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しおりを挟む目を覚ますと、そこは自分の部屋のベッドの上だった。
何で寝てた?
はっ!そうだ。メロディーナは無事か?
するとそこに、メロディーナが入ってきた。
「あ、目が覚めたのですね。頭をぶつけたようですが、痛みはありませんか?お医者様を呼びますね。」
頭?そういえば、ズキズキしている。コブは……できていなかった。
というか、マズイ。
こんなに近くに住んでいたとメロディーナに知られてしまった。
絶対に、引くよな?
「あ、の、僕はいったい……」
「私の荷物を無理やり運んでくれようとした男性を止めようとして、男性の肘が頭に当たって倒れたようなのです。」
肘か……情けないな。
落ち込んでいた時、医師と大家さんが部屋に入ってきた。
「どれどれ。吐き気はないか?」
「っ大丈夫です。」
「頭は痛むか?」
「はい。ズキズキと。……あの、ここは僕の部屋ですか?というか、僕は誰でしょうか。」
ローレンスは咄嗟に記憶を失ったフリをしてしまった。
メロディーナに嫌われたくなかったからだ。
「え……?ランスさんですよね?覚えていないのですか?」
メロディーナが驚愕したように聞いてきた。そして大家さんも同じように言った。
「そうだよ、あんたはランスだ。たまたまあんたが倒れた近くを通りかかったから、部屋まで運んでもらったんだよ。ここには1年ほど住んでいる。どうだ?思い出したか?」
「ランス……?聞き覚えのあるような、ないような。」
ローレンスは渾身の演技をしていた。
「ふむ。どうやら当たり所が悪かったのかもしれんな。記憶の喪失はすぐに戻る場合もあれば戻らない場合もある。家族は近くにいるのかね?」
医師が大家さんに聞いたが、大家さんが知るはずもない。
「いや、知らないな。でも確か、大切な人の近くに住みたいとか言っていた気がする。」
大家さん、その情報は出さないでほしい。
「……それ、私のことだと思います。ランスさんとは恋人だったんです。
でも身寄りのない彼との交際を親に反対されて別れて。だけど、彼の子を身籠っているとわかって、親から逃げるために一人であちこちを転々としていました。私が逃げるなら東の辺境の街って言っていたので、彼は私を探していたのだと思います。」
メロディーナ???
えっと?知らない情報がてんこ盛りだけど、ひょっとして本当に記憶が飛んでるのか?僕は。
「えっと……」
どうしたらいい?訳が分からなくて収拾がつけられない。
「ランスさん、メロディーナよ。思い出せない?」
「メロディーナ……聞き覚えのあるような、ないような?」
どうすればいいんだよー。
「そうか。お嬢さんは恋人だったのか。あの可愛い赤ちゃんも2人の子なんだな。ここで3人暮らすのは難しいから、広めの部屋を希望するなら紹介するよ。」
「その前に結婚しなきゃならないんじゃないか?」
大家さんと医師はやけに親身だな。
「あ……彼、戸籍がないらしくて。だから、両親にも結婚を反対されたのです。」
「そんなの、俺が頼めば簡単だ。すぐに手続きしてやるよ。」
大家さんはそう言ってメロディーナと出て行った。
え……あの、ちょっと?
「よかったじゃないか。君は一人じゃないぞ?それに男なら責任を取らないとな。」
医師がローレンスの背中を叩きながらそう言った。
えぇー?今ってそういう問題か?
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