紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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突然寝室に現れたパメラに、バクルー王はちょっと眉を上げたが、抱いていた愛妾の額にキスをすると、ゆっくりと上体を起こし
「おいおい、お楽しみの最中に突然現れるなよなぁ、興ざめだぜ。」と言って愛妾に出ていくように手を振った。

愛妾は震えながら、何度も頷くと真っ青な顔で転がるように出て行ったが、慌てて出て行ったせいで寝室の扉がガタンと大きな音をたてて閉まった。
その音を聞いて、バクルー王は思わず天を仰ぎ、「まいったぜ。」と呟いたが、笑みを浮かべ
「おまえ…いつから、人の情事を覗き見る趣味を持ったんだ。」

といつもの調子でパメラに言った。
だが、反応のないパメラに訝しげ、もう一度声をかけようとしたときだった。

「アークフリードが…他の女と結婚すると言ってきたの…どうして!こううまくいかないの!!!愛する人ができた…なによ…兄様と同じこと言って!なぜなの!どうしてうまくいかないの。どうして私の思うとおりにならないの!!」



喚わめき散らすパメラに、呆れた顔で見ていたが…切り札を切るときが来たかと心の中で呟き、バクルー王はにやりと笑うと、パメラの手を握った。

「何処の女だ?…いや何処の女でもいいさ。、俺たちが連れてくる女を見たら…ふっ…ふふふ さすがのアークフリードもあの女の誘惑を断れまい。メインディッシュは、いつだそうか考えていたが、どうやら今と見た。そうだなぁ……一週間以内に決行だ。」
と言ったバクルー王は眼を細めパメラを見た。



その眼に情欲の色をつけ……そして…声に艶色をつけ
「このまま、帰るなんて無しだぜ。」とパメラの手に唇を寄せた。

「う、うまくいくわよね。」

いつになく弱気なパメラを見て、ほぉ…可愛いところもあるんだと笑い

「あぁ、当たり前だ。俺を信じろ。これでおまえは《王華》を…。そして俺はノーフォーク王国のすべてを血を流さずに手に入れる。」



パメラは、ほっとした顔をして、ようやくバクルー王の体に身をよせた。
「明日、その女を見てくるわ…。」


「殺すなよ…」とバクルー王の言葉に「気分しだいだわ。」と……いつものパメラの気の強い返事が出たきた。 



2人は声を抑えて笑い、ベットに沈んでいった。









その頃ミーナは、夜着に着替えもしないで、「愛してる…」と囁いたアークフリードの声を、抱きしめられた腕の強さを思い出していた。それはミーナを喜ばせ…そして苦しめていた。


ひとの眼があるときは、恋人として振舞う。

私がコンウォール家で、父やアークに言ったことだ。
これもそうだろう、フランシス様に怪しまれないように、アークがやった芝居だろう。そう、お芝居だ。

それとも…。


頭を横に振ると、涙が次々を零れ落ちてきた。

「…良かったじゃない…愛してるとアークは言ったくれたんだもの。お芝居でも、なんでもいい…嬉しかった。ほんのちょっと夢を見てもいいわよね。だって…アークは私を愛してくれるはずがない。本当の私を知ったら…きっと許してくれるはずはないもの」そういうとミーナは泣き崩れた。





パメラとバクルー王、そしてミーナとアークフリード、 それぞれの思いを秘めたまま夜は更けていった。
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