平民から貴族令嬢に。それはお断りできますか?

しゃーりん

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貴族って本当に面倒。

そう思いながらも頑張って3年間、学園に通ってようやく卒業した。

長期休暇ごとにコダック伯爵領に癒されに行き、なんとか乗り切った。

ちなみに両親の親、祖父がいるそれぞれの領地には学園に入学する前に訪れて挨拶したけれど、『そうか……』だけで話が続くこともなかった。

コダック伯爵領にいる前伯爵も無口だけれど、あの年代の男性は無口なのかしらね?

実際は、祖父たちは孫に嫌われないように胸の内で言葉を選んでいて、思うように言葉にならないのだということをナターシャが知ったのは、ナターシャの子であるひ孫が生まれてから。つまり、もう少し後のことになる。 


 
ナターシャのウエディングドレスは、メリッサ様とカールス様夫婦がたくさんのデザインを考えてくれた中から、母と姉とナターシャがあれがいい、これがいいと悩んだ末に決まったもので、とても素敵なものになった。

普段はあまり変わり映えのしない服ばかり着ているルーズベルト様も、結婚式の衣装だけは少々派手になるのは当然のことだろうと諦め、任せた結果、もう二度と着ないであろう姿になった。

でもそれも本人が思うよりも意外と似合っていたこともあり、笑われることはなかった。


こうしてようやく、ナターシャはルーズベルト様と結婚することができた。 


初夜でナターシャは、ルーズベルト様に言った。


「お姉様からね、ルーズベルト様にオレンジからリンゴにしてもらいなさいって言われました。」

「へ……?オレンジからリンゴ?」

「そう。小ぶりのメロンは到底無理だと思っていたけど、まだリンゴにもほど遠いの。
お姉様も私と同じオレンジだったのにクレメンス様と結婚したらリンゴになったから、どうしたのか聞いたらそう言われました。」

「……ひょっとすると、胸の大きさの話かな?」

「そう!」

「そういうことならもちろん協力するよ。」


と笑いながら言ってくれた。

こうして初夜は無事に終わったけれど、ルーズベルト様はしばらくの間、メロンとリンゴとオレンジを見るたびに笑いが込み上げてくるようだった。

わかりやすいと思ったけれど、申し訳なかったかな?

ちなみに胸が一番大きなリンゴになったのは、子供を産んで授乳している間だった。

『期間限定』の大きさだと聞いたときは、ガーンとショックを受けたけど。
だけど、小ぶりの胸の方が邪魔にならず動きやすいということに気づいた。
ルーズベルト様が結婚前よりも少し大きくしてくれたけど、これがナターシャの限界らしい。

子供は男の子と女の子、一人ずつ。4属性と3属性でどちらも魔力の多い子だと後にわかる。 

子育て中はほぼ領地。

前コダック伯爵夫妻であるお祖父様とお祖母様がひ孫たちをすごく可愛がってくれて、笑いの絶えない暮らしをしていた。

王都にいるお義母様は仲間外れだとスネてるけれど、母と一緒に会いに来てくれる。
 


貴族になるのはお断りしたいと思っていた頃が懐かしい。

実家であるカーマイン侯爵家と嫁ぎ先であるコダック伯爵家がナターシャの願いを許してくれたことで、貴族でありながらこんな自由で、堅苦しくない暮らしを送ることができている。


もちろん、そんなナターシャを温かく見守ってくれるルーズベルト様がいてこそだと思っている。

初めて会ったときは、住む世界が違うと思ったほど遠い相手だったのにまさか結婚するなんてね。

だけど、今もこれからも、ナターシャの一番大切な人。


ナターシャは、平民だった時も貴族になってからも、幸せで楽しい毎日を送った。



<終わり>


 
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