紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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ーバクルー王と繋ぎが取れたのは13年前のあの日の…ほんの少し前だった。


バクルー王と密約を交わした時は、マールバラ王国を滅亡へと向かわせる駒を、やっとひとつ手に入れたと思った、だが…バクルー王は…到底、私の駒になるような男ではなかった。

(結界を解くことができるのか?ほお~まぁマールバラ王国内からならできるかもしれんな。ふ~ん、あぁ、いかんいかん、そうだった。今は東部に兵を送っているから、決行が一か月後なら用意できる兵は50ぐらいだったんだ。悪いなぁ…どうする?でもお宅のところは、王様が魔法を使うからと碌な兵士も、そして…貴族もいないんだよな。そんな中いくら結界を解くことはできても、魔法を使うあの王様を殺さず、捕まえるなんてできるのか?俺に日程も含めすべて任せてくれるなら、もっと力になれると思うんだが。えっ?何が欲しいのかって、それは…結界を解いてもらうことだ。あとはなにもいらん。自然と欲しいものは落ちてくるからな。)


マールバラ王国内で、私の味方になってくれそうなのはローラン伯爵ら数人、その数人の貴族達もバクルー王の言う通り、不満をいいながらも兄さまに守られることに胡坐をかいて、人を殺すどころか剣さえ握れるのかも怪しい。

このままだとこちらが駒になるのではと焦り、あの男をどうしても…味方にいや裏切られないように、兄さまと《王華》を手に入れたら、魅了魔法を掛けるつもりだった。



だが…先手を打たれた。



(魅了の魔法は勘弁してくれ。俺はいろんな女と楽しむほうがいいし、俺に追いかけまわされるのはいやだろう。それに女に逆上せて判断を誤りたくない。判断を誤れば…死が待っているからなぁ。俺が死んだら、おまえを邪険にしたマールバラ王国を潰す計画も、おまえが兄貴を手に入れる計画もおじゃんだろう?)

と言ってあの男は軽薄な笑いを私に見せたが、眼は私の心のうちを覗くように、肉食獣のように…鋭かった。やられたと思った…だが、駒でもいい…駒になってもいいから…バクルー王の力でマールバラ王国を潰し、兄さまと《王華》が欲しかった。



でも…兄さまは…。


それは突然だった。バクルー王が私を抱きながら言った。
(…なぁ、奪えなかった《王華》がどこにあるのかわかったが…どうする?)


あの時、兄さまから《王華》がなくなったことを感じたのは、間違いなかった。だからずっと探していた。でも見つからなかった。私の中の《王華》が反応しないのは、それはきっと魔力がない者に渡されているのだろうとは思っていた…。


(欲しいだろう。おいおい、焦るなよ。あいつだよ。王女様のおきにいりだったノーフォークのアークフリードだ。
手を結ばないか?俺もあいつが邪魔なんだ。ノーフォーク国がなかなか俺のところに落ちてこないのは、民に希望を持たせるあいつがいるからなんだ。まったく優しい男が上に立てば、幸せどころか不幸になるってのが、民はわからないのかね。戦争をしかければ…勝率は6~7割だと踏んでるが…だが金も人も掛かかるし…どうするかなぁと頭を抱えていたところに…飛び込んできた話なんだ。)

嘘だと思った。

《王華》を魔力を持たない者がわかるはずはない。きっとあの日、バクルー王の兵が兄さまがアークフリードに《王華》を渡すのを見たのだ。おそらく兵は、兄さまの行動が《王華》渡す行為だとはわからなかっただろう。でも、この男は感づいたのだ。なのにずっと私に黙っていたと思った。

この男にとって自分や自分の国に役に立つことがない《王華》など、どうでもよかったから、私には教えなかったのだろう。でも13年経った今でもノーフォークが落ちてこないことにしびれをきらしたんだ。

そしてちょうどいい駒が、自分の傍に居ることも思い出しのだろう…。
いや…この男が私が感づくような嘘をつくとは思えない、きっとどうでもいいんだ、私が気づこうが気づくまいが、どうでもよかったのだろう。


それでもいい…。

愚かな女だと、バクルー王は私を見ているのだろう。それでもいい

もう《王華》しかない、兄さまを感じるものは《王華》しかないのだから。



だから、欲しい。






パメラは泣いていた、王は感じさせた体が流した喜びの涙と勘違いしていたのだろう。

「カトリーヌ…」というと愛おしそうに、彼女の髪を撫で、己の服をゆっくりと脱いでいった。




「愛してる。」




ー愛してる?魅了の魔法で、惑わされているだけじゃない。

あぁ、なにもかも、思うとおりにいかない。


「カトリーヌ、もういいか…おまえの中に…」

 王は、己の快感に震えながら、パメラに許しを請ってきた。

気がつくと苦しそうな王の顔があった。
「カトリーヌ…カトリーヌ…」

ーこちらも終わりにしたい。
「来て、私の中に…」


そう言って手を王の首に廻し、パメラは唯一気に入っている兄と同じブロンドの髪に指を通した。



ーもうそろそろ、この男にも飽きてきた。




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