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しおりを挟むルーズベルトは屋敷に戻ってからも考えた。
そして考えた結果、やはり一日でも早い方がいいだろうという結論に達した。
「父上、母上。ナターシャを王都に呼びましょう。」
「ナターシャを?なぜだ?」
「ナターシャが両親と思っている2人の調査は、ナターシャがカーマイン侯爵家の娘だと判明してから、カーマイン家が行えばいいと思うのです。大事なのは、ナターシャが娘かどうか。そうではありませんか?」
「それはそうだが、お前の婚約解消の目途が立っていない今、ナターシャがカーマイン家の令嬢だと判明しても婚約に話を持っていくことができなくなるぞ?」
「そのことが、ズルいと思ったのです。自分を身綺麗にしてから話を持っていこうとしていることに。
父上、いつ、どうして気づいたかと聞かれて10日前と言うのと半年前と言うのとでは相手はもっと早く知りたかったと思うはずでは?侯爵夫妻の身になって考えるとそう思いませんか?」
「……それはそうかもしれないが、気づいた日はズラせるだろう?」
「後ろめたく思いませんか?侯爵夫妻にも、ナターシャにも。」
「……貴族には多少の駆け引きは必要なものだ。」
「姑息な手で婚約者になってもらうよりも、誠実に接した方が印象もいいのではないかと思います。」
カーマイン家に引き取られた途端、婚約者を決めるわけでもないだろう。
少なくとも、学園に入学するにもまだ1年以上あるのだ。
やっと戻ってきた娘を簡単に手放すような真似はしないと思う。
「……私もそう思うわ。可能性があると知れば一日でも早く会ってみたいし親子か確かめてみたいと思うものよ。
でも、侯爵夫妻は今までに何人もの女の子と会っているわ。その度に、娘ではないとわかって哀しい思いをしてきているの。万が一、違った場合……」
ほぼ、間違いないとは思う。
ジェシカ嬢と似ているし、魔力の属性は3,あるいは4属性だと父は思っていると聞いた。双子の兄が4属性なのであれば属性が一緒でも不思議ではない。
しかし、万が一の場合はぬか喜びもいいところだろう。
コダック伯爵家を責めることはないだろうが、こちらも申し訳ないと思い続けることになる。
「では、ジェシカ嬢に協力してもらう、というのはどうでしょうか。」
「なるほど。姉妹かどうかを確かめるということか。その方がいいかもしれない。
だがお前は本当にいいのか?婚約解消できる保証もなく、ナターシャとの婚約の打診もできない。
メリッサと結婚することになるかもしれないぞ?」
「……仕方ありません。それでもまずはメリッサ嬢との婚約解消を目指します。その後、ナターシャに婚約を申し込むのが正しい流れなのですから。」
父としては、魔力の多いナターシャを見す見す手放すことになるのが惜しいのだろう。
それもわかるが、平民ではなくなるであろうナターシャは領地でずっと暮らすわけではない。
王都にいてはコダック領まで3日かかるのだ。
父や母、僕と同様に、急を要する即戦力にはなれないのだから。
魔力が多い高位貴族が守るべき領地ではなく王都で暮らし、魔力の少ない下位貴族がほぼ領地で暮らしているというこの矛盾。
だからこそ、魔力を顕現できる平民を保護するという名目で、領地に囲っているのが現状だ。
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