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しおりを挟むオーリオは、自分が利用されていたとして、それがどうして仕事の首につながるかがわからないようだった。
「だが、殿下はサミア様と結婚した。サミア様は王太子妃になった。そりゃ、確かに結婚後も僕はサミア様によく会っている。殿下から頼まれるからな。だが、手を出そうなんて不埒な思いは全くない。一線を引くことは大事だ。」
オーリオはちゃんと自制できていた。
それがソランジュから言われた『超えてはならない一線をお忘れなく』という言葉に無意識に縛られていたことに気づくことはない。
「王太子殿下は時期を待っていたのでしょうね。例えば側妃になられたシャノン様のご懐妊がわかったとしたら、行動に移していたかもしれないわ。」
「行動?どんな?」
「サミア王太子妃殿下の不貞をでっち上げる、とか。」
「不貞?そんなの無理だろう?常に侍女もいるし。」
「侍女は本当にサミア様の味方?あなたと会っている時にお茶に眠り薬を入れて飲まされたら?2人が裸でベッドにいる姿を見られれば不貞現場の出来上がりよ?」
オーリオは唖然として言葉が出ないようだった。
「あなたがサミア様の元に通わされていたのも、逢瀬のために率先して行っていたのだと思われるでしょうね。侍女がサミア様から口止めされていたと証言するだけで何度も2人は関係を持っていたと疑われるわ。
下地はいろいろと整っていたの。あとは時期を待つだけ。
サミア様のプルート公爵家には、王家に嫁いだという事実は残った。どんな約束事があったのかはわからないけれど、王家は約束を果たしたことになるわ。その後、サミア様が不貞で処罰を受けても王太子殿下は気にしない。シャノン様を正妃になさるためだから。」
「じゃ、じゃあ、僕は………」
「王太子妃の不貞の相手ということで処罰を受けることになったでしょうね。あなただけでなく、このマーズ伯爵家にも何らかのお咎めがあったはず。身の破滅が目前であったことがわかりましたか?」
オーリオの顔色は悪かった。ようやく事態を飲み込めたのだろう。
「だ、だが、よく殿下は許してくれたな。ソランジュが見破ったからか?」
「それもありますが、王太子殿下は私を侮っていたのでしょうね。私の実家が侯爵家であるということも。」
「どういうことだ?」
「私たちは政略結婚です。ですが婚約時代、あなたはサミア様への思いと王太子殿下、サミア様それぞれの策略によって、婚約者であるわたしとの交流を深めようとはしなかった。そうですよね?」
オーリオは渋々と頷いた。
「あなたはお忘れのようですが、私の実家は格上の侯爵家です。あなたの不誠実さに両親は怒っていました。婚約解消も考えていましたが、事業の繋がりの関係でマーズ伯爵家と不仲になることはいろいろと不都合もあり面倒でした。
なので、結婚後に私が蔑ろにされることのないよう、私の父は伯爵夫妻に約束を取り付けました。侯爵家が伯爵家に圧力をかけたようなものですね。王太子殿下は侯爵家が娘のためにそんなことをしていたとはまさか思っていなかったでしょう。
私との結婚前に、ご両親からいろいろうるさく言われたことはありませんでしたか?」
オーリオは心当たりがあったのか、気まずい顔をした。
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