殲滅騎士団団長の俺、国王にすら恐れられてるけど家族溺愛してます。〜ここではパパじゃなくて騎士団長と呼びなさい!(焦)〜

蛮野晩

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第15話 パパ、しあわせなプライベートを噛みしめる

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「シャロット、さっきからお肉のサンドイッチばかり食べてますね」
「そんなことないもん」
「たまにはサラダも食べたらどうですか?」
「食べてるもん。あむっ、もぐもぐ」

 そう言ってもぐもぐしてるのは肉がたっぷり挟まったお肉のサンドイッチだ。
 お肉大好きなシャロットは最初からお肉で飛ばしている。

「そういうオデットだって、まだサンドイッチ残ってるのにケーキ食べてる」
「デザートはいずれ食べるものですから」

 オデットはサラダのサンドイッチをもぐもぐしながら、時折デザートに手を伸ばしていた。甘いケーキが大好きなのだ。

 オデット的にはデザートはいずれ食べるものだから、いつ食べてもいいものらしい。しかも健康的なサラダも食べているのだから問題ないということだ。……それもどうなんだ?

「もう、二人してなに言い合ってるの。騎士がする会話じゃないわよ?」

 アイリーンが呆れたように言って、それぞれのサンドイッチを取りわける。
 シャロットにはサラダのサンドイッチ。
 オデットにはお肉のサンドイッチ。

「どうぞ、召しあがれ」

 オデットとシャロットが顔を見合わせた。
 アイリーンにどうぞと差し出されればさしもの二人も断れない。

「はーい。サラダのいただきます」
「いただきます」

 二人は観念してそれぞれのサンドイッチを頬張ほうばる。
 でも顔を見合わせるとおかしそうに笑いだした。

「ふふふ、あなたもたくさん召し上がってくださいね。これどうぞ。オデットがブレンドしたハーブティーです」
「ありがとう」

 カップにハーブティーがそそがれた。
 ひと口飲んで、ほっと息をつく。サンドイッチと相性抜群だ。

「パパ、どうですか? なかなか上手にブレンドできたと思うんです」
「ああ、おいしいよ。サンドイッチとよく合う」
「パパの食べてるサンドイッチ、シャロットが運んだやつ。おいしい?」
「運んだだけだろ。でもおいしいよ」

 俺は苦笑してサンドイッチも頬張ほうばった。

 ああ、幸せだ……。

 このなにげない日常のひとときに幸せを感じる。
 アイリーンをちらりと見ると目があう。穏やかに微笑まれて、俺も思わず口元に笑みを浮かべた。

 こうして家族で昼食とデザートを食べ終わると、みんなで片付けをして次は山の散策と薬草採りだ。
 薬草についてはアイリーンが詳しい。
 結婚する前に親戚の宿屋で働いていたアイリーンはそこで薬草学を学んでいたのだ。
 俺や娘たちも騎士団の必修として基礎知識は身につけている。

「さあ、たくさん採ってね。この山には珍しい薬草もあるそうよ」
「オデット、競争しよ! どっちがたくさん採れるか!」
「いいけど、負けても文句言わないでくださいね」
「言わないよ~。だってシャロットのほうがたくさん採るもん」

 二人が競争モードに入った。
 双子の二人は赤ん坊のころからいつも一緒の仲良し姉妹だが、いつも一緒だからこそ競いあいも楽しむのだ。
 シャロットが俺を振り返る。

「パパ、よーいドンッてして」
「俺を巻き込むなよ。たくっ、よーいドンッ」

 俺の合図に二人が薬草採りに取りかかった。
 一生懸命薬草を探す姿に苦笑する。いい訓練といえばいい訓練だ。騎士団では野営をしたときに食料調達として薬草を探すこともあるのだ。
 アイリーンも娘たちの姿にクスクス笑っていたが、いたずらっぽく俺を振り返る。

「あなた、私たちも競争しましょうか」
「やめてくれ。俺が絶対勝てないだろ」
「あら、競争する前に諦めるなんて騎士団団長さんが情けない」
「いいんだよ。今は団長お休み中だから」
「ふふふ、そうでしたね」

 こうして俺とアイリーンも薬草採りを始める。
 元々基礎知識があるので基本的な薬草は分別がつくが、この山には希少な薬草もたくさん群生していた。

 アイリーンにきながら採っていると、娘たちもアイリーンを呼ぶ。

「ママ、ちょっとこっち来て~! この薬草って採っても大丈夫?」

 シャロットがアイリーンを呼ぶ。
 そこにはオデットもいて、どうやら二人で悩んでいたようだ。

「どれかしら」
「これ。見たことない薬草があったの」
「ああ、これはちょっと難しかったかもね」

 それは小さな紫の花びらが特徴的な可憐な花だった。

「この花びらに触らなかった?」
「大丈夫です。私もシャロットも触ってません。わからない植物には不用意に触らないようにって、以前ママが言ってましたから」
「よかった、言いつけを守ってくれて嬉しいわ。この薬草の花はね、毒があるのよ」
「えっ、毒ですか!?」
「こんなに小さくてかわいいのに?」

 娘たちがササッと薬草から離れた。
 そんな娘たちにアイリーンが小さく笑い、「でもね」とそっと薬草に手を伸ばす。そして緑のくきに優しく触れた。

「花びらには毒があるけど、他の薬草と混ぜて使えば強力な痛み止めになるの。それにね、この茎や葉の部分は触れても大丈夫」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ママ、毒が怖くないの?」
「知らなかったら怖いけど、知れば怖くないでしょ? 知らないから恐れてしまってもののように扱ってしまうけど、知れば親しみがわいて仲良くなれるわ」

 そう言いながらアイリーンは紫の花の薬草を抜いた。
 毒花の部分を丁寧に布に包むと、他の薬草と同じように薬草袋にいれる。

「混ぜて使うんですか?」
「そう。混ぜるとすごいんだから」
「そうなんですか……」
「そうなんだ……。シャロット、知らなかった」
「うん。でももう知ったから大丈夫ね」

 アイリーンが穏やかに微笑んだ。
 オデットとシャロットもほっと息をついて笑顔になる。
 俺はそんな妻と娘たちの様子に目を細めた。

 こうして家族で薬草採りをしていたが、ふと――――カサリッ。人の気配がして顔をあげる。

「あなた、どうしました?」
「いや、さっき……」

 一瞬、木々の合間あいまに人影が見えた。
 それはすぐに見えなくなったが、たしかに人間だ。
 薬草を採りに来たのか?
 近くに村はなかったはずだ。だとしたら、こんな所にわざわざ来るなんて薬草採りとしか思えないが、わずかに感じる違和感。一瞬見えた顔に見覚えがあったのだ。
 だが思い出そうとした、次の瞬間。

 ――――ピカリッ!
 ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

 突如とつじょ、強烈な閃光が走ったと思ったら、巨大なダークドラゴンが三体出現した!

「くそっ。アイリーン……!」
「あなた……!」

 ダークドラゴン出現の衝撃波。咄嗟とっさにアイリーンを庇う。
 オデットとシャロットは反射的に防御姿勢をとっていた。

「アイリーン、大丈夫か?」
「はい、ありがとうございますっ……」

 衝撃波をやりすごしてアイリーンの無事をたしかめる。
 よかった。怪我はしていない。
 俺はなんの前触れもなく出現したダークドラゴンを見据えた。
 おそらく、先ほどの閃光は召喚魔法の発動だ。誰かがダークドラゴンを召喚したのだ。

「あいつか……!」

 一瞬見えた人影。
 ほぼ間違いないだろう。



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