失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん

文字の大きさ
3 / 9

3.

しおりを挟む
 
 
王太子の父、現国王陛下ウラジールには子供の頃からの婚約者、公爵令嬢エカテリーナがいた。
 
2人の仲はとても良く、このまま成婚になるはずだと思われていた。……学園に入学するまでは。 
 
学園に入学直後、ウラジールは一目惚れをした。相手は伯爵令嬢ラフィーナ。

エカテリーナは可愛い容姿、ラフィーナは誰もが見惚れる美貌に見事な体つきであった。
つまり、幼児体系の幼く見える令嬢ではなく容姿端麗な令嬢の外見に惚れた。 

ラフィーナには婚約者がいなかった。
そのことがウラジールの衝動を突き進める後押しとなったのは間違いない。


入学して1年後、ついにウラジールは婚約者エカテリーナに婚約解消を申し出た。


「君が真実の愛の相手であると思い込んでいた。いや、思い込まされて過ごしてきた。
 しかし、君への愛は妹のような家族愛だということに気づいたんだ。
 私の真実の愛の相手は……ラフィーナに違いない。
 どうか、婚約解消に同意してくれないか?」

「……わかりました。ウラジール様の真実の愛が成就するよう応援いたしますわ。
 今までありがとうございました。」

「こちらこそ。今でも君が大切な人であることに変わりはない。
 困ったことがあれば、いつでも相談してほしい。」

「ええ。頼りにしていますね。」


こうしてウラジールの最初の真実の愛は、円満に終わりを迎えた。



裏に密約があるとは知らず……



この1年間、婚約者ではない令嬢に懸想する王太子ウラジールは有名だった。
もちろん、婚約者の父、公爵にも伝わるほどに。

こんな愚かな男に娘エカテリーナを嫁がせる気は失せたが、王家との繋がりを望む公爵は、ウラジールの父である国王陛下に取引を持ち掛けていた。


『王太子殿下と娘との婚約は円満に解消いたしましょう。しかし、黙って引き下がるには娘が可哀想だ。
 いつか殿下に産まれる後継者とエカテリーナが産む子供を結婚させる。これが条件です。
 エカテリーナがどこの誰に嫁ぐかはわかりません。しかし、産んだ子は公爵家の養子にします。
 王子が産まれれば娘を。王女しか産まれなければ息子を王配に。
 何歳年が開こうが関係ありません。この条件が飲めるのであれば許しましょう。』


親同士の密約で円満婚約解消だったと知らないウラジールは、ラフィーナに愛の告白をする。


「ラフィーナ、君こそが真実の愛の相手だ!」


ラフィーナは、初めは断り続けていた。『伯爵令嬢の自分には荷が重い』と。
しかし、一年間もの猛アプローチを受け続け、新たに婚約の申し込みをしてくる令息など皆無だった。
王太子が恋焦がれている令嬢を横から掻っ攫う勇気のある令息などいるわけがない。


学園の最終学年になる頃、王太子ウラジールと伯爵令嬢ラフィーナの婚約が結ばれることになった。


ちなみに、公爵令嬢エカテリーナも伯爵令息と恋に落ちて婚約を結ぶことになった。
 






 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クレアは婚約者が恋に落ちる瞬間を見た

ましろ
恋愛
──あ。 本当に恋とは一瞬で落ちるものなのですね。 その日、私は見てしまいました。 婚約者が私以外の女性に恋をする瞬間を見てしまったのです。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

【完結】16わたしも愛人を作ります。

華蓮
恋愛
公爵令嬢のマリカは、皇太子であるアイランに冷たくされていた。側妃を持ち、子供も側妃と持つと、、 惨めで生きているのが疲れたマリカ。 第二王子のカイランがお見舞いに来てくれた、、、、

王子の婚約者は逃げた

ましろ
恋愛
王太子殿下の婚約者が逃亡した。 13歳で婚約し、順調に王太子妃教育も進み、あと半年で結婚するという時期になってのことだった。 「内密に頼む。少し不安になっただけだろう」 マクシミリアン王子は周囲をそう説得し、秘密裏にジュリエットの捜索を命じた。 彼女はなぜ逃げたのか? それは─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

真実の愛の取扱説明

ましろ
恋愛
「これは契約結婚だ。私には愛する人がいる。 君を抱く気はないし、子供を産むのも君ではない」 「あら、では私は美味しいとこ取りをしてよいということですのね?」 「は?」 真実の愛の為に契約結婚を持ち掛ける男と、そんな男の浪漫を打ち砕く女のお話。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ・話のタイトルを変更しました。

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。

ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。 100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。 曰く、幼馴染を溺愛しているとか。 それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。 さて、どうしましょうか? ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

結婚して5年、初めて口を利きました

宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。 ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。 その二人が5年の月日を経て邂逅するとき

処理中です...