お気に入りの悪魔

富井

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仕事

三、

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どうやらそのまま寝てしまっていたようだった。僕はネクタイも絞めたままスーツで寝ていた。

「おはよう。昨日頼んだもの届いているよ。あそこの箱。」

玄関の脇の小包用ポストにA5と書かれた箱が入っていた。中をあけると手帳が一冊とボールペン、耳あてが入っていた。耳あてにも手帳にも、なぜかくまのアップリケがしてあった。

「これだけかー」
「上出来じゃん。ともかく、必要なものは手に入ったんだし。良かった。朝飯を食え。」

「ありがとうございます。ま、よかったっす。空っぽじゃなくて。」
「多分、お前の・・“っす”がダメなんじゃないか?」
「そんなの関係あるんすか?」
「わからないけど。俺達の行動はすべてお見通しなんだよ。影で手を抜いたり、泣いたり、弱音を吐くとすべて原点の対象になるんだ。」

「マジっすか。」

「うん。だから言葉遣い気をつけろって言ったんだ。悪魔の世界は意外に厳しいんだぞ。そろそろ出るぞ。昨日縄をかけた山田康夫 41歳が会社へ行くのを見届けないとな。」

ロビンは帽子をかぶって一足早くでた。

「了解っすー。」
手帳とボールペンを内ポケットに入れ、パンをかじりながら走ってエレベーター駆け込んだ。相変わらずギイギイいう。
「僕がいなかったら窓から飛んで出勤していたんですか?」
「そうだよ。だってこのエレベーター怖いじゃん。途中で止まったりしたら嫌だろ。」
「そうですね・・・。このビルには人間はいるんですか?」
「いるよ十二階までと十四、十五階には。十三は人間の世界では嫌いな数字だから十三階はこのビルにはないんだ。だから人間はここに僕たちがいることは気がついていない。」
「なんで生霊がくるんですか?」
「それなんだよ。なんでバレたんだろう、ここにいること。嫌になるよ全く。」
「それと・・・もう一つ聞きたいことがあるんですけど・・・・」
「なんだ?」
「昨日グリーンさんが言っていた、前のバディを魔女の谷に突き落としたって・・・」
「もう1階に着くぞ、その話はまたな。」

ゆっくりと時間をかけてエレベーターは1階へ着いた。
ドアが開くと一気に満天の光が差し込んだ。今日もとてもいい天気だ。

「さあ、捕まって。」

ロビンの腕に僕の腕を通すと、スーっと静かに飛び上がった。


昨日は余裕がなくてあまり楽しめなかった景色も、今日は色鮮やかでとても楽しい。歩いてみる街の景色と、空から見下ろす景色ははこうも違って見えるんだと改めて実感した。それにしても奇妙なものだった。つい、3日前まで世間に見放され、公園のベンチで死にかけていた僕がいまこうして悪魔として人間のために働いている。

ゆっくり旋回して、山田の住む団地へと降り立った。
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