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第06話 ざまあみろ、ウィルクトリア(過去編)
13.醜悪
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***
この日のために誂えたスーツを身に纏う。鏡の前で身だしなみを最終確認。おっと、ネクタイが──
「曲がってるよ。もう、しっかりしなきゃ」
ジルーナが呆れ顔でヴァンの首元に手を伸ばし、ネクタイを整えてくれた。ヴァンは「今直すところだったんだ」という言葉をグッと飲み込んで、甘んじて彼女のお叱りを受け入れた。
「……卒業おめでと、ヴァン」
彼女は噛み締めるように呟いた。ついにこの日が来たのだ。国民に、いや、世界に、ヴァンの意志を伝える時が。
「ジルもおめでとう。いよいよ高校生か」
一世一代の大事な戦いの前だというのに、力を抜いて喋れる相手が傍にいてくれることが心強かった。ジルーナは嬉しそうに胸を張る。
「ありがと。ヴァンのおかげだよ」
彼女は働きながらも国内トップの高校に合格。彼女自身の努力と生真面目な性格に加え、飛び級を繰り返した俺と一緒に先々の勉強していたという事情も手伝い、中堅大学くらいなら受かりそうな学力を身に付けていた。
本当に立派な人だ。ヴァンを支えながらも、自分のことだって手を抜かず──、
「まあ私進学しないんだけどね。入学手続きしなかったし」
こともなげに呟かれたその言葉に、ヴァンの時間はしばらく停止した。手続きを、してないだと……?
「ハァ⁉︎ お、俺書類作ったよな⁉︎ 保護者の欄を誤魔化して!」
「郵送は承っておりましたので」
ジルはしてやったりと微笑んで、あえて使用人口調で告げる。丁寧なお辞儀もセットだ。
「な、なんてことしたんだ! せっかく合格したのに!」
「だっていい加減お仕事に集中したかったんだもん。ヴァンに言ったら絶対反対されるからこうして騙し討ちになったのです」
「~~~っ!」
絶句だ。彼女はこうと決めたら一直線。誰にも止められない。まさか大事な勝負の直前にこんな爆弾を投下されるとは。
「でも実際必要? 勉強はそれなりに身につけたって証明したでしょ? お仕事にももう就いてるわけだし。……あと、三年しか働いてないのに三百年は暮らせそうな貯金があります」
「給料使ってないのか⁉︎」
「ヴァンが払い過ぎなだけ! 使い切れるわけないじゃんかあんなの!」
ヴァンのせめてもの感謝の気持ちは彼女が腹を括る材料の一つになっていたらしい。くそ、今回ばかりは絶対説き伏せないと。
「学校に掛け合ってくる! お、俺がごねればどうにでも──」
「そんなことしたって私行かないからね!」
「テレポートで無理矢理連れて行く!」
「走って戻ってくる!」
「また連れて行く!」
「何度でも戻ってくるから!」
あ、ダメだ。本気の目をしている。百回護送しようが百回帰ってくる。彼女はそういう人だ。
「ジル……。俺はもうこの三年間ほど修行はしないし、学校にも行かない。やっと君の負担が減って自由に時間を使えると思っていたのに……」
「だから、自由に使ってるでしょうが!」
彼女は強気に言い切ったが、ヴァンが萎れていく様を見て少し動揺し始めた。
「……騙したのはごめんね。でもさ、ヴァンが大人になるんだから私も一緒になりたかったの。支えさせてよ。それが一番したかったことなの」
「……」
そんなに健気なことを言われたらもう何も言えない。彼女が腹を括る気持ちも理解できる。ヴァンだけではなく彼女も、全部を賭けて、全部やったのだ。そしてその戦いはこれからも続く。
「……わかった。これからも頼らせてくれ」
「うん! 私に任せて! 何だってしてあげるからね!」
