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しおりを挟むザフィーロが望んだリルベルとの婚約は、先方に受け入れられた。
二人の婚約を結んだときに聞いたが、ザフィーロはリルベルに会う機会がある親族の集まりで、『大きくなったら僕と婚約しようね』と言っていたらしい。
リルベルからそのことを聞いた父親は、年上の少年に憧れる娘の願望なのだと思っていたという。
だが、翌年にリルベルがザフィーロと話しているのを見て、昨年にリルベルが言っていたことを思い出した伯爵はザフィーロに確認したらしい。
『昨年、リルベルに婚約しようと言ったようですが、あなたには婚約者がいますよね?』と。
ザフィーロは答えた。
『あと二年、15歳になれば婚約は解消します。ですのでリルベルに婚約者はつくらないでくださいね』と。
伯爵は半信半疑だったが、二年後になればわかるとエスメラルダに確認