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第17話 初めてのドラゴン肉
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丁度窓際の席が空いているから、ミューレンさんと対面で座る。
ありがたいことに、周囲は適度な距離を保ってくれた。おかげで、落ち着いて腹を満たせそうだ。
「イブキ様、足りなかったらお申し付けください。お代わりをお持ちしますので」
「ありがとうございます」
足りない……なんてことはないだろう。見た感じ、500グラムくらいある。パンや付け合わせもあるから、男子高校生でも満腹になるはずだ。
くんくん……それにしても、良い匂いだ。肉の香ばしい匂いだけじゃない。焦がしバターのような芳醇な香りとハーブ系の匂いが混じっていて、食欲をそそる。まるで、匂いに胸倉を掴まれて「さっさと俺を喰らえ」って言われてるみたい。
「じゃあ……いただきます」
いつも通り手を合わせて挨拶をする。いくら世界が変わろうが、これだけはやらないと気持ちが悪い。
が、この世界にこういった文化がないのか、ミューレンさんはきょとんとしていた。
「イブキ様。それはなんですか? いた……?」
「いただきます、です。命を食べて生きていくから……その感謝を込めた言葉なんです」
「命への感謝……素晴らしい文化ですね……!!」
俺の説明に感動したらしく、目をキラキラさせルミューレンさん。なんか、外国人に日本文化を説明してる気分になる。
ミューレンさんも見よう見まねで手を合わせ、「いただきます」と呟く。それを見ていた周りの女性たちも、次々に真似しだした。
なんか、嬉しいな。日本が受け入れられたみたいで。
急にこそばゆくなり、ナイフとフォークを手に肉へかぶりつく。
「!? ……うまぁ……!」
弾けるような肉汁。それと共に口いっぱいに広がる旨み。甘くとろけるような脂。少し独特な肉の匂いがするけど、まったく嫌じゃない。むしろ、食欲を駆り立てるいいスパイスだ。
これが、ドラゴンの肉……もっと筋肉質なのかと思っていたけど、全然そんなことはない。美味い、美味すぎる。
地球人初のドラゴン食いという感動を覚える間もなく、もっともっとと食らい付く。
ミューレンさんはどこか楽しそうに微笑み、じっとこっちを見てきた。
「お気に召したようで、良かったです」
「はい、もうほんっと美味いです。こんな肉、食べたことありません」
和牛の脂は、かなり胃にもたれる。けどこの脂は、そんなことがない。むしろ、食べれば食べるほど活力が漲ってくる。
あっという間に、一枚を平らげてしまった。
けど……足りない。まだまだいける。
席を立とうとすると、ミューレンさんが俺の肩に手を置き、そっと座らせた。
「イブキ様はここでお待ちを。私がお代わりを取ってきますので」
「そんな、悪いですよ」
「お気になさらず。どうぞ、ごゆるりと」
去っていくミューレンさんを見送り、喉を潤す。肉で火照った体が冷やされ、気持ちいい。
「ふぅ……」
「よぉ、イブキ。食ってるか?」
「え? うぉっ」
窓の外を見上げれば、オメガさんの巨体が覗き込んでいた。
でかいから食堂に入らないっていうのは、本当だったらしい。あぐらをかいているのに、見上げるほど巨大だった。
もう総隊長としての仕事は終わったのか、片手には巨大な樽のカップ。もう片方には焼かれた骨付き肉が握られている。体格と同じで、食べ方も豪快な人だ。
「は、はい。すみません。俺、何もしていないのにタダ飯貰っちゃって……」
「気にすんな。むしろ、都市部で保護されている男どもは、子孫を残すのが仕事らしいぞ。もし今日からミューレンと励むんだったら、仕事をしてるってことになる。タダ飯でもなんでもねーよ」
「し、しませんって、そんな……!」
てかこの世界の男、そんな羨ましい生活してんの!? ズルくない!?
