89 / 119
終 章 ヴィクトリア編
第89話 双子の来訪
しおりを挟む
ガタガタガタ
「まったく、まだ王都には着きませんの? 私、いい加減飽きてまいりましたわ」
いつまでの続く緑の草原、これが自国のドゥーベなら険しい岩山で当たり一面埋め尽くされるあろうが、レガリアとの国境を越えたあたりから景色は一新、見渡す限りの草原が姿を現した。
これでも当初は初めて訪れる国、ドゥーベでは見なれない緑溢れる草原に歓喜もしていたが、それも一日近く似たような景色が続けば飽きてくるのは当然のこと。話し相手になるお兄様は途中からイビキをかきならが眠りだす始末で、結局一人で外の景色を見るしかなかったのだら、私の心情も察して欲しい。
そもそも暑い季節は過ぎようとはしているけれど、よくもまぁ蒸し暑い馬車の中で呑気に寝ていられるものね。
お兄様は正直見ているだけでも暑苦しい筋肉マッチョ、自国では気に入る女性がいないだとかでこの国へとやってきたが、理想の高いお兄様ではそう簡単に目に止まる女性はいないだろう。
私としてもお兄様の地位が目的に近づいてくる女なんてお断りだし、食欲旺盛、血気盛ん、七転八倒がモットーである兄の主張はもっともだと思っている。
ならば理想の結婚相手を見つけに他国へ行くのは当然じゃないかしら。
幸いこのレガリアは先の戦争で敗戦した弱小国家。辛うじて第三国の仲介で、建前上は引き分けの休戦状態とはなってはいるが、実際の所レガリアにはこれ以上戦争を続けていく力はなく、ドゥーベ王国にひれ伏すしかないんだと城の重鎮達が教えてくれた。
でもおかしいのよね。私たちがいい男(兄は嫁)を探しにレガリアへ行くと言った時、揃いも揃って全員で止めにかかってきたのよ? 建前上は休戦状態とはいえ、勝者が敗戦国に行くことの何がいけないのよ。
いずれお兄様がドゥーベを治めれば、私がレガリアの女王としてこの国を治める事になるのだから、今から下見を兼ねて見て回るぐらいはあってもいいだろう。
お母様もなんて立派な心構えなんだって褒めてくれたんだから。
「間も無くレガリアの王都へ入ります」
一人考えにふけっていると、馬車の外から護衛騎士の隊長が声をかけてくる。
「そう、ようやく着いたのね」
馬車の小窓から隊長に向かって返事をする。
ちょっと目を離した隙に辺りは一面金色に輝く麦畑。馬車はそんな中にできた一本道を進んでおり、その先には高い城壁が街を取り囲むようにそびえ立っている。
「へぇ、弱小国にしては立派な街じゃない」
こんな防御壁を築けるだけの力を持っているのに、アッサリ戦争に負けちゃうなんて余程国のトップは腑抜けなのね。
そういえばここまでに見た街々も綺麗に整備され、食堂で出て来た食べ物も美味しかったんだっけ。
これらの全てが新女王のおかげで今以上に発展するんだか、きっと誰もが私を敬い崇めてくる事だろう。
「まずは私が住む事になる王都を視察ってところかしらね。その次は早速改革に取りかからなきゃ」
成人前の若い女性とはいえ、時間は有効に使わなきゃね。
最初は王都中のドレスを掻き集め、私に似合うドレスを探して、その次にアクセサリー。肌に合うお化粧品も見つけないといけないわね。
ドゥーベのはどうも安っぽくて嫌なのよ。
そう一人でこれからの事を考えていると、護衛の隊長が何か言いにくそうに再び声をかけてくる。
「あの……、本当に敵地……いえ、レガリアの王都へ入られるので? 今でしたらまだ自国に引き返す事もできますが……」
「? 何を言っているのよ今更。引き返すなんて考えは全くないわよ」
何を言いだすのだこの騎士は。
そらぁ、元々外交官が行く事が決まっていた聖誕祭……だったかしら? に、無理やり私とお兄様を割り込ませたんだから心配する気持ちもわからないではないが、その外交官ですら行きたくないと涙を流しならが訴え、使者の役目がたらい回しになっていたのだ。
だったら最初から使者を派遣するとか言わなきゃいいのに、ドゥーベが戦いの勝者だということを分からす為にも必要な事だという話だった。
だから私たちが代表で行ってあげるって言ってあげたんだから、自国側からは感謝の言葉こそあれ、非難される筋合いはどこにもないだろう。
「わ、分かりました。なるべく危険が無いように護衛させていただきますので、ロベリア様も迂闊な行動はお控えくださいませ」
私に戻る意思がない事でようやく騎士も観念したのか、憂鬱そうな表情をしながら馬車から離れる。
何よ『なるべく』って……私は王女であり次期聖女なのよ。
それを取り敢えず守るから勝手な行動を取るなとかって、ドゥーベに帰ったらこの騎士は速攻解雇ね。
そういえば今回レガリアに行くと決まった時、何故かいつもの護衛隊長やメイド達が揃って体調不良を言ってきたのよね。どうせ私が知らないところで盗み食いでもしてたんでしょ。
ドゥーベじゃ貴族以外が食べ物に執着しているのは有名だから、その辺に落ちている木の実でも食べたんでしょ。
「ふぁ~~~、ようやく王都についたか」
私と騎士との声で起こされたのか、お兄様が狭い馬車の中で大きな欠伸をしならが背伸びをする。
「いよいよですわね」
「あぁ、俺様に相応しい女がいるか楽しみだ。自国じゃどうも俺には恐れ多いとかで貴族連中、娘を差し出してこなかったからな。王子でイケメンも時には考えもんだぜ」
やがて馬車は騎士達に守られながら、王都の城壁を越えていくのだった。
