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王家の呪いとも思える《王華》を自分で最後にしたいと思っていらしたキース様は、マールバラ王国の民らを徐々にだが、王から、いや、魔法から守られる生活から、自分たちで生活を守る方向へと導かれていた、ようやく民らもこの国は自分たちの国だという自覚が出始めた頃に、お生まれになったのがエリザベス様。
一気にマールバラ国内は歓喜に沸いた。
キース様はどんな思いで民らの祝福を聞いていらしたのだろうか…。
そんな時だった、パメラ様がバクルー王の手先ローラン伯爵と怪しげな動きを見せ始めたのは。
キース様はエリザベス様を守るために噂を流された(エリザベス様は魔力の量も少なく、《王華》も不安定なんだそうだ。)(生まれつき《王華》を持って生まれた方がいないから何とも言えないけど、大人になれば安定するかはわからないらしいぞ。)…と。
だが本当は《王華》によって解放された魔力は膨大であった。それだけではない、5歳の頃にはキース様に代わって、政治に携わっていらしたと聞く。エリザベス様は生まれながらの王でもあったのだ。
マールバラ王国の宮廷に緊張が張り詰めたまま、数年過ぎた頃だった。
私にも大きな出来事があった。マールバラ王国に内乱が起きる…それは1年ほど前のこと。
エリザベス様と同じころに生まれた娘が、病で短い一生を終えた。生まれたときから体が弱く、ベットから出ることは ほとんどなかった可哀想な娘だった。覚悟はあった、だが…それでも…辛く、妻も私も力を落としている頃だった。
キース様からある話を頂いた。
「すまない…こんなときに…だが今しかないと、無理を承知でお願いしたい。もし、わが国が滅ぶことになった時、エリザべスを…亡くなったコンウォールの娘ミーナとして守ってくれないだろうか…迷惑をかけるが頼む。」と仰られた。
表の顔は商人と金で買ったような男爵位を使い、裏ではマールバラ王の密偵をしている私に、キース様は頭を下げられた。魔法が使える方で一国の王でも…同じ親としての心を見た気がした…断る理由などなかった。
一年後だった…キース様の心配が現実となった。
内乱という名のバクルー国の侵攻は、すざましく、エリザベス様だけはどうにかお救いできたが、 キース様とリリス様はお救いできなかった。
そしてお救いしたときのエリザベス様は、すべての感情さえも失っておいでのようだった…そんな顔とお声で…淡々と
「…間に合いませんでした。お父様の《王華》の一部は叔母様に…移っています。でも大半は、アークの体に移しました。魔力のないアークなら今の叔母様ではアークの中の《王華》は見つけられないでしょう。もし今気づかれたとしても、まだ子供のアークから取り出すのは無理でしょう。アークが大人になる前に、叔母様を討ちます。私が必ず…。」
今でも思い出してしまう、エリザベス様のあの言葉は7歳の少女ではなかった。両親を失った少女ではなかった。
国の為、己の気持ちを抑えた、いや捨てた眼だった。
「コンウォール男爵…父も母もそして私も、本当にあなたには感謝しております。ありがとう。ご息女ミーナ嬢を亡くされたばかりなのに、マールバラの為に辛いお気持ちの中…」
と言うエリザベス様を、横にいた妻は突然抱きしめた。
「もう、もうおやめください。エリザベス様こそ、ご両親を亡くされ…、帰る国まで失い、アークフリード様も…もう泣いてください。私たちのコンウォール家の娘になったのですから、もう良いのです。泣いてください。」
エリザベス様の両目から、涙が次々を溢れたが、しかし声を上げて泣かれることはなかった。
ただ一度、「お、おとさま、おかあさま…」と言って、静かに泣かれていた。
妻は、上手に泣けないエリザベス様をずっと抱いていた。
妻も今のエリザベス様に、昔の姿を重ねたのか、 不安そうな顔をしてエリザベス様を見ていた。
その時、ブランドン家の執事エパードが、落ち着きなく広間に入ってきた、その様子にコンウォールは嫌な予感がした。
ーいや、まさか…到着は今日ではないはずだ。
だが、コンウォールは背筋に感じる震えをただの思い過ごしだと言い切れずに、視線はエパートを追いかけていた
。
その時応接間がざわめいた。
それはエパードがアークフリードを見つけ駆け寄ろうとしたときだった。
エパードの後ろから「あぁ、すまんな執事殿」と左目の下から唇にかけて、傷がある大きな男が入ってきた。
「オオッ、どうやら間に合ったようだ。」と笑い、一同を見回すと……その眼はエリザベスのところで止まった。