ジルは本当に嬉しそうに笑っていた。こうなったら彼女が支えて良かったと心の底から思えるようにヴァンも全力を尽くすしかない。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ヴァンは会場にテレポートした。
────ウィルクトリアの首都・アラムに立つ巨大ホール。いよいよこの時が来た。
壇上にヴァン・スナキアが現れると、場内は割れんばかりの歓声に包まれた。ヴァンの姿を見るだけで感動の余り啜り泣く者も多い。
「スナキア家十四代当主、ヴァン・スナキアです」
名乗りを上げると、再び熱狂的な歓声が上がる。二の句を次ぐまで三十秒ほどは待たなくてはならなかった。
「……私はこの三年間、勉学に励むと共に、魔導師としての修行を積んで参りました。その成果がこちらです」
ヴァンは分身を披露する。その数、実に三万。ホール内に飛行し、国民たちを見下ろす。観衆のどよめきが収まるのを待ち、分身を回収した。
「人の一生は約三万日と言われています。こうして三万人に分身して一日を過ごせば、それだけで一生分の人生経験を得ることになります。私はまだ十五歳ではありますが、過ごした月日はすでに数万年を超えています」
観衆は静まり返った。我ながら、ヴァンの日々は常軌を逸していると思う。
「分身を披露したのは力を誇示するためではありません。今から私が話すことが、何も知らぬ若造の世迷言だと思われないように……。私が私なりに努力と経験を積んだ上での言葉だと思っていただくためです」
ヴァンは一度深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「三年前、戦争が起こりました。……私の力が及ばず犠牲者を出してしまいました。その中には私の父も含まれます」
ヴァンは国を救った英雄であると同時に、被害者の代表的な存在である。少ない犠牲者で済んだ割に国民たちから報復戦争を願う声が絶えないのは、ヴァンのために怒っているつもりだからだ。
「しかしもう皆さんを不安にはさせません。今や私の力はあの頃をはるかに上回ります。終末の雨の一万倍の規模の攻撃を受けたとしても、皆さんは煙ひとつ見ることはないでしょう」
ヴァンが和平を望む姿は「白旗を上げた」と判断され攻撃を誘発する可能性がある。まずは世界に無駄な争いは辞めようとアピールしておく。
「あの戦争でウィルクトリアは多くのものを失いました。我々にあのような思いをさせた国々に対する報復を望む声は、日々私の元に届いています。そして私にはそれを容易く叶える力があります」
復讐。それを期待した一部の国民たちが高揚して声を上げる。しかし────、
「復讐はしません。私がやりたいことは別にあります」
虚をつかれた民衆が再び静まり返る。
「そもそも、なぜこの国が世界中から攻撃を受けたのか。その答えを皆さんは知っているはずです」
この国の歴史と現状に触れる。全てはこの国の傲慢な行いが招いたこと。ヴァンとジルーナの肉親を奪ったあの軍事攻撃を正当化はできないが、各国がそれに至った動機は充分に理解できる。
もうこれで終わりにするべきだ。
「私の願いは平和です。ウィルクトリアも世界も、過去を乗り越え、憎しみの連鎖を終わらせましょう」
それからヴァンは具体策を説明した。
問題の種になっている賠償金の請求を今すぐ止めるとは言わない。この国の経済を立て直しながら段階的に減額していく。その長い改革に付き合ってもらうことを報復の代わりとし、武力行使は不要であると強調した。
まずは国内企業を育てる。改革派の政党に政権を持たせ、企業を興し、運営し、人を雇うという流れが円滑に行われるよう法整備を進める。ジルに話した銀行の計画も披露し、すぐにでも舵を切ると周知した。
