殲滅騎士団団長の俺、国王にすら恐れられてるけど家族溺愛してます。〜ここではパパじゃなくて騎士団長と呼びなさい!(焦)〜

蛮野晩

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第16話 いくつになっても娘は娘なんだぜ…(圧倒的パパ目線)

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「来い!」

 俺は召喚魔法陣を発動させた。
 魔法陣からわしが出現する。俺の使役獣だ。

「騎士団に伝えろ。第一部隊、第二部隊、第三部隊、第四部隊はここに召集! その他部隊は王都防衛配置! 急げ!」
「ピイイィィィィィ!!」

 鷲はひと鳴きすると大きな翼を広げた。
 鷲が王都の方角へ飛んでいく。

 騎士団の招集。……ああ俺の休日、ふっ飛んだ……。
 だが緊急事態だ。仕方ない……。

 俺はダークドラゴンを見据えた。
 山にそびえる木々よりさらに巨大なダークドラゴンの巨体。背中の巨大な翼で空を飛べば竜巻が巻き起こり、鋭い鍵爪は岩を砕く。しかも高い魔力によって放たれる波動砲はあらゆるものを破壊した。それが三体。
 一体でも部隊を動かす必要があるというのに三体も同時出現とは厄介なことだ。しかも、おそらくそれだけじゃない。あの人影は召喚士だ。はやく捕縛する必要がある。

「あ、あれがダークドラゴンなんですね……!」
「パパ、どうしようっ……?」

 オデットとシャロットは目を見開いてダークドラゴンを見上げていた。

 ……まずいな。二人は動揺している。

 無理もない、今までダークドラゴンと戦ったことはない。
 ドラゴン級は王都に侵入されるまえに騎士団をはじめとした対幻獣軍隊が討伐している。最近騎士になったばかりの二人が対峙たいじするのは初めてなのだ。

「た、戦いましょうっ……。シャロット、私たちは騎士です……!」
「う、うん。シャロットもできるよ!」

 オデットは剣を構え、シャロットは拳を構える。
 オデットはまず右にいるダークドラゴンに狙いを定めた。

「シャロット、まずは右のダークドラゴンです! 私が引き付けます!」

 オデットが指示してシャロットが走りだす。
 勝手に戦闘を始めてしまった二人に俺はギョッとした。

「おい、ちょっと待て!」

 慌てて止めたが、初めての対ダークドラゴンに興奮している二人には届かない。
 オデットが攻撃魔法を発動し、シャロットが隙をついて攻撃する。
 ダークドラゴンを翻弄ほんろうするように二人は動き、それは有利に見えたが……。

「あいつら……」

 俺はダークドラゴンの動きに舌打ちした。
 オデットとシャロットはターゲットにした一体を他の二体と引き離したつもりになっている。目論見通りの戦闘に二人の士気は上がっているが、その状態の恐ろしさを分かっていない。

「あなた、私は大丈夫です。あの子たちをよろしくお願いします」
「アイリーン……」

 アイリーンは緊張に強張こわばった顔をしながらも俺を見つめた。
 その眼差しに俺も覚悟を決める。
 俺はアイリーンの腕を掴んで大岩の影につれていく。

「お前はここにいろ。絶対にここから離れるな。この場所だけは必ず俺が守る」
「はい、信じています。大丈夫、私はここを動きません」
「ああ、信じてろ」

 俺はアイリーンを見つめて頷き、ダークドラゴンと戦っている娘たちを見た。
 騎士団入団試験首席合格は伊達だてではない。二人のレベルは新人騎士のそれではない。だが。

「あの二人は必ずお前の元に連れて帰る」
「はい、お願いします」
「あなたも無事で」
「ああ」

 俺はアイリーンの安全を確保し、娘たちのもとに駆けだした。
 娘たちは息の合った連携で一体のダークドラゴンを追い詰めていたが、次の瞬間。

 カッ……!