絡まった視線に男は舐めるようにエリザベスを見て、エリザベスは「バクルー王」と言うと、緑の瞳を細めた。
一気にマールバラ国内は歓喜に沸いた。
キース様はどんな思いで民らの祝福を聞いていらしたのだろうか…。
そんな時だった、パメラ様がバクルー王の手先ローラン伯爵と怪しげな動きを見せ始めたのは。
キース様はエリザベス様を守るために噂を流された(エリザベス様は魔力の量も少なく、《王華》も不安定なんだそうだ。)(生まれつき《王華》を持って生まれた方がいないから何とも言えないけど、大人になれば安定するかはわからないらしいぞ。)…と。
だが本当は《王華》によって解放された魔力は膨大であった。それだけではない、5歳の頃にはキース様に代わって、政治に携わっていらしたと聞く。エリザベス様は生まれながらの王でもあったのだ。
マールバラ王国の宮廷に緊張が張り詰めたまま、数年過ぎた頃だった。
私にも大きな出来事があった。マールバラ王国に内乱が起きる…それは1年ほど前のこと。
エリザベス様と同じころに生まれた娘が、病で短い一生を終えた。生まれたときから体が弱く、ベットから出ることは ほとんどなかった可哀想な娘だった。覚悟はあった、だが…それでも…辛く、妻も私も力を落としている頃だった。
キース様からある話を頂いた。
「すまない…こんなときに…だが今しかないと、無理を承知でお願いしたい。もし、わが国が滅ぶことになった時、エリザべスを…亡くなったコンウォールの娘ミーナとして守ってくれないだろうか…迷惑をかけるが頼む。」と仰られた。
表の顔は商人と金で買ったような男爵位を使い、裏ではマールバラ王の密偵をしている私に、キース様は頭を下げられた。魔法が使える方で一国の王でも…同じ親としての心を見た気がした…断る理由などなかった。
一年後だった…キース様の心配が現実となった。
内乱という名のバクルー国の侵攻は、すざましく、エリザベス様だけはどうにかお救いできたが、 キース様とリリス様はお救いできなかった。
そしてお救いしたときのエリザベス様は、すべての感情さえも失っておいでのようだった…そんな顔とお声で…淡々と
「…間に合いませんでした。お父様の《王華》の一部は叔母様に…移っています。でも大半は、アークの体に移しました。魔力のないアークなら今の叔母様ではアークの中の《王華》は見つけられないでしょう。もし今気づかれたとしても、まだ子供のアークから取り出すのは無理でしょう。アークが大人になる前に、叔母様を討ちます。私が必ず…。」
今でも思い出してしまう、エリザベス様のあの言葉は7歳の少女ではなかった。両親を失った少女ではなかった。
国の為、己の気持ちを抑えた、いや捨てた眼だった。
「コンウォール男爵…父も母もそして私も、本当にあなたには感謝しております。ありがとう。ご息女ミーナ嬢を亡くされたばかりなのに、マールバラの為に辛いお気持ちの中…」
と言うエリザベス様を、横にいた妻は突然抱きしめた。
「もう、もうおやめください。エリザベス様こそ、ご両親を亡くされ…、帰る国まで失い、アークフリード様も…もう泣いてください。私たちのコンウォール家の娘になったのですから、もう良いのです。泣いてください。」
エリザベス様の両目から、涙が次々を溢れたが、しかし声を上げて泣かれることはなかった。
ただ一度、「お、おとさま、おかあさま…」と言って、静かに泣かれていた。
妻は、上手に泣けないエリザベス様をずっと抱いていた。
妻も今のエリザベス様に、昔の姿を重ねたのか、 不安そうな顔をしてエリザベス様を見ていた。
その時、ブランドン家の執事エパードが、落ち着きなく広間に入ってきた、その様子にコンウォールは嫌な予感がした。
ーいや、まさか…到着は今日ではないはずだ。
だが、コンウォールは背筋に感じる震えをただの思い過ごしだと言い切れずに、視線はエパートを追いかけていた
。
その時応接間がざわめいた。
それはエパードがアークフリードを見つけ駆け寄ろうとしたときだった。
エパードの後ろから「あぁ、すまんな執事殿」と左目の下から唇にかけて、傷がある大きな男が入ってきた。
「オオッ、どうやら間に合ったようだ。」と笑い、一同を見回すと……その眼はエリザベスのところで止まった。
絡まった視線に男は舐めるようにエリザベスを見て、エリザベスは「バクルー王」と言うと、緑の瞳を細めた。
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