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ヤサシイ悪魔
三、
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最近は一人でだいぶうまく飛べるようになったと思う。
まだバランスを崩してフラフラするところもあるが、ちょっとしたコツを掴めたような気がした。
今回のところはとても素敵な高級マンションだった。
飛べるのに、なぜか出入りする人間を待って一緒にエレベーターに乗った。
「どうして飛ばないんですか?」
「これから行くところは窓があかないようになっているんだ。」
「どうしてですか?」
「行けばわかる・・・」
ちょっと浮かないような感じだった。
「できればここは断りたかったんだけど、だれも行きたがらなくて・・・結局俺に回ってきたんだ。」
エレベーターの中で何度も、何度もため息をついた。
エレベーターは25階についた。見晴らしのとてもいい素敵なマンションだった。
「羨ましいなこんな所に住めて。」
「住人はそうは思っていないみたいだぜ。」
そう言って玄関から普通に入っていった。真っ暗でカーテンも閉まったまま。部屋にある鏡や額のガラスはみんな割られていた。
住人は広いリビングで毛布をかぶって震えていた。
「な、悪魔がとり憑く前からこれじゃ嫌になるだろ。取り憑きがいがない。」
「どうしたんですか、この人・・・前にロビンが後ろをつけていたあの綺麗な人ですよね。」
「ああ、前に一度頼まれて行動を見ていたんだが、外に出たときはいいんだ。頑張っているんだ。でも家に帰るとダメなんだ・・・。この人どこかで見たことないか?エーゴは知らない世代か?」
「ん・・・?見たことあるような、ないような・・・」
「山野サクラ 45才 この人は昔は有名なモデルさんだったんだ。結構売れていたらしい。でも年齢を重ねて仕事がどんどん減って・・いまはほとんど仕事がないみたいだ。こういう人は悪魔からも見放されるんだ。」
「どうしてですか?」
「自殺しそうだろ。見るからに。これからこの人、更なる苦しみに耐えられると思う?」
「でもやるんでしょ。」
「やるよ!やるに決まってんじゃん!」
なんやかんやで、ロビンは縄をその人に巻いた。年をとっても普通のおばさんという感じではないけど、自分自身に納得がいってないのかもしれない。
縄をかけ終わったくらいで、いきなり女の人は暴れ出した。
サイドボードのガラスに映った自分の姿に半狂乱になり壊した。
「な、悪魔もイヤになるだろ。
人間なんだから、年を取るのは当たり前だ。しわができるのも、肌がたるむのも仕方ない。なぜそれに歯向いたくなるんだろう。」
「でも、若くて可愛いほうが、僕は好きですね。」
「それは俺も・・・」
ニヤッと笑って、ハーモニカを吹き出した。とても美しいメロディだった。
山野サクラはふらふらと立ち上がり、カーテンの隙間から外を見て泣いていた。
この人は今、過去に浴びた多くの光を思いだすかのように夕日を浴びた。薄いピンクから赤に、まぶしいほどに輝く夕日は雲の隙間を縫うようにビルとビルの間に落ちて行った。それを捕まえようと窓ガラスに手を押し当てたが、ハーモニカが終わるころ、完全に落ち、この人の思い出のステージも終わった。
がくんと力なくその場に崩れ落ち、大声を挙げて泣いていた。
「かわいそうでしたね。」
「なにが?」
「あの人・・・」
「あの人だけじゃないさ、生きることは戦いだよ。勝ち負けがないからこそ苦しむ。答えは案外近くにあるんだけどね。」
エレベーターを待ちながらふと窓の外に目をやると夕日がスポンと落ちるのがビルの谷間からチラリと見えた。
ロビンは少し焦って、小走りになぜか非常口に向かった。
「時間がない一緒に跳ぶぞ。ココからもう一件行く。なんだかイヤな感じがするんだ。」
「え?」