 周囲一帯がピカリッと光った。別のダークドラゴンが娘たちに向かって巨大な魔力の波動砲を放つ。

「しまったっ……!」
「そんなっ……!」

 オデットとシャロットが気づいた時にはもう遅い。
 二人は逃げられず硬直したが。

「パパ!?」
「パパぁ……!」

 直撃寸前、俺はオデットとシャロットを両腕に抱えて離脱させた。
 少し離れた場所で二人を降ろすと、二人が泣きそうな顔で俺を見あげる。

 悔しさと嬉しさ、そんな感情が混じりあったような顔。

「パパ、ありがとうございますっ……。ごめんなさい、今度はうまくやります……!」
「シャロットも! 次は一撃でちゃんと倒すから!」

 二人はまたダークドラゴンに立ち向かおうとしたが、……バカか。そんな震えた手で剣を握れるわけがない。拳に力が入るわけがない。

「お前たちは下がってろ。危ないだろ。ダークドラゴンはパパが討伐するから、お前たちはママと一緒に避難しろ」
「ま、まってくださいっ。パパ、私たちは騎士です! 一緒に戦えます!」
「シャロットも戦える! だって騎士になるために強くなったもん! シャロットだってパパと戦える!」
「バカを言うな。今のお前たちがダークドラゴンと戦えるとは思えない」

 十二年前、王都はダークドラゴンに襲撃された。
 その時、二人はまだ二歳。避難所でおびえていた二人は、助けに来た俺に大泣きしながらしがみついたのだ。
 泣きながら怖かったのだと訴える姿は昨日のことのように覚えている。

「いいからアイリーンのところにいなさい。もうすぐ騎士団も到着するから、それまでアイリーンから離れるんじゃない。お前らが戦うのはその後だ。騎士団に合流しろ」

 俺はちょっと厳しめに指示するとダークドラゴンと戦うために大剣を抜いた。
 だがそんな俺にオデットとシャロットが悔しそうに顔を歪ませる。

「やだ! シャロットはパパと戦う! 絶対絶対パパと戦う!!」
「私も戦います! 私はパパと戦うために騎士になったんです! 十二年前は泣いていることしかできませんでしたが、今は騎士です! もう泣いているだけの子どもじゃありません!!」

 オデットとシャロットが強く言い放った。

 お前たち……。

 真剣な二人に俺は一瞬だけ動揺してしまう。
 悔しさを滲ませた二人に幼いころの泣いていた面影が重なったが……。

「私は騎士です! 戦わせてください!」
「シャロットも騎士だよ! 戦える!」

 幼いころの面影に、強い意志を宿した面差しが重なる。

 ……二人はもう、あの時のままじゃないということか。

 頭では分かってたつもりなんだがな……。……こればかりは許してほしい。パパからすれば、娘はいくつになっても娘なのだ。
 でも今、幼いころの面影は大切な思い出になる。

 二人が騎士として戦おうとするなら、それなら。

「――――オデット、シャロット、戦闘配置につけ!!!!」

「パパ……」
「パパ……」

 俺の鋭い声に二人が目を丸めた。
 俺は今まで娘たちに大きな声をあげたことはない。
 だが、今は違う。そうだろ?

「ダークドラゴン討伐が完了するまでパパじゃない。団長と呼べ」

 二人に緊張が走った。
 今までの興奮に惑わされた緊張じゃない。冷静な緊張、そう、騎士として戦うために必要な緊張だ。
 いい顔だ。俺が騎士として好きな顔だ。

「「はっ、承知しました!」」

 オデットとシャロットが背筋を正して敬礼する。
 俺は頷き、ダークドラゴンを睨みすえた。
 敵は三体。一体だけならオデットとシャロットで抑えられる。ならば残りの二体は俺が討伐すればいい。
 このダークドラゴンを早めに討伐し、木陰に逃げた人影を捜索しなければならない。あれが召喚士だ。
 もしここでダークドラゴンを討伐できず、召喚士が他にもダークドラゴンを召喚すれば、十二年前のダークドラゴン王都襲撃の再来になってしまう。

「オデット、シャロット、お前たちは二人一組で戦え。戦闘中、決して連携を止めるな」
「「はっ」」

 オデットが剣を構え、シャロットが拳を構える。
 二人はもう震えていない。大丈夫だ。


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