殲滅騎士団団長の俺、国王にすら恐れられてるけど家族溺愛してます。〜ここではパパじゃなくて騎士団長と呼びなさい!(焦)〜

蛮野晩

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第1話 パパ、びっくりしたんだけど

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「は?」

 この俺、ルテロニア王国騎士団団長クレイヴ・エインズワースは目を疑った。
 目の前には騎士団入団試験合格者リスト。合格者リストに倍率百倍越えという狭き門を突破した将来有望な若者たちの名前がっているわけだが。

『首席合格――オデット・エインズワース(十四歳)』
『首席合格――シャロット・エインズワース(十四歳)』

 並んだ二つの名前。
 しかも順位は同率一位。
 いやいや、順位は問題じゃない。ここで問題なのはこの二人が俺の娘だということ。

「……どういうことだこれ。聞いてないんだけど?」

 俺はリストを持ってきた補佐官を振り返った。
 補佐官は困った顔をしながらも背筋を伸ばして返答する。

「受験生の個人情報は開示されておりますが、こうして報告するのは合格者のみですから」
「うんそうだね、分かってる。分かってるんだけどさあ」

 それは分かっている。毎年のことだが騎士団入団試験の受験者数は膨大だ。本年の受験者数総勢六千名。合格者数は五十名ほどの凄まじい倍率だ。俺のところにあがってくるのは合格者リストだけなのも理解している。理解しているが……!

「サインをお願いします」
「サイン……。……サインしたら合格するんだろ?」
「はい、まあ、そうなりますね……。問題なければ明日の午後が合格者発表、その後は入団式と新人演習訓練が開かれますが、……団長?」
「くッ……」

 ペンを握った手がぷるぷるする。
 ぷるぷるする俺を補佐官が心配そうに見ている。
 だが俺はそれどころじゃない。騎士団団長として難関試験を突破した合格者を歓迎しなければならないが。
 だが、だが……!

「サインは保留だ。悪いが今日は帰らせてくれ」
「えっ、午後からの会議は……」
「病欠だ。頭が痛い」

 嘘じゃない。本当に頭が痛くなってきた。
 自分の娘たちが部下になるんだぞ、頭が痛くなるに決まってるだろ。帰って家族会議だ!




 俺は馬車で帰路を急ぐ。
 俺は三十五歳にしてルテロニア王国の騎士団長になった。異例の若さでの出世だが、転生者の俺にとってはさほど難しいことではなかった。
 前世、俺は地球の日本という国に生まれ、死んだら英雄として女神に迎えられた。

「人生の終了、おめでとうございます。あなた様は死亡しましたが、それはまさに英雄的行為でした」

 俺の英雄扱いはどうやら死亡理由のおかげらしい。俺は川で溺れていた子どもを助けて死んだのだ。
 女神は俺を称賛し、来世では本物の英雄として転生する選択肢が与えられたのである。

「さあ、転生の時間です。あなた様が転生する世界は『ドラゴンウイング~英雄は竜とともに帰還する~』です」
「えっ、それってあのドラゴンウイング!?」
「やはりご存知でしたか! あなた様の世界では世界累計五億本を売った大ヒットゲームですから!」

 女神が嬉しそうにうんうん頷く。
『ドラゴンウイング~英雄は竜とともに帰還する~』は俺が高校のときにドはまりしてやりこんだゲームだ。もちろん周回して遊びまくった。運命の主人公がダークドラゴン討伐を次々に成功させて英雄になるのだ。

「それでは二つの選択肢から選んでください。英雄として転生するか、それとも平民として転生するか。もし英雄を選択されましたら、今回は特別に英雄から国王へ即位して建国することも可能です。英雄から国王に即位するなんてビッグイベントですね。英雄色を好むともいいますし、国王になったあかつきには世界中の美女を集めてハーレムをつくることも許されます。転生した世界で歴史に名を刻む偉業を成し遂げることになるでしょう」

 女神は笑顔で選択肢を並べた。
 英雄か平民か、そんなの決まってる。

「平民で」
「はい、英雄ですね。ではさっそく、……って、平民!?」

 女神がぎょっとする。
 どうやら俺が英雄を選択すると思い込んでたみたいだ。

「な、なぜですか!? 英雄ですよ、英雄!! この選択肢は千年に一回しか発生しないような超レア選択肢なんですよ!? それとも私の説明が下手でしたか!?」
「いや、あんたの説明は完璧だと思う。英雄人生の魅力はちゃんと伝わってるからな」
「それじゃあどうして……!」
「どうしてもだ。平民で頼む。言っとくけど、どれだけ説得しても無駄だぜ。もう決めたからな」
「……わかりました。ご本人様がそう言うなら選択を認めましょう。転生なので前世の記憶は引き継いでいます。英雄的行為で死亡されたので用意しておいた英雄スキルも付属します。ですが英雄人生で起こるような人生イベントは起きませんから、ご自身の環境や選択によっては英雄スキルが発動しないまま人生を終えることもあります。それでもいいんですね? ほんとうにいいんですね? 後悔しませんね? とってももったいないですよ?」
「むしろそれがいい。悪いな、いろいろ用意してくれてたのに」

 嫌味たっぷりに念を押してくる女神に苦笑した。
 俺が平民を選択するとは本気で思っていなかったようだ。

「そうですよ、いろいろ用意したのに。英雄専用の聖剣も聖盾も特級魔道具も、建国するいい感じの土地も、運命の美女たちも、すべてが手に入る幸運を用意したのに、ぜんぶ無駄になってしまいました」
「それを聞いたら尚更英雄はなしだな。もう自分を犠牲にする人生はごめんだ」

 俺はブラック企業のサラリーマンだった。今思えばアホみたいに働いて働いて働いて、将来のためだと自分に言い聞かせてとにかく働き続けた。もちろんプライベートなんてものはない。まさに思考停止状態。自分を犠牲にして働いていたのだ。
 冷静に考えてみれば、なんのために自分のプライベートを犠牲にして働いていたのか分からない。ましてやこんなに呆気なく死んだなら尚更だ。
 それなら転生したらプライベート重視で。
 英雄はすべてを得るかもしれないが、そこにプライベートがあるとは思えない。どう考えても犠牲にするものが多すぎる。

「私には理解しかねますが、ご本人様の意志なら従います。それでは転生を開始します。いってらっしゃいませ、新しい人生へ」

 女神に見送られて俺は転生した。



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