肩を掴まれ一気に飛び上がった。いつになく真剣な目だった。
何か深い思いがあるのか、向かうべき場所にまっすぐ飛んだ。
まだバランスを崩してフラフラするところもあるが、ちょっとしたコツを掴めたような気がした。
今回のところはとても素敵な高級マンションだった。
飛べるのに、なぜか出入りする人間を待って一緒にエレベーターに乗った。
「どうして飛ばないんですか?」
「これから行くところは窓があかないようになっているんだ。」
「どうしてですか?」
「行けばわかる・・・」
ちょっと浮かないような感じだった。
「できればここは断りたかったんだけど、だれも行きたがらなくて・・・結局俺に回ってきたんだ。」
エレベーターの中で何度も、何度もため息をついた。
エレベーターは25階についた。見晴らしのとてもいい素敵なマンションだった。
「羨ましいなこんな所に住めて。」
「住人はそうは思っていないみたいだぜ。」
そう言って玄関から普通に入っていった。真っ暗でカーテンも閉まったまま。部屋にある鏡や額のガラスはみんな割られていた。
住人は広いリビングで毛布をかぶって震えていた。
「な、悪魔がとり憑く前からこれじゃ嫌になるだろ。取り憑きがいがない。」
「どうしたんですか、この人・・・前にロビンが後ろをつけていたあの綺麗な人ですよね。」
「ああ、前に一度頼まれて行動を見ていたんだが、外に出たときはいいんだ。頑張っているんだ。でも家に帰るとダメなんだ・・・。この人どこかで見たことないか?エーゴは知らない世代か?」
「ん・・・?見たことあるような、ないような・・・」
「山野サクラ 45才 この人は昔は有名なモデルさんだったんだ。結構売れていたらしい。でも年齢を重ねて仕事がどんどん減って・・いまはほとんど仕事がないみたいだ。こういう人は悪魔からも見放されるんだ。」
「どうしてですか?」
「自殺しそうだろ。見るからに。これからこの人、更なる苦しみに耐えられると思う?」
「でもやるんでしょ。」
「やるよ!やるに決まってんじゃん!」
なんやかんやで、ロビンは縄をその人に巻いた。年をとっても普通のおばさんという感じではないけど、自分自身に納得がいってないのかもしれない。
縄をかけ終わったくらいで、いきなり女の人は暴れ出した。
サイドボードのガラスに映った自分の姿に半狂乱になり壊した。
「な、悪魔もイヤになるだろ。
人間なんだから、年を取るのは当たり前だ。しわができるのも、肌がたるむのも仕方ない。なぜそれに歯向いたくなるんだろう。」
「でも、若くて可愛いほうが、僕は好きですね。」
「それは俺も・・・」
ニヤッと笑って、ハーモニカを吹き出した。とても美しいメロディだった。
山野サクラはふらふらと立ち上がり、カーテンの隙間から外を見て泣いていた。
この人は今、過去に浴びた多くの光を思いだすかのように夕日を浴びた。薄いピンクから赤に、まぶしいほどに輝く夕日は雲の隙間を縫うようにビルとビルの間に落ちて行った。それを捕まえようと窓ガラスに手を押し当てたが、ハーモニカが終わるころ、完全に落ち、この人の思い出のステージも終わった。
がくんと力なくその場に崩れ落ち、大声を挙げて泣いていた。
「かわいそうでしたね。」
「なにが?」
「あの人・・・」
「あの人だけじゃないさ、生きることは戦いだよ。勝ち負けがないからこそ苦しむ。答えは案外近くにあるんだけどね。」
エレベーターを待ちながらふと窓の外に目をやると夕日がスポンと落ちるのがビルの谷間からチラリと見えた。
ロビンは少し焦って、小走りになぜか非常口に向かった。
「時間がない一緒に跳ぶぞ。ココからもう一件行く。なんだかイヤな感じがするんだ。」
「え?」
肩を掴まれ一気に飛び上がった。いつになく真剣な目だった。
何か深い思いがあるのか、向かうべき場所にまっすぐ飛んだ。
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