側妃としての役割

しゃーりん

文字の大きさ
1 / 14

1.

しおりを挟む
 
 
 
フェリシア・ムジーナ侯爵令嬢は、一月後に結婚するはずであった。

婚約者が愛人と一緒に崖崩れに巻き込まれ亡くならなければ………

愛人の存在は知っていた。『高位貴族に愛人は当然だろ?』と平然と言う人だったから。



結婚が無くなり、両親も兄夫婦も『今後のことはゆっくり決めればいい』と急かすことなく見守ってくれる。
甥姪と遊んだり慈善活動をしたりして過ごし、気がつけば半年が経とうとしていた頃、王宮から手紙がきた。


『フェリシア・ムジーナ侯爵令嬢を国王の側妃として召し上げたいがどうだろうか』


お伺い?王命よね?…既に決定事項なんだろうなぁと想像もしなかった今後を他人事のように思っていた。

『高位貴族に愛人は当然』その愛人に似たような立場に自分がなるとは。



王宮で仕事をしている兄が帰ってくるなり側妃の事実を確認した後、謝ってきた。


「すまない、フェリシア。側妃の件は私のせいかもしれない…」


皆、兄がどう関わっているか疑問で首を傾けた。

兄が言うには、フェリシアの元婚約者が亡くなった時、その婚約者が自分の妹だということを国王は知っていたようだ。
数か月前に、国王から『妹は気落ちせず元気に過ごしているか?』と聞かれたという。
その時、『元々政略結婚で結婚前から愛人を囲っているような男に妹は気持ちがなかったので元気です』と答えたという。
『次の縁談は纏まったのか?』と聞かれたので『まだ』と答えると、『よい縁組があるといいな』と言われた。

ただそれだけの会話だ。

だが今日、王宮で『国王が国内の貴族に側妃の打診をした』と噂になった。
帰る頃には『ムジーナ侯爵令嬢』と相手が確定していて、知らない分からないとしか周りに言えない。
しかし、思い出したのは数か月前のあの会話だった。


「国王陛下は王妃様と結婚されてから2年経つが、お子様がおられない。
 そろそろ側妃をという声があるのは知っていたんだが……迂闊だった。すまない。」


「お兄様のせいではありません。
 王妃様は隣国の元王女様でいらっしゃるから、他国の方が側妃になることは難しいでしょう。
 国内でといっても高位貴族の中では限られますもの。
 野心のある貴族家が今の婚約を解消して娘を側妃にと名乗りをあげることを防ぐ意味でも私が適任だった。
 そう思います。」


「……お前は良いのか?どうしても嫌なら何とかするぞ?…今はいい案が浮かばないが…」


「大丈夫ですわ。
 今後どうするかを考えているところでしたが、意図せず決まってしまいましたね。
 国王陛下と王妃様のお人柄はよくわかりませんが、お二人が私に望まれる形で過ごすつもりです。」


「国王陛下は横暴な方でも粗野な方でもない。
 冷たいく感じるかもしれないが、真面目な方だと思う。ひどい扱いはされないだろう。
 むしろ、王妃様との関係の方が気を遣うよな。
 王妃様がお前と関わることを拒めば、おそらく公の場に出ることはなくなるだろう。
 妃の一人として認める方であれば、公の場にも出る機会はある。
 お前と会えなくなるわけではないが…あまり話せなくなるだろうな。」


「それは寂しいですが、お手紙書きますね。」



王宮に側妃の了承を伝えると、国王陛下から2通目のお手紙が…

側妃になるのは一月後と決まった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

お飾り妻は天井裏から覗いています。

七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。 何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?

【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。 夫は婚約前から病弱だった。 王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に 私を指名した。 本当は私にはお慕いする人がいた。 だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって 彼は高嶺の花。 しかも王家からの打診を断る自由などなかった。 実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。 * 作り話です。 * 完結保証つき。 * R18

何故、私は愛人と住まわねばならないのでしょうか【おまけ】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
オーヴェンス公爵であるアーロンと結婚した、ロヴァニエ子爵のレイラ。 結婚して3ヶ月後。首都とロヴァニエ子爵領を行き来しながら、甘い新婚生活を2人は送っていたが、レイラが首都に居た日、ロヴァニエ子爵領でまた海賊の被害が出た、と聞き、急ぎアーロンと領地へ帰る。 今迄の海賊は船を襲われるだけで済んでいたが、今回は不法上陸され、港が荒らされる被害。 若い女は連れて行かれ、労働力として子供迄攫われるという暴挙に出られ、軍艦を撒かれて上陸した形跡もある事から、連携されて不法入国されたとされる。 レイラとアーロンはこの事をどう解決していくのか−−−−。 *Hシーンには♡付

【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜

紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。 絶望の中、それを口にしたセナ。 セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。 記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。 そして、あなたも私を求めていた。

契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい
恋愛
「あなたとは二年間の契約婚です。満了の際は静かにお引き取りください。」 そう言ったのはあなたです。 お言葉通り、今日私はここを出て行きます。 なのに、どうして離してくれないのですか!?

処理中です...