9 / 15
9.
しおりを挟むクソジジイに、私の恋人であるジャイルズ・イーストンの名前を告げると驚いていた。
「イーストン?侯爵令息なのか。お前と共に市井に下るつもりだったのなら問題児か?」
問題児?あれは問題児とも言える?
「どうでしょう?協調性・社交性はあまりないですね。ジャイルズは私がそばにいれば、あとは家族だけでいいそうです。他の人とわざわざ関わりを持ちたくないといった感じですね。平民として暮らすに十分なお金はあるので、あとはほどほどに働いて私と穏やかに暮らすことを望んでいました。」
「ほどほどに……穏やかに?そんな奴が公爵家でお前を支えてくれるか?」
「頭はいいので実務は任せられますよ。社交は、私のパートナーを他の男に任せるくらいならジャイルズがなるでしょう。もちろん、オズワルド様があの世に旅立たれた後の話ですよ?」
生きている間は、クソジジイの妻ですからね。パートナーはあなたです。
「……あぁ、何となくどんな男なのかがわかった。お前と公爵家に害をなす男でなければ問題ない。
すぐにでも連れて来い。ほどほどで穏やかな暮らしとは無縁になるがお前がいれば文句は言わんのだろう?」
おそらく、クソジジイの当初の計画では、自分と私との間に子供が出来なくても自分の後釜として公爵家の仕事と私の再婚相手となるに相応しい男を自分が見繕うつもりだったのだろう。
それが、私が実の孫だとわかったことで計画を変えようとしているのは有難い。
自分が政略結婚で妻を好きになれず、愛したマローネには逃げられた。
だから、私には私が望む相手を許してくれるのだ。
祖母マローネにしたことは許せることではないが、頑固ジジイでないことは助かる。
ジャイルズ以外の男と子作りしろと命令された場合は、『孫と結婚した老公爵』と触れ込むつもりだったのだから。
醜聞になろうと孫候補が増えようとどうでもいい。
公爵家が手に入らなくてもどうでもいい。
そうなれば予定通り平民になって暮らしただけだ。
醜聞まみれの歴史ある公爵家を笑いながら。
でも、そうはならないようだ。
ひょっとすると、クソジジイは私が公爵家にも財産にも興味がないことがわかっているのかもしれない。
意に添わなければ捨てるだろう、と。
察しがいいのかもしれない。
だからこそ長年、国の仕事にも貢献し、認められてきた公爵なのだ。
私みたいな小娘の考えることなど、手に取るようにわかるのかもしれないとセレーネは思った。
ジャイルズと一緒にいられて、ジャイルズの子供を産んで育てられるのであれば、セレーネはどこで暮らしてもいいのだ。
万が一、クソジジイの血筋と知られたら面倒なことになると思い、子供は産まないつもりだった。
だが、クソジジイの直系はいなくなってしまったし、セレーネが孫だと告げた今は、公爵家を継ぐ継がないに関わらずジャイルズの子供を産みたい。
父親と異母姉は、私と家族であることをやめた。だから、もういらない。
これからの私の家族はジャイルズと産まれてくる子供、そして不本意ながらクソジジイ。
それだけでいい。
736
あなたにおすすめの小説
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
出会ってはいけなかった恋
しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。
毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。
お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。
だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。
彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。
幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる