紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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《王華》を求める叔母様なら奪えなかった《王華》を必ず探すだろう…と思った。


なら、どうしたらいい?

《王華》を身に宿していれば、どんなに姿を変えても、同じ《王華》を持つ叔母様には、私がエリザベスだとわかる。だからうかつには叔母様には近づけない。それに叔母様の後ろにはあのバクルー王がいる。

その時、ふと思った。《王華》は大きさがあるものではないが、お父様は…いや、代々の王は《王華》を人への譲渡しかできない。それは無機物に《王華》を移す理由がなかったからだろう。
だからお父様はアークに預けた。でも私ならどんなものにも《王華》を移し、また取り出すこともできる…と。

器になるもの…浮かんだのはペンダント。アークからの誕生日プレゼント。
この中に私の《王華》を移せば、叔母様にこの内乱で私が死んだと思わせ、叔母様の傍に近づいても、私とはわからないだろう。


でも…アークの中の《王華》はどう隠せばいい?

完璧に隠すことも可能だ、でもおびき出すためには…。

その瞬間、私は思った。《王華》は…このままアークの中のほうが良い…と。


何れ、魔力が持たない人間に、お父様が《王華》を預けたことはわかるだろう。そしてアークが《王華》を持っていることもわかるはず、そうすれば叔母様は必ず現れる。

大丈夫。きっとこれが一番だ。何より叔母様の魅了魔法はアークには効かないはず。《王華》は無理やりこじ開けられた魔力で使う魔法を認めない。それはある意味アークの中にある《王華》が防御をしているような感じだ。

だから…このままが一番。


傍で私が守るから…必ず守るから…。



だから…囮にして…こめんなさい。




あれから12年経とうとした頃、バクルー王を後ろ盾にして叔母様が動き出したことを知った。
でも私は動かなかった。まだ…早い。叔母様から《王華》を取り戻すことができたとしても、バクルー国の脅威はまだノーフォーク国を覆ってているだろう。バクルー王まで引きずり出さないと…終わらない。
だからまだ動けない。


でも…私が動かなかったことで…アークは…ブランドン公爵…お父様を失った。


会わない間も遠くから見ていた。意識はしていなかったとはいえ、初めて会った瞬間、魅了魔法をかけてしまうくらい好きだった人だ。傍に行きたい。話してみたい…触れてみたい。

でもこの姿をアークは知らない。
紫の髪と瞳の本当の私か、お父様に言わて魔法で、ブロンドの髪と青い瞳に変えている私しかしらないのだから。

きっと、わからないだろう。今の私はお母さまと同じ赤い髪と緑の瞳に姿を変え、それに…13年の月日が私もアークも大人にした。



もう考えまい。



エリザベスは傍らで眠るアークを見た。



―あの腕に抱かれたんだ…あの唇で愛を囁かれ、口づけされたんだ。

「愛している」と言ったアークの声が聞こえた気がした。



ーごめんなさい。私はまたあなたを裏切ることになる。

エリザベスは涙を拭い、呪文を唱えると、ペンダントにアークから取り出した《王華》を入れた。


ー叔母様の魔法を防御していた《王華》をアークから取り出した今、私が叔母様の魔法からアークを守る。
正体を明かしたのだ叔母様だって、私がアークを守るために何をするかはわかっているだろう。
でも…バクルー王の仕掛けが気になる。それは魔法で防げるものだろうか…。


思わずうつむいたからだろう。ペンダントがエリザベスの胸元で揺れた、そこにはアークが残した赤い花の痕も…。それを指でなぞりながら、エリザベスはベットから下り、魔法で身支度を整えると窓に映る自分を見つめた。



そこには、赤い髪と緑の瞳を持った少女がいた。

その鏡に向かい小さな声だったが…こう言った。




「後始末をつけるのは、マールバラ王の娘の私の仕事。バクルー王、パメラ叔母様…もうこれで終わりにしましょう。」……と
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