ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

文字の大きさ
79 / 117
第06話 ざまあみろ、ウィルクトリア(過去編)

11.覚醒

しおりを挟む
 二人は遠からず十六歳になる。ウィルクトリアでは結婚が認められる歳だ。────彼女と結ばれることができたらどれだけ良いか。そう思わない日はない。

 だが現状、二人が結婚することは許されない。ヴァンはファクターで、ジルーナはビースティア。二人は種族が違い、子どもを授かれない。

 そんな結婚をウィルクトリアが認めるはずがなく、ヴァンは守護者の責務を放棄したと見做されかねない。そうなれば総理は、殲滅戦争というカードを切る。

 だがもし、この国がまともになれば。

 他国との関係を改善し、スナキア家が不要になれば、もう後継なんて必要ない。その日が来ればヴァンは、────自由に結婚できる。

 今やこの想いがヴァンを国家改革へと突き動かす一番の原動力になっていた。絶対に成し遂げてみせる。世界の平和のためだけではなく、自分自身のために。

 ……一人であれこれ考え込んでいると、太ももをチョンチョンと突かれる感触がした。目を向けると、────ジルーナが尻尾で俺を突いていた。

「……っっっ!!!」

 ヴァンは飛び上がるようにガーデンチェアから立ち上がった。今のが……尻尾の感触……!

「ど、どうしたのヴァン⁉︎ ごめんそんなにびっくりさせちゃった⁉︎」
「あ、いや! 何でもない!」

 奇異の視線を浴びながら再び着席する。しかし未だ心臓がバクバク鳴っていた。……やはり重症だ。重度のビースティアフェチになりつつある。

 ジルーナはまさか横に変態が居るとは知らず、呑気に尻尾を揺らしている。体育座りに体勢を変え、小首を傾げて尋ねた。

「ねぇ、ヴァンが今頑張ってること教えて?」

 甘えるようなトーンが耳をくすぐる。ジルーナはいつもこうして俺が取り組んでいることを聞きたがる。そしてまるで自分のことのような誇らしげな表情で俺を見守ってくれるのだ。

 ヴァンはこの時間が好きだった。

「銀行を作ろうとしてる」
「えぇ⁉︎ 銀行ってあの銀行⁉︎」

 できるだけびっくりさせるような話をストックしておくのがヴァンの密かな日々の楽しみだ。

「実はスナキア家って世界の財産の一割を持ってるんだ」
「ま、待って。ボンボンどころの話じゃないじゃん……!」
「富を独占しているのは健全じゃないし、せっかくなら資産を国家改革のために使いたいから、協力してくれる人や企業に融資する組織を作りたいんだよ」

 ヴァンは細々とした理屈を補足する。起業を志す人や、数少ない国内企業を育てるため、ほとんど無利子で莫大な金額を貸す。経営が軌道に乗って雇用を産めば返済自体を免除する。そんな仕組みだ。

「ひ、一人でそんなとんでもないことしてるの? え? できたら窓口にヴァンが立つの?」
「ハハ、ちゃんと協力者はいるよ。世界中の大学でコネを作って、金融の専門家や業務経験がある人たちを集めた。俺はほとんどお金を出すだけになりそうだ」

 ウィルクトリアが経済発展を果たせば他国にとっては都合がよいらしい。かなり前のめりで力を貸してくれているので、遠からず実現できる。

「難しそうな経済の本とか読んでたもんね。ヴァンはすごいなぁ……」
「それだけじゃないぞ。法律も勉強してるから総理に邪魔されない論理武装も整えてあるんだ」

 世界中の法律を学び、ウィルクトリアは銀行法がガバガバだと知った。特に融資周りは必要がなかったのか穴だらけだ。隙をついて投資しまくり、この国を経済発展させてやる。

 ジルーナはもはやポカンとしていた。ヴァンは彼女の反応を見てワクワクしてきた。

「……もうすぐ、全部発表できる」

 数ヶ月後にヴァンの大学院卒業を祝した祭典が行われる。それはスナキア家当主が一人前になったお披露目という性質も帯びており、世界中が注目する行事になる。

 ヴァンはその壇上でついに動き出す。この国を作り変え、和平を目指すと宣言するのだ。

「この三年で色々身についたし、コネもたくさん作れた。実現性の高い計画を発表できると思う」
「本当に頑張ったよねヴァン……。私心の底から尊敬してる」
「俺は分身が使えるからどうにでもなるんだよ。本当にすごいのはジルだ」

 ヴァンこそ、心の底からそう思う。ヴァンは所詮分身それぞれが一人分の努力をしただけだ。彼女は一人で何十人分も走り回ってくれた。

「ありがとう、ジル。君の支えがあったから俺はいつでも前を向けた」
「ヴァン……」

 二人は目を合わせ、そのまま口を噤んだ。風と波の音だけが周囲を包む。

 ジルーナの透き通った瞳と、少し紅潮した頬。
 そして、艶やかな唇。

 どちらからでもない。二人はただ導かれるように顔を近づけていき────、

「「……っ!」」

 同じタイミングで慌てて顔を背けた。全身が熱い。心臓が吠えるように暴れている。……何をやっているんだ俺は! キスなんてしていい立場か⁉︎

「そ、そろそろ帰ろっ?」
「あ、ああ! そうだな!」

 二人は二人がしでかしそうだったことには全く触れず、取り繕うようにいそいそと立ち上がった。

 気づけば空は深い青に移り変わり、星々がうっすらと輝き始めていた。冷えてきたし、母国はもう人が眠る時間だ。何よりこんな綺麗な場所に二人で居続けたら、きっと間違いを犯してしまう。

 ヴァンは彼女の手を取って家にエスコートした。その小さな手の温もりは鼓動をさらに加速させるに充分な刺激だったが、今はまだ溺れてはいけないと自分に強く言い聞かせた。


 しかし、ヴァンの中で日に日に膨れ上がるジルへの気持ちと異常な性癖は、もうすでに大問題を引き起こしていた。
 ────最悪の場合、世界が滅ぶかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...