あとはやる気だけがあればいい。国民と政府にやる気があれば、賠償金なしでも経済的に自立できる国になれる。恨まれる理由を排除すれば、和平の道を進む準備が整う。
並行して俺は平和の使者として各国のために働く。
強力な魔法と十五万にも及ぶ分身を活用し、紛争の解決、災害対応や復興の支援、インフラ整備のための土木工事などなど何でもやる。見返りを求めないどころか積極的に寄付もしよう。
ウィルクトリアと友好的に付き合って俺のあらゆる力を利用できた方が得をする、そんな関係に持っていく。最初は仲が良いフリでもいい。実利を与え続ければいずれ本当に手を繋げる日がきっと来る。
「──これらを叶えるためには、私の考えに賛同する人々に政権を託す必要があります。国民の皆さんには四ヶ月後の国政選挙で選んでいただきたい。この国が変わる選択肢を」
来賓席に座っているアシュノット総理の眉がぴくりと動いたのが見えた。しかし彼は平静は崩さず、やれるものならやってみろとばかりに含み笑いを見せた。
「戦争で父を失い、たった一人でミサイルの雨と戦った私から、皆さんにどうかお願いしたい。もう戦いを終わらせてください」
せいぜい十五分程度のスピーチだったが、ヴァンが三年間かけて準備してきた成果は見せられた。あとは……、
「未来を想いましょう」
国民が答えてくれるのを待つだけだ。ヴァンは以上と小さく告げて会釈する。
拍手は起こらなかった。不安や困惑の混ざったどよめきが場内に充満していた。
────やがて、口火は切られた。
「……ふざけるなー!」
観客席から怒号が飛ぶ。
「ウィルクトリアは世界の支配者だ! 労働など他国の奴隷にやらせろ!」
「戦争だ! スナキア家の力を見せつけてやれ!」
「あの狼藉を許してなるものか! 代償を支払わせろ!」
一人、また一人と口を開いていく。いずれ場内を罵詈雑言が埋め尽くし、頭が割れそうなほどうるさくなる。
ヴァンは硬直してしまった。国民には、何も響いていなかった。
「……っ」
何なんだ、こいつらは……?
ちょっとでも頭を使って考えたのか? 他国から搾取した財産で生きているくせに他国を傷つけてどうする気だ? あのミサイルの雨を見て何の反省もしなかったのか?
国にこれだけ尽くしたヴァンに耳を傾ける気は一切ないのか?
これからもヴァンだけが全ての責任を負えと言うのか?
愕然として言葉が出てこない。この国はここまで醜悪だったのだ。
ヴァンはこいつらを守り続けなければならない。その理不尽すぎる運命を、この瞬間初めて本当の意味で理解した。
この日のために誂えたスーツを身に纏う。鏡の前で身だしなみを最終確認。おっと、ネクタイが──
「曲がってるよ。もう、しっかりしなきゃ」
ジルーナが呆れ顔でヴァンの首元に手を伸ばし、ネクタイを整えてくれた。ヴァンは「今直すところだったんだ」という言葉をグッと飲み込んで、甘んじて彼女のお叱りを受け入れた。
「……卒業おめでと、ヴァン」
彼女は噛み締めるように呟いた。ついにこの日が来たのだ。国民に、いや、世界に、ヴァンの意志を伝える時が。
「ジルもおめでとう。いよいよ高校生か」
一世一代の大事な戦いの前だというのに、力を抜いて喋れる相手が傍にいてくれることが心強かった。ジルーナは嬉しそうに胸を張る。
「ありがと。ヴァンのおかげだよ」
彼女は働きながらも国内トップの高校に合格。彼女自身の努力と生真面目な性格に加え、飛び級を繰り返した俺と一緒に先々の勉強していたという事情も手伝い、中堅大学くらいなら受かりそうな学力を身に付けていた。
本当に立派な人だ。ヴァンを支えながらも、自分のことだって手を抜かず──、
「まあ私進学しないんだけどね。入学手続きしなかったし」
こともなげに呟かれたその言葉に、ヴァンの時間はしばらく停止した。手続きを、してないだと……?
「ハァ⁉︎ お、俺書類作ったよな⁉︎ 保護者の欄を誤魔化して!」
「郵送は承っておりましたので」
ジルはしてやったりと微笑んで、あえて使用人口調で告げる。丁寧なお辞儀もセットだ。
「な、なんてことしたんだ! せっかく合格したのに!」
「だっていい加減お仕事に集中したかったんだもん。ヴァンに言ったら絶対反対されるからこうして騙し討ちになったのです」
「~~~っ!」
絶句だ。彼女はこうと決めたら一直線。誰にも止められない。まさか大事な勝負の直前にこんな爆弾を投下されるとは。
「でも実際必要? 勉強はそれなりに身につけたって証明したでしょ? お仕事にももう就いてるわけだし。……あと、三年しか働いてないのに三百年は暮らせそうな貯金があります」
「給料使ってないのか⁉︎」
「ヴァンが払い過ぎなだけ! 使い切れるわけないじゃんかあんなの!」
ヴァンのせめてもの感謝の気持ちは彼女が腹を括る材料の一つになっていたらしい。くそ、今回ばかりは絶対説き伏せないと。
「学校に掛け合ってくる! お、俺がごねればどうにでも──」
「そんなことしたって私行かないからね!」
「テレポートで無理矢理連れて行く!」
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「また連れて行く!」
「何度でも戻ってくるから!」
あ、ダメだ。本気の目をしている。百回護送しようが百回帰ってくる。彼女はそういう人だ。
「ジル……。俺はもうこの三年間ほど修行はしないし、学校にも行かない。やっと君の負担が減って自由に時間を使えると思っていたのに……」
「だから、自由に使ってるでしょうが!」
彼女は強気に言い切ったが、ヴァンが萎れていく様を見て少し動揺し始めた。
「……騙したのはごめんね。でもさ、ヴァンが大人になるんだから私も一緒になりたかったの。支えさせてよ。それが一番したかったことなの」
「……」
そんなに健気なことを言われたらもう何も言えない。彼女が腹を括る気持ちも理解できる。ヴァンだけではなく彼女も、全部を賭けて、全部やったのだ。そしてその戦いはこれからも続く。
「……わかった。これからも頼らせてくれ」
「うん! 私に任せて! 何だってしてあげるからね!」
ジルは本当に嬉しそうに笑っていた。こうなったら彼女が支えて良かったと心の底から思えるようにヴァンも全力を尽くすしかない。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ヴァンは会場にテレポートした。
────ウィルクトリアの首都・アラムに立つ巨大ホール。いよいよこの時が来た。
壇上にヴァン・スナキアが現れると、場内は割れんばかりの歓声に包まれた。ヴァンの姿を見るだけで感動の余り啜り泣く者も多い。
「スナキア家十四代当主、ヴァン・スナキアです」
名乗りを上げると、再び熱狂的な歓声が上がる。二の句を次ぐまで三十秒ほどは待たなくてはならなかった。
「……私はこの三年間、勉学に励むと共に、魔導師としての修行を積んで参りました。その成果がこちらです」
ヴァンは分身を披露する。その数、実に三万。ホール内に飛行し、国民たちを見下ろす。観衆のどよめきが収まるのを待ち、分身を回収した。
「人の一生は約三万日と言われています。こうして三万人に分身して一日を過ごせば、それだけで一生分の人生経験を得ることになります。私はまだ十五歳ではありますが、過ごした月日はすでに数万年を超えています」
観衆は静まり返った。我ながら、ヴァンの日々は常軌を逸していると思う。
「分身を披露したのは力を誇示するためではありません。今から私が話すことが、何も知らぬ若造の世迷言だと思われないように……。私が私なりに努力と経験を積んだ上での言葉だと思っていただくためです」
ヴァンは一度深く息を吸い、ゆっくりと吐き出した。
「三年前、戦争が起こりました。……私の力が及ばず犠牲者を出してしまいました。その中には私の父も含まれます」
ヴァンは国を救った英雄であると同時に、被害者の代表的な存在である。少ない犠牲者で済んだ割に国民たちから報復戦争を願う声が絶えないのは、ヴァンのために怒っているつもりだからだ。
