓の外に遠い目を向けていた。何か考え込んでいるようだった。

「……シュリちゃん? 『自分たちは報われてるのか』とか考えてるでしょ?」

 推理をしてみる。

「心読むなです」
「フフ、当たりねぇ♡」

 ミオがドヤ顔でウインクを送ると、シュリルワは不服そうに口を尖らせた。 

「報われてる……でいいんじゃない? 結婚までいってるわけだしぃ」
「そう、なんですけどね。そういや本来は一人に絞るものだったって改めて気付かされたというか……」
「お姉さん観てて『どっちとも結婚したら良くない?』って思っちゃったわぁ」
「フフ、シュリも思ったです。感覚がおかしくなっちゃってるです」

 本来恋が成就するというのは、お互いがお互いの唯一になることを言うのだろう。スナキア家にはそれがない。夫と愛し合い結婚をしてはいても、その愛は排他的なものではない。自分の気持ちは本当に報われているのかと考えると、確かに引っ掛かりはある。だが、おそらく考えても答えは出ないし、自分の受け取り方次第なのだとミオは思う。

「悩んじゃったらお姉さんに相談してね?」
「……むぅ。たまにちゃんとお姉ちゃんやるですね。普段クソガキなのに……」

 ミオは堂々と胸を張ってみる。棘のある言葉も混ざっていたが、乳で跳ね返す所存だ。

 ────第二夫人ミオにとって第三夫人シュリルワは色んな意味で気になる後輩だった。自分の直後に入ってきた子だ。様々なことを考えさせられる。

 夫が彼女との結婚を決めたときにミオの頭に最初に過ぎったのは、「自分では足りなかったのか」という悲しさと怒りと恐怖だったと思う。この感情はきっと一番後輩であるユウノ以外は全員経験している。

 それでもシュリルワとの結婚後に夫がミオへの態度を変えることはなかったし、むしろ日々彼の愛情は膨張しているようにすら思える。彼は自分を心底大事にしてくれている。

 彼が他の子と結婚することは立場上仕方のないことだし、別にミオを見限ったわけではないということも理解している。一夫多妻を前提に彼との結婚を選んだのは自分だし、後から文句を言うつもりはない。

 ただ、シュリルワへの向き合い方は難しかった。

 あろうことか彼女はミオにとって理想のような女の子で、彼女と横並びになることはとても怖かった。でも、彼女が悪いわけではないし、責めるのもおかしい。このモヤモヤは彼女に向けていいものではない。でも、じゃあどうすれば?

 ミオを葛藤の渦から救い出してくれたのは先輩のジルーナだった。思えばミオだって彼女に同じ思いをさせたはずだ。それなのに彼女はミオを優しく向かい入れ、「あなたが居てくれてよかった」とすら言ってくれた。あれでどれだけ救われたことか。

 後輩側にだってすでにある家庭に割って入る苦労があるのだ。シュリルワには同じことをしてあげようと強く思ったのを覚えている。ちょっと構いすぎてウザがられてしまったが。

「……ジルのこと考えてるです?」

 シュリルワは挑発的に笑う。

「流石お姉さんの後輩ね♡」

 交わした言葉は少なかったが、もう相手が何を考えているか分かるくらいの域にまで来てしまった。互いに今まで培ってきた日々に思いを巡らせ、微笑みあう。

「もうシュリたちはベテランです。シュリはアンタよりあの家に居る期間長いですし。だからアンタに相談することなんてないですよ」
「い、いいじゃないちょっとは頼ってくれたって……!」

 ミオはむくれてみせる。シュリルワはすまし顔で抗議を無視した。今や二人の関係は二人なりに完成して、安定していた。

「ん?」

 ふいに、二人の携帯が同時になった。夫からの連絡だった。

「……『アラムに居るならタクシーやるぞ。混んでるみたいだ』ですって」

 シュリルワはメッセージを読み上げる。ミオにも一字一句同じ文言が届いていた。

「フフ、多分ティアちゃんにやってあげたからこっちもってことかしらねぇ?」
「アイツもアイツで全員ちゃんと相手しようとして大変ですね……」
「甘えちゃいましょうか♡」
「です」

 二人は会計を済ませて店外に出て、エレベーターの中で待機した。やがて夫が登場する。

「来たぞ。か、帰ろう!」

 夫は少し、慌てているように見えた。よく分からないがシュリルワと揃って彼に掴まり、テレポートしてもらう。見慣れたスナキア家共用リビングだ。

「じゃ、じゃあな!」

 礼を告げる間もなく夫は去って行った。何か事情があるなら聞きたかったのに。まるで尋ねられるのを避けるかのように逃げて行った。

「な、何なんです?」
「ね。まあ助かったからいいけどぉ」

 実に便利な夫だ。キティアが調教してくれるおかげでどんどん成長していく。そう考えると一夫多妻にも恩恵はあるというわけだ。

「……み、ミオ! 外!」

 突然、シュリルワが窓の外を指さして驚愕した。ミオも覗き込んでみると、その理由がすぐに分かった。

「フーちゃん……⁉︎ 何あの性的なコスプレは……?」
「あれじゃ裸の方がマシです……!」

 スナキア家の庭ではフラムがヒーヒーと肩で息をしながらのそのそとジョギングしていた。その側でエルリアが心配そうな表情で随行し、ユウノは木陰で昼寝をしている。

 その光景はしばらく観察したのち、シュリルワは神妙な表情でミオに尋ねた。

「ミオ……。相談していいです?」
「え?」

 突如カフェでの発言を撤回し、ミオを頼ってきた。ミオは大真面目な顔で首を縦に振る。

「まずシュリの推理が合ってるか聞いてほしいです」
「推理……?」
「フラムはダイエットしてるです。あいつ別に太ってないのに『他の子はもっと痩せてるから』とか言って。それでエルのジョギングに混ざったけどついていけるはずもなくて、あんまりに遅いからユウノは退屈して寝てるです」
「そ、そうね。そうだと思うわぁ」

 おそらく正しい。フラムは運動慣れしておらずジャージも持っていなかったのだろう。学生時代の体操着を引っ張り出してきたせいであんなにエロくなってしまった。

「多分、あいつは『運動できないならご飯を抜こう』って考えると思うです。そんなのはダメです。ちゃんと食べないと」
「うん」
「でもあいつは案外頑固ですし、やると決めたらとんでもないことしちゃうです」
「……うん」
「シュリが騒いでもかえって頑なになって食べない気がするです。……どうしたらご飯食べさせられるです?」

 随分先回りして心配しているようだ。しかしおそらく彼女の言う通りになる。ミオからしてもその展開は目に浮かぶようだった。

 シュリルワにとってはフラムが直近の後輩だ。きっとミオがシュリルワに感じているような思いを抱いているのだろう。であれば自分はジルーナがしてくれたように、後輩の悩みを取り除いてあげたい。

「そういうのはお姉さんに任せなさい♡」

 ミオは作戦を伝授した。
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