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しおりを挟むソランジュはオーリオにわかるように話し始めた。
「オーリオ様がサミア様に好意を抱いたのは学園入学後ですか?」
「な、な、なんで、そのことを………」
なぜバレていないと思えるのだろうか。
「誰が見てもわかることではないですか。それで?入学後ですか?サミア様に好意を持ったのと王太子殿下の取り巻きを認めらえたのはどちらが先ですか?」
「…………サミア様が落とされたハンカチを拾って渡したんだ。笑顔に一目惚れした。そのすぐ後に彼女が王太子殿下の婚約者だと知って驚いたけど納得した。王太子殿下に声をかけられたのはそのすぐ後だ。」
「そうですか。では王太子殿下はオーリオ様がサミア様に気があることをわかった上でそばに置いて利用しようと思ったのでしょうね。学生時代はあなたと同じような実力を伴わない取り巻きがあと2人いましたから、彼らもサミア様への思いを利用されたのでしょう。」
「利用ってどういうことだ?」
「オーリオ様たちにサミア様をチヤホヤさせて、気分よくさせることに利用していたのです。」
オーリオは何を言っているのだ?と言いたげな顔をした。
「王太子殿下がサミア様を婚約者として、妻として好意的ではないことはご存知ですよね?」
「ああ。殿下はサミア様に冷たいとまでは言わないが話をすることは少ない。僕たちを間に挟んでいるというか、僕たちの方がサミア様と過ごす時間が長くて………」
言葉にすることで、ようやく変だと気づいただろうか。
「学生時代、王太子殿下は恋人のシャノン様との逢瀬を邪魔されないためにあなたたちを使っていたのです。
サミア様は男性に囲まれてチヤホヤされるのが好きなのでしょう。そして、その手段と相手を誘うような行為が次期王太子妃として相応しくなく、殿下はサミア様に悪感情を持つようになったのだと思います。
サミア様に気がある男を利用して、上手くいけば婚約解消に繋がるような問題が起きてはくれないか、と。」
「そんなバカな………」
「サミア様も、そんな殿下の思惑がわかっていたのでしょう。自分有責で婚約解消になることは公爵令嬢として許せなかった。なので、婚約中に浮気を疑われるような行動は慎み始めました。ですが、あなたたちはそばに置いた。それはなぜか?自分に好意を持っている男たちにチヤホヤされることが気持ちいいからです。」
「っそんなバカな…………」
「以前、サミア様に近づきすぎないよう忠告したことを覚えていますか?」
「ああ。」
「その時にも私は言いました。利用されている、と。
婚約者のいる令息たちを侍らせているのは王太子妃となる身で相応しい行動でしょうか?普通であれば、それぞれの婚約者に悪いと気を遣います。雇われている護衛や侍従とは違うのですから。
ですがサミア様は婚約者である私たちに言いました。『しばらく婚約者を借りるわね』と。」
「ちゃんと気を遣ってるじゃないか。」
「その言葉が意味するところは、婚約者なのに相手にされていない私たちを惨めだと嘲笑っているのです。」
「………被害妄想だろう?」
「いいえ?本当に笑ったのですから。」
サミア様の笑顔に一目惚れしたというオーリオに、サミア様の邪悪な笑顔は想像できただろうか。
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