正当な権利ですので。

しゃーりん

文字の大きさ
10 / 15

10.

しおりを挟む
 
 
無口で無表情だが真面目で頭の良いジャイルズのことを、オズワルドはすぐに気に入ったようだった。

どちらが孫なのかと思うくらい2人の時間は長く、セレーネは自分が学ぶべきではないのかと思ったけれど、セレーネに任されたのは屋敷の管理、内政の方だった。

つまりは女主人の権限の方で、不満は……まぁ、ない。

公爵家に関わる仕事をジャイルズがしてくれるのであれば、セレーネの負担は少なくなる。

それに、セレーネはすぐに妊娠したから。もちろん、ジャイルズの子供を。



オズワルドとは寝室が別で、部屋も隣ではないところを使っている。

セレーネとジャイルズは階こそは違うが中に隠し階段がある部屋で繋がっており行き来できるため、毎日一緒に寝ている。オズワルドが生きているうちに子供ができることが望ましいため、避妊などしなかったのですぐにできた。

公爵邸の造りがどうなっているのか、同じような隠し階段や秘密の通路などがあちこちにあるのではないかと少しドキドキワクワクしたのは内緒だ。


「よくやった。私のひ孫か。楽しみだ。」


オズワルドはすっかり単なる好々爺だった。確かに本来であれば余生を楽しむ年齢である。
息子が生きている時は公爵家の仕事は任せて自分は国の仕事をしていた。
公爵の位をなかなか息子に譲らなかったのも国の仕事で頼りにされていたからであり、公爵であるという地位も必要だったからだろう。
 
息子も孫もひ孫も一気に亡くした。
事故がなければ、ひ孫の成長を楽しみにする老人だったはず。

そう思えば、オズワルドは気の毒な境遇でもある。
セレーネは祖母マローネの恨みを晴らす気で毎日罵倒するつもりだったが、すっかりその気はなくなっていた。


「ひ孫ですけどね、対外的にはオズワルド様の子供ですよ。間違えないでくださいね?」

「ああ。喜んで好色ジジイの役を務めるさ。」


オズワルドは私がクソジジイと口走っても、それすら孫とのじゃれ合いで嬉しいと言う。


意外とこんな暮らしも悪くないな、と思っていた。





オズワルドと夫婦として社交界に出ることもないまま、セレーネは出産した。

男の子でジェラルドと名付けられた。

結婚1年足らずでラモン公爵家の跡継ぎが誕生したことに社交界は驚いていたらしい。
密かな陰口も、オズワルドは笑顔で受け止めたという。


そしてジェラルドが1歳になろうかという頃、セレーネは2人目を妊娠した。

オズワルドはとても喜んだが、その頃から体調が悪くなり始めた。

結局、2人目が産まれるのを見ることなく、結婚2年半でオズワルドは亡くなった。

セレーネが最初で最後に告げた『お祖父様』という言葉に嬉しそうに微笑んで………




オズワルドの葬儀では、初めて姿を見せた1歳半のジェラルドといかにも妊婦のセレーネは注目の的だった。

そしてジェラルドを抱いていたジャイルズのことも。
 

セレーネもジャイルズも、社交界にデビューはしていたが顔はほとんど知られていない。

葬儀に出席している者の中には、ジャイルズがオズワルドの腹心の側近だったに違いなく、オズワルドに認められた再婚相手なのではないかと考える者も少なくなかった。
 
 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

隣の芝生は青いのか 

夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。 「どうして、なんのために」 「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」 絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。 「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」 「なんで、どうして」 手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。 パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

出会ってはいけなかった恋

しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。 毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。 お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。 だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。 彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。 幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

処理中です...