あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

文字の大きさ
7 / 8

7.

しおりを挟む
 
 
国王陛下の生誕45年パーティーで、ノックス殿下はアヴリルに指差しながら告げた。


「アヴリル・サマーフィールド、お前に離婚を命ずる!」 


周りからは『また始まったか』失笑されたことにノックス殿下は気づいていなかった。

勝手に離婚を命じられたスタンリーは怒りを露わにしていた。
アヴリルが離婚するということは、スタンリーも離婚するということ。

自分の離婚が他人から勝手に命令されている今の状況をスタンリーもアヴリルも受け入れるわけがない。


「ノックス殿下、私たちが離婚しなければならない理由をお聞かせ願えますか?」


スタンリーの怒りを滲ませた低い声に、ノックス殿下は少し怖気づいた後、言った。


「私が王太子になるためにはアヴリルが必要なんだ。シーラが正妃では私は王太子にはなれない。まだ教育の終わらないシーラを待ち続けていても子爵令嬢では正妃になれないし養女にしてくれる当てもない。
他の高位貴族の令嬢も探したが、まだ結婚できない年の令嬢しかいなかったんだ。それに教育を終えていたアヴリルならすぐに結婚できるだろう?仕事はアヴリルがやって、子供はシーラが産む。これで安泰だ。」


すると周りは呆気に取られた後、爆笑した。

『今更?』
『二年経ってようやく子爵令嬢が妻では王太子になれないと気づいたのか?』
『仕事だけやらせるなんて王太子妃を何だと思ってるんだ?』
『子爵令嬢に跡継ぎを産ませるの?信じられないわ』


ノックス殿下は自分が笑われたと気づいたが、的外れなことをまた言った。


「いいか?アヴリルに子供を産ませないのは純潔ではないからだ。お前と結婚したんだからそうなんだろう?純潔ではない女だというのに正妃にしてやろうと言うのは私の優しさでもある。
アヴリルは私のためにずっと王太子妃教育を頑張っていた。それは私に好意があったからだろう。お前と結婚したのは貴族令嬢だからどこかに嫁がねばならないからだ。だが、アヴリルは今でも私のことを思っている。だから、子供を産めなくても私の正妃になれることを喜んでいるはずだ。そうだろう?アヴリル。」

「私は夫を愛しています。離婚など致しません。殿下には一欠けらの気持ちも残っておりませんわ。」
 

アヴリルはキッパリとハッキリと告げた。あらぬ勘違いにため息が出る。

ノックス殿下は『え?え?』と狼狽えていたが、その前にスタンリーが言った。


「いくら王子殿下と言えども、愛し合っている一貴族の離婚を命ずる権限などない。しかも、あまりにも身勝手な理由にあなたが我が国の王子殿下であるということを恥ずかしく思います。
国王陛下、私を王族に対する不敬だと処罰されますか?」

「……いや、同意見だ。私も国王としてだけでなく親として恥ずかしい思いだ。申し訳ない。
どうしてこんなに愚かなのか。情けない。理解し難いほどの馬鹿としか言いようがない。」


国王陛下が淡々と息子であるノックス殿下に負の言葉を吐き続けている。こんな陛下も珍しい。


「すまないな。またもやアヴリル夫人には迷惑をかけてしまった。アレの命令は忘れてくれ。アレを王太子に戻すことは何があってもない。王子としても不適格だしな。」

「ありがとうございます。国王陛下。」

 
こうしていきなり始まった寸劇は以前とは違いノックス殿下の思い通りにはならなかった。

そのことに納得がいかないのは、もちろんノックス殿下だった。
 

 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

何でもするって言うと思いました?

糸雨つむぎ
恋愛
ここ(牢屋)を出たければ、何でもするって言うと思いました? 王立学園の卒業式で、第1王子クリストフに婚約破棄を告げられた、'完璧な淑女’と謳われる公爵令嬢レティシア。王子の愛する男爵令嬢ミシェルを虐げたという身に覚えのない罪を突き付けられ、当然否定するも平民用の牢屋に押し込められる。突然起きた断罪の夜から3日後、随分ぼろぼろになった様子の殿下がやってきて…? ※他サイトにも掲載しています。

幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね

りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。 皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。 そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。 もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった

有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。 何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。 諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。

従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィオレッタはとある理由で、侯爵令息のフランツと婚約した。 しかし、そのフランツは従姉である子爵令嬢アメリアの事ばかり優遇し優先する。 アメリアもまたフランツがまるで自分の婚約者のように振る舞っていた。 目的のために婚約だったので、特別ヴィオレッタは気にしていなかったが、アメリアにも婚約者がいるので、そちらに睨まれないために窘めると、それから関係が悪化。 フランツは、アメリアとの関係について口をだすヴィオレッタを疎ましく思い、アメリアは気に食わない婚約者の事を口に出すヴィオレッタを嫌い、ことあるごとにフランツとの関係にマウントをとって来る。 そんな二人に辟易としながら過ごした一年後、そこで二人は盛大にやらかしてくれた。

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

処理中です...