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しおりを挟む王太子の父、現国王陛下ウラジールには子供の頃からの婚約者、公爵令嬢エカテリーナがいた。
2人の仲はとても良く、このまま成婚になるはずだと思われていた。……学園に入学するまでは。
学園に入学直後、ウラジールは一目惚れをした。相手は伯爵令嬢ラフィーナ。
エカテリーナは可愛い容姿、ラフィーナは誰もが見惚れる美貌に見事な体つきであった。
つまり、幼児体系の幼く見える令嬢ではなく容姿端麗な令嬢の外見に惚れた。
ラフィーナには婚約者がいなかった。
そのことがウラジールの衝動を突き進める後押しとなったのは間違いない。
入学して1年後、ついにウラジールは婚約者エカテリーナに婚約解消を申し出た。
「君が真実の愛の相手であると思い込んでいた。いや、思い込まされて過ごしてきた。
しかし、君への愛は妹のような家族愛だということに気づいたんだ。
私の真実の愛の相手は……ラフィーナに違いない。
どうか、婚約解消に同意してくれないか?」
「……わかりました。ウラジール様の真実の愛が成就するよう応援いたしますわ。
今までありがとうございました。」
「こちらこそ。今でも君が大切な人であることに変わりはない。
困ったことがあれば、いつでも相談してほしい。」
「ええ。頼りにしていますね。」
こうしてウラジールの最初の真実の愛は、円満に終わりを迎えた。
裏に密約があるとは知らず……
この1年間、婚約者ではない令嬢に懸想する王太子ウラジールは有名だった。
もちろん、婚約者の父、公爵にも伝わるほどに。
こんな愚かな男に娘エカテリーナを嫁がせる気は失せたが、王家との繋がりを望む公爵は、ウラジールの父である国王陛下に取引を持ち掛けていた。
『王太子殿下と娘との婚約は円満に解消いたしましょう。しかし、黙って引き下がるには娘が可哀想だ。
いつか殿下に産まれる後継者とエカテリーナが産む子供を結婚させる。これが条件です。
エカテリーナがどこの誰に嫁ぐかはわかりません。しかし、産んだ子は公爵家の養子にします。
王子が産まれれば娘を。王女しか産まれなければ息子を王配に。
何歳年が開こうが関係ありません。この条件が飲めるのであれば許しましょう。』
親同士の密約で円満婚約解消だったと知らないウラジールは、ラフィーナに愛の告白をする。
「ラフィーナ、君こそが真実の愛の相手だ!」
ラフィーナは、初めは断り続けていた。『伯爵令嬢の自分には荷が重い』と。
しかし、一年間もの猛アプローチを受け続け、新たに婚約の申し込みをしてくる令息など皆無だった。
王太子が恋焦がれている令嬢を横から掻っ攫う勇気のある令息などいるわけがない。
学園の最終学年になる頃、王太子ウラジールと伯爵令嬢ラフィーナの婚約が結ばれることになった。
ちなみに、公爵令嬢エカテリーナも伯爵令息と恋に落ちて婚約を結ぶことになった。
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