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しおりを挟む空っぽの部屋に驚いていると、
「カーテンも敷物も壁紙も全て取り替えてくれたらいい。
家具もベッドも君に任せる。
ここに君の寝室もある。一人で寝る時はここを使う。」
「えっ?夫婦の寝室で寝るんじゃないんですか?」
「…一人で寝たい時もあるだろう?」
「ずっと一緒がいいです。あ、でも出産した時とかは別になるのかな…
テオドール様は何人子供が欲しいですか?」
「子供か…跡取りは欲しいが、授かりものだからな。無理ならそれでもいい。」
「テオドール様との子供、早く欲しいな…」
楽しそうな顔をして空想しているライラを見て『閨教育は終わってるよな?まさか知らないってことは…』とテオドールは不安になった。閨教育で初夜の実情を聞いた未婚女性は、初夜は痛みを伴うと知って怖がる傾向にあるらしい。実際、ケントの母はそうであった。元々、仲が良くもなかったところに初夜の痛みでテオドールはその後拒絶された。しかし、初夜のたった一回でケントを身籠り、出産後、領地へ行った。
ライラに拒絶されたくないテオドールは、閨の指南書をこっそり仕入れることに決めた。…いまさら…
テオドールの部屋に戻りお茶を飲んでいると、少し席を外していたテオドールが手に箱を持って戻って来た。
「これをライラ嬢に。我が家に伝わる家宝の指輪だ。ライラ嬢、私の妻になっていただけますか?」
テオドールにプロポーズをされたライラは目に涙を溜めながら『はい』と嬉しそうに返事をした。
指輪をはめてもらったライラは喜びのあまり、かがんでいたテオドールの首に抱きついた。
ライラを抱き留め、顔を見せたライラの額に思わずキスをしたが、上目遣いに見つめられ誘惑されるように唇にキスをした。最初は軽く触れ合わせただけのキスを繰り返し、いつの間にか深くなる。ライラの吐息に我に返り、テオドールは身を起こしてソファに座った。ライラの顔は真っ赤だ。
「ライラ嬢、大丈夫か?」
「はい。テオドール様、あの…ライラって呼んで貰えますか?」
「ああ。ライラ。」
「嬉しい。二人の時はテオ様って呼んでもいいですか?」
「いいよ。」
…歳の差21歳を感じさせないくらい二人の仲は深まっていった。
結婚式の案内状の発送、部屋の内装の発注、テオドールの衣装など一通りやるべき事を終える頃には、ライラの卒業式になっていた。
16歳で卒業する学生は少ない。18歳の卒業パーティーに出席することなく、ライラは学園を後にした。
非常にあっさりとしたものである。
ライラの気持ちはすでに3か月後の結婚式に向かっているのだ。
学園を卒業したライラには自由な時間が増えた。
その時間は、伯爵夫人になるためにどんどん使われる。
母に、伯爵家の女主人としての仕事内容を聞き、リュージュ家では誰がどうやっているか確認していく。
女主人不在の状態を正さなければならないのだ。
そう忙しくしながらも侍女たちに体も磨いてもらい、16歳にしては色香を纏っていた。
ようやく待ちに待った結婚式当日になり…
ライラは着付けを終え準備万端。嬉しい気持ちが溢れていた。
そこに両親と兄がやって来た。
「ライラ、とっても綺麗だよ。」
「本当に綺麗だ。リュージュ伯爵にはもったいない。内緒な。」
「ねぇ、ライラ。最終確認よ。これでいいのね?」
「ええ、お母様。これが私が選んだ幸せよ。後悔はしないわ。」
「ならいいの。綺麗よ。幸せになりなさい。」
「お父様、お母様、お兄様。今まで不自由なく大切に育ててくれてありがとうございました。」
そうして結婚式が始まった。
父に手をひかれ、テオドールの元へ歩いていく。
テオドールが目を見開いてライラを見つめていた。
父の手からテオドールの手に渡され、父は席につく。
テオドールの目がライラを綺麗だと語ってくれている。
誓いの言葉を述べ、結婚誓約書に署名し、テオドールとライラは夫婦となった。
教会からリュージュ家へと移動し、昼食会となる。
二人で馬車に乗り、テオドール何度も綺麗だと繰り返し、キスをしていた。
披露宴という名の昼食会も和やかに過ぎていった。
リュージュ家の親族は泊まることなく帰り、マロリー家の親族は数人だけマロリー家に泊まる。
お別れを済ませると、侍女たちに連れ去られた。
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