「しかしもう皆さんを不安にはさせません。今や私の力はあの頃をはるかに上回ります。終末の雨の一万倍の規模の攻撃を受けたとしても、皆さんは煙ひとつ見ることはないでしょう」
ヴァンが和平を望む姿は「白旗を上げた」と判断され攻撃を誘発する可能性がある。まずは世界に無駄な争いは辞めようとアピールしておく。
「あの戦争でウィルクトリアは多くのものを失いました。我々にあのような思いをさせた国々に対する報復を望む声は、日々私の元に届いています。そして私にはそれを容易く叶える力があります」
復讐。それを期待した一部の国民たちが高揚して声を上げる。しかし────、
「復讐はしません。私がやりたいことは別にあります」
虚をつかれた民衆が再び静まり返る。
「そもそも、なぜこの国が世界中から攻撃を受けたのか。その答えを皆さんは知っているはずです」
この国の歴史と現状に触れる。全てはこの国の傲慢な行いが招いたこと。ヴァンとジルーナの肉親を奪ったあの軍事攻撃を正当化はできないが、各国がそれに至った動機は充分に理解できる。
もうこれで終わりにするべきだ。
「私の願いは平和です。ウィルクトリアも世界も、過去を乗り越え、憎しみの連鎖を終わらせましょう」
それからヴァンは具体策を説明した。
問題の種になっている賠償金の請求を今すぐ止めるとは言わない。この国の経済を立て直しながら段階的に減額していく。その長い改革に付き合ってもらうことを報復の代わりとし、武力行使は不要であると強調した。
まずは国内企業を育てる。改革派の政党に政権を持たせ、企業を興し、運営し、人を雇うという流れが円滑に行われるよう法整備を進める。ジルに話した銀行の計画も披露し、すぐにでも舵を切ると周知した。
あとはやる気だけがあればいい。国民と政府にやる気があれば、賠償金なしでも経済的に自立できる国になれる。恨まれる理由を排除すれば、和平の道を進む準備が整う。
並行して俺は平和の使者として各国のために働く。
強力な魔法と十五万にも及ぶ分身を活用し、紛争の解決、災害対応や復興の支援、インフラ整備のための土木工事などなど何でもやる。見返りを求めないどころか積極的に寄付もしよう。
ウィルクトリアと友好的に付き合って俺のあらゆる力を利用できた方が得をする、そんな関係に持っていく。最初は仲が良いフリでもいい。実利を与え続ければいずれ本当に手を繋げる日がきっと来る。
「──これらを叶えるためには、私の考えに賛同する人々に政権を託す必要があります。国民の皆さんには四ヶ月後の国政選挙で選んでいただきたい。この国が変わる選択肢を」
来賓席に座っているアシュノット総理の眉がぴくりと動いたのが見えた。しかし彼は平静は崩さず、やれるものならやってみろとばかりに含み笑いを見せた。
「戦争で父を失い、たった一人でミサイルの雨と戦った私から、皆さんにどうかお願いしたい。もう戦いを終わらせてください」
せいぜい十五分程度のスピーチだったが、ヴァンが三年間かけて準備してきた成果は見せられた。あとは……、
「未来を想いましょう」
国民が答えてくれるのを待つだけだ。ヴァンは以上と小さく告げて会釈する。
拍手は起こらなかった。不安や困惑の混ざったどよめきが場内に充満していた。
────やがて、口火は切られた。
「……ふざけるなー!」
観客席から怒号が飛ぶ。
「ウィルクトリアは世界の支配者だ! 労働など他国の奴隷にやらせろ!」
「戦争だ! スナキア家の力を見せつけてやれ!」
「あの狼藉を許してなるものか! 代償を支払わせろ!」
一人、また一人と口を開いていく。いずれ場内を罵詈雑言が埋め尽くし、頭が割れそうなほどうるさくなる。
ヴァンは硬直してしまった。国民には、何も響いていなかった。
「……っ」
何なんだ、こいつらは……?
ちょっとでも頭を使って考えたのか? 他国から搾取した財産で生きているくせに他国を傷つけてどうする気だ? あのミサイルの雨を見て何の反省もしなかったのか?
国にこれだけ尽くしたヴァンに耳を傾ける気は一切ないのか?
これからもヴァンだけが全ての責任を負えと言うのか?
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