「なんでぇ、つまらねぇ。ま、冗談だがよ! ガハハハハッ!」
豪快に笑ったオメガさんは、大きな口で肉にかぶりつく。
まったくもう……からかわないでくれ。本気にしちゃうから。
酒を呷ったオメガさんは、深く息を吐いてからまた俺に目を向けた。
「が、そうだなぁ。せっかくここにいるんだし、仕事の1つや2つはやってもいいかもな。どうせ暇だろ?」
暇なことは暇だし、やる事がないのも事実だけど、ニートみたいな言い方は如何なものかと。
「……わかりました。俺も、ずっと何もしない訳にもいきませんから」
「っし、決まり! 明日、またミューレンと一緒にアタイんとこ来い!」
それだけ言い残し、肉を平らげたオメガさんはお代わりを貰いに行った。既に10キロくらい食ってる気が……さすが巨人族の血が入ってるだけあり、超大食いだ。
にしても、仕事か……いったい、何をするんだろうか。
ありがたいことに、周囲は適度な距離を保ってくれた。おかげで、落ち着いて腹を満たせそうだ。
「イブキ様、足りなかったらお申し付けください。お代わりをお持ちしますので」
「ありがとうございます」
足りない……なんてことはないだろう。見た感じ、500グラムくらいある。パンや付け合わせもあるから、男子高校生でも満腹になるはずだ。
くんくん……それにしても、良い匂いだ。肉の香ばしい匂いだけじゃない。焦がしバターのような芳醇な香りとハーブ系の匂いが混じっていて、食欲をそそる。まるで、匂いに胸倉を掴まれて「さっさと俺を喰らえ」って言われてるみたい。
「じゃあ……いただきます」
いつも通り手を合わせて挨拶をする。いくら世界が変わろうが、これだけはやらないと気持ちが悪い。
が、この世界にこういった文化がないのか、ミューレンさんはきょとんとしていた。
「イブキ様。それはなんですか? いた……?」
「いただきます、です。命を食べて生きていくから……その感謝を込めた言葉なんです」
「命への感謝……素晴らしい文化ですね……!!」
俺の説明に感動したらしく、目をキラキラさせルミューレンさん。なんか、外国人に日本文化を説明してる気分になる。
ミューレンさんも見よう見まねで手を合わせ、「いただきます」と呟く。それを見ていた周りの女性たちも、次々に真似しだした。
なんか、嬉しいな。日本が受け入れられたみたいで。
急にこそばゆくなり、ナイフとフォークを手に肉へかぶりつく。
「!? ……うまぁ……!」
弾けるような肉汁。それと共に口いっぱいに広がる旨み。甘くとろけるような脂。少し独特な肉の匂いがするけど、まったく嫌じゃない。むしろ、食欲を駆り立てるいいスパイスだ。
これが、ドラゴンの肉……もっと筋肉質なのかと思っていたけど、全然そんなことはない。美味い、美味すぎる。
地球人初のドラゴン食いという感動を覚える間もなく、もっともっとと食らい付く。
ミューレンさんはどこか楽しそうに微笑み、じっとこっちを見てきた。
「お気に召したようで、良かったです」
「はい、もうほんっと美味いです。こんな肉、食べたことありません」
和牛の脂は、かなり胃にもたれる。けどこの脂は、そんなことがない。むしろ、食べれば食べるほど活力が漲ってくる。
あっという間に、一枚を平らげてしまった。
けど……足りない。まだまだいける。
席を立とうとすると、ミューレンさんが俺の肩に手を置き、そっと座らせた。
「イブキ様はここでお待ちを。私がお代わりを取ってきますので」
「そんな、悪いですよ」
「お気になさらず。どうぞ、ごゆるりと」
去っていくミューレンさんを見送り、喉を潤す。肉で火照った体が冷やされ、気持ちいい。
「ふぅ……」
「よぉ、イブキ。食ってるか?」
「え? うぉっ」
窓の外を見上げれば、オメガさんの巨体が覗き込んでいた。
でかいから食堂に入らないっていうのは、本当だったらしい。あぐらをかいているのに、見上げるほど巨大だった。
もう総隊長としての仕事は終わったのか、片手には巨大な樽のカップ。もう片方には焼かれた骨付き肉が握られている。体格と同じで、食べ方も豪快な人だ。
「は、はい。すみません。俺、何もしていないのにタダ飯貰っちゃって……」
「気にすんな。むしろ、都市部で保護されている男どもは、子孫を残すのが仕事らしいぞ。もし今日からミューレンと励むんだったら、仕事をしてるってことになる。タダ飯でもなんでもねーよ」
「し、しませんって、そんな……!」
てかこの世界の男、そんな羨ましい生活してんの!? ズルくない!?
「なんでぇ、つまらねぇ。ま、冗談だがよ! ガハハハハッ!」
豪快に笑ったオメガさんは、大きな口で肉にかぶりつく。
まったくもう……からかわないでくれ。本気にしちゃうから。
酒を呷ったオメガさんは、深く息を吐いてからまた俺に目を向けた。
「が、そうだなぁ。せっかくここにいるんだし、仕事の1つや2つはやってもいいかもな。どうせ暇だろ?」
暇なことは暇だし、やる事がないのも事実だけど、ニートみたいな言い方は如何なものかと。
「……わかりました。俺も、ずっと何もしない訳にもいきませんから」
「っし、決まり! 明日、またミューレンと一緒にアタイんとこ来い!」
それだけ言い残し、肉を平らげたオメガさんはお代わりを貰いに行った。既に10キロくらい食ってる気が……さすが巨人族の血が入ってるだけあり、超大食いだ。
にしても、仕事か……いったい、何をするんだろうか。
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