「まったく、まだ王都には着きませんの? 私、いい加減飽きてまいりましたわ」
いつまでの続く緑の草原、これが自国のドゥーベなら険しい岩山で当たり一面埋め尽くされるあろうが、レガリアとの国境を越えたあたりから景色は一新、見渡す限りの草原が姿を現した。
これでも当初は初めて訪れる国、ドゥーベでは見なれない緑溢れる草原に歓喜もしていたが、それも一日近く似たような景色が続けば飽きてくるのは当然のこと。話し相手になるお兄様は途中からイビキをかきならが眠りだす始末で、結局一人で外の景色を見るしかなかったのだら、私の心情も察して欲しい。
そもそも暑い季節は過ぎようとはしているけれど、よくもまぁ蒸し暑い馬車の中で呑気に寝ていられるものね。
お兄様は正直見ているだけでも暑苦しい筋肉マッチョ、自国では気に入る女性がいないだとかでこの国へとやってきたが、理想の高いお兄様ではそう簡単に目に止まる女性はいないだろう。
私としてもお兄様の地位が目的に近づいてくる女なんてお断りだし、食欲旺盛、血気盛ん、七転八倒がモットーである兄の主張はもっともだと思っている。
ならば理想の結婚相手を見つけに他国へ行くのは当然じゃないかしら。
幸いこのレガリアは先の戦争で敗戦した弱小国家。辛うじて第三国の仲介で、建前上は引き分けの休戦状態とはなってはいるが、実際の所レガリアにはこれ以上戦争を続けていく力はなく、ドゥーベ王国にひれ伏すしかないんだと城の重鎮達が教えてくれた。
でもおかしいのよね。私たちがいい男(兄は嫁)を探しにレガリアへ行くと言った時、揃いも揃って全員で止めにかかってきたのよ? 建前上は休戦状態とはいえ、勝者が敗戦国に行くことの何がいけないのよ。
いずれお兄様がドゥーベを治めれば、私がレガリアの女王としてこの国を治める事になるのだから、今から下見を兼ねて見て回るぐらいはあってもいいだろう。
お母様もなんて立派な心構えなんだって褒めてくれたんだから。
「間も無くレガリアの王都へ入ります」
一人考えにふけっていると、馬車の外から護衛騎士の隊長が声をかけてくる。
「そう、ようやく着いたのね」
馬車の小窓から隊長に向かって返事をする。
ちょっと目を離した隙に辺りは一面金色に輝く麦畑。馬車はそんな中にできた一本道を進んでおり、その先には高い城壁が街を取り囲むようにそびえ立っている。
「へぇ、弱小国にしては立派な街じゃない」
こんな防御壁を築けるだけの力を持っているのに、アッサリ戦争に負けちゃうなんて余程国のトップは腑抜けなのね。
そういえばここまでに見た街々も綺麗に整備され、食堂で出て来た食べ物も美味しかったんだっけ。
これらの全てが新女王のおかげで今以上に発展するんだか、きっと誰もが私を敬い崇めてくる事だろう。
「まずは私が住む事になる王都を視察ってところかしらね。その次は早速改革に取りかからなきゃ」
成人前の若い女性とはいえ、時間は有効に使わなきゃね。
最初は王都中のドレスを掻き集め、私に似合うドレスを探して、その次にアクセサリー。肌に合うお化粧品も見つけないといけないわね。
ドゥーベのはどうも安っぽくて嫌なのよ。
そう一人でこれからの事を考えていると、護衛の隊長が何か言いにくそうに再び声をかけてくる。
「あの……、本当に敵地……いえ、レガリアの王都へ入られるので? 今でしたらまだ自国に引き返す事もできますが……」
「? 何を言っているのよ今更。引き返すなんて考えは全くないわよ」
何を言いだすのだこの騎士は。
そらぁ、元々外交官が行く事が決まっていた聖誕祭……だったかしら? に、無理やり私とお兄様を割り込ませたんだから心配する気持ちもわからないではないが、その外交官ですら行きたくないと涙を流しならが訴え、使者の役目がたらい回しになっていたのだ。
だったら最初から使者を派遣するとか言わなきゃいいのに、ドゥーベが戦いの勝者だということを分からす為にも必要な事だという話だった。
だから私たちが代表で行ってあげるって言ってあげたんだから、自国側からは感謝の言葉こそあれ、非難される筋合いはどこにもないだろう。
「わ、分かりました。なるべく危険が無いように護衛させていただきますので、ロベリア様も迂闊な行動はお控えくださいませ」
私に戻る意思がない事でようやく騎士も観念したのか、憂鬱そうな表情をしながら馬車から離れる。
何よ『なるべく』って……私は王女であり次期聖女なのよ。
それを取り敢えず守るから勝手な行動を取るなとかって、ドゥーベに帰ったらこの騎士は速攻解雇ね。
そういえば今回レガリアに行くと決まった時、何故かいつもの護衛隊長やメイド達が揃って体調不良を言ってきたのよね。どうせ私が知らないところで盗み食いでもしてたんでしょ。
ドゥーベじゃ貴族以外が食べ物に執着しているのは有名だから、その辺に落ちている木の実でも食べたんでしょ。
「ふぁ~~~、ようやく王都についたか」
私と騎士との声で起こされたのか、お兄様が狭い馬車の中で大きな欠伸をしならが背伸びをする。
「いよいよですわね」
「あぁ、俺様に相応しい女がいるか楽しみだ。自国じゃどうも俺には恐れ多いとかで貴族連中、娘を差し出してこなかったからな。王子でイケメンも時には考えもんだぜ」
やがて馬車は騎士達に守られながら、王都の城壁を越えていくのだった。
2
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる