お気に入りの悪魔

富井

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いじめっこ

三、

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「ロビン・・・ぼくひとりでできる自信はあるんだ・・・でも一人になりたくないんだ・・・一人になると・・・・」

昼にいつもの喫茶店のいつもの場所で、僕は思い切ってロビンに言った。
それはとても恥ずかしい事だったが、一人の時にセスカに会って、ロビンの悪口を囁かれて胸がざわつくのが嫌だった。

ロビンを信じているのに、セスカの視線に負けてしまう弱い自分がとても嫌だった。

「そうか。じゃあ今日はバルビンバーのところに一緒に行こう。それから秋山のところへ行って・・・・」

ロビンには全部わかっているのか、訳は聞かないでいてくれた。

「明日からはバルビンバーのところは断ろうな。」

「ありがとう・・・」
「バディじゃないか。」

僕は本当にうれしかった。
信頼できる人と一緒に居られることは、こんなに心強くて安心なんだということを初めて感じたような気がしていた。

「なんだかホッとしたらおなかがすいたな。」
「今日はなに食べる?エーゴに選ばせてやるよ。」

今日はトンテキ定食にした。
ロビンの”うわ”っという顔が久しぶりに見られて、それもとても幸せだった。

「ごめんよ。今日も遅くなって・・・」

バルビンバーが来た。今日も遅刻した。

「美味しそうなのを食べているね。僕も同じものにしよっと・・・」
「あのな、バルビンバー、今日でもう君の手伝いは終わりにしたい。」
「困るよ。それは・・・」
「僕らも仕事が進まないんだ。
君もだいぶできるようになったじゃないか。今日 、僕ら二人で応援するよ。だからごめん。今日限りにしてほしい。」

バルビンバーは腕を組んで少し考えて、
「そうだねいつまでも甘えていてはだめだね。こつもだいぶわかってきたし、多分できるよ。それに・・・どっちかっていうと、君達みたいに仲良く一緒に、っていうのにあこがれていたんだ。一緒に楽しくごはんを食べて、いつも一緒で、話ができる人が近くにいるっていうそれだけで、羨ましいよ。」

「いつまでも一緒という訳にはいかないさ。」

寂しそうに俯いて笑うロビンに、バルビンバーも僕も言葉を失くした。
バルビンバーもいつもなら取り留めもない話を延々としているのだけれど、今日は何も話さず食事をし、食べ終わると
「今日からもういいよ。一人でやるよ。もともとずっと一人でやってきたんだし・・・」

そう言って、一人店を出ようとしたが、立ち上がっただけで

「実は、君に頼んだのは・・・」
と、小声で何かをいいかけたが、すぐに出口に向かって歩き出した。


「え?なんスカ?」

「エーゴ、やめとけ。バルビンバー、頑張れよ。」

バルビンバーは走って店を出た。それを見送り、店の窓から完全に見えなくなってから僕たちも店を出た。彼とはもう街ではあまりすれ違うこともないだろう。

「午後からもガンバって仕事するぞ。」
「バルビンバーは・・・」

「それは忘れろ。俺達には俺達の仕事がある。
それに、まずはエーゴを一人前にしないとな。」
ロビンにはみんなわかっているようだった。
僕にはもちろん、何もわからないけれど、ひとつわかるとしたらそれは、僕はロビンとの別れが近いということだ。
午後の1番は秋山。広場で鍵盤ハーモニカの用意をしていると

「ちょっと待って。」

ロビンはキョロキョロとあたりを探した。

「あいつだ今日からの新しいターゲット。」
「小学生っすか・・・」

ロビンが指刺す先には、ランドセルを背負って一人であるく3年生くらいの男の子だった。

「エーゴ、今、可哀そうとか思っただろ。何度も言うが、俺達は悪魔なんだぞ。呪うのが仕事だからな。
赤ン坊だろうが年寄りだろうが、みんな平等に決められた期間決められただけ呪う。いいか、今日から厳しくいくからな。」


「ウイ~っス。」

「じゃあ、あいつを止めろ。3分、1分、30秒でもいい。歩くのをやめさせろ。」

「えー、どうやって・・・。」

「それはお前が考えろ。早くしないと行ってしまうぞ。」

急かされて、頭の中がうあーっとなって、仕方なく秋山を小学生に向かってつき飛ばした。

秋山は小学生にぶつかり、進路をふさいだ。よけようと右へ動けば、小学生も右へ。左に動けば左へと何回か繰り返した。後に秋山が立ち止まって小学生に進路をゆずって二人はうまくすれ違えた。

「よし吹くぞ。」
「え!もう結べたんですか?」
「誰に言っている!」

凄さを見せつけるかのように胸を膨らまし鼻でフンと笑って、得意げにハーモニカを出した。慌てて鍵盤ハーモニカを出してロビンの音を追いかけた。
行き過ぎていた小学生は、もう一度秋山のそばへ戻りチラシを受け取った。そのまま秋山のそばにいて、曲が終わると帰って行った。

「うまくいったな。次は太田か・・・さっさと済ませて早く帰ろう。」
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