12 / 15
12.
しおりを挟むジェラルドが12歳になった頃、子供同士の交流を図るお茶会があった。
そこである伯爵令息が口にしたのだ。
「お前、ニセモノ公爵令息なんだってな。母親が不貞して産まれたから公爵家の血を継いでいないと聞いたぞ。ズルいな。ニセモノでも将来公爵になれるなんて。」
周りはシーンとなった。そこへ慌てて令息の両親が駆けつけた。
「なんてことを言うんだ!申し訳ありません。まだ子供だとお許しを。」
息子を叱りつけた後、ジェラルドとジェラルドのそばに駆けつけたセリーナたちに伯爵が謝罪した。
「子供?僕より年上に見えるけど。」
伯爵の謝罪が気に入らなかったのか、ジェラルドがそう呟いた。
「それに、彼は誰からそんな話を聞いたのでしょうか。あぁ、なるほど。彼がまだ善悪の区別も自分でできないような子供だから伯爵は彼の前で母を侮辱するようなことを口にしたのですね。子供は素直ですからね。大人が嘲笑うように話したことを彼は笑い話だと受け取ったのでしょう。いくら自宅であっても爵位が上の者を貶す時は周りに気をつけた方がいいと思いますよ。」
まだ子供と言えるジェラルドより明らかに年上の自分の息子が幼い子供のように言われた伯爵は顔を真っ赤にした。恥ずかしさと怒りで。
セレーネは、伯爵相手に12歳の息子が堂々と立ち向かう姿に関心した。
だがこれ以上は自分の出番なので口を開いた。
「ニセモノ公爵、ですか。カルダモ伯爵、この国の貴族家は直系だけで血が繋がってきたとでも?過去には薄い血筋で爵位を得た者もいれば養子になり爵位を得た者もおります。その全てをニセモノだと?」
「……そういうわけでは。ですが、あなたは明らかにニセモノですよね。公爵代理なのですから。」
なるほど。このカルダモ伯爵は10年もの間、勘違いをしているらしい。
セレーネを公爵代理だと思っているということは、ジェラルドが爵位を継ぐまでの繋ぎだと思っているのだろう。だから軽々しくセレーネを貶す言葉をこの場でも言えるのだ。
同じように勘違いに気づいた貴族が息を飲んだり、伯爵に対して嘲笑を浮かべたりしている。
「カルダモ伯爵、あなたは私が公爵代理だからと軽んじているようですね。ですが不思議です。どうして私は公爵代理だと思われているのでしょうか。この10年、どなたにも代理と呼ばれた記憶などございません。
なぜなら、私は国王陛下から正式にラモン公爵と認められておりますので。」
知らなかったのか、忘れていたのか、それとも本当に繋ぎの公爵代理だと思っていたのか。
カルダモ伯爵は周りにいる貴族たちを伺ったが誰もが否定せずに頷いているのを見て、自分の勘違いを悟ったらしい。
「そ、それは失礼しました。正式にラモン公爵家の権限をお持ちとは知りませんでしたので。」
「あなたも息子さんも、言葉の選び方を学ぶべきね。自分の無知を言い訳に謝罪しても謝罪に聞こえなくて問題だわ。
まぁ、今回は許します。うちの息子よりも年上の子供、厳しく躾け直しなさい。」
セレーネは大事にするつもりはないので伯爵親子の不敬を許し、二度目はないとその場を去ろうとしたが、カルダモ伯爵がセレーネの背中に放った言葉に、怒りが沸いた。
「あなたが前公爵の孫かもしれないって噂を聞いたのですが、それって近親相姦ってことですよね?
その息子、祖父と孫がまぐわって産まれたってことでいいですか?」
………カルダモ伯爵、潰してやる。
876
あなたにおすすめの小説
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
出会ってはいけなかった恋
しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。
毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。
お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。
だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。
彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。
幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
後妻の条件を出したら……
しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。
格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。
だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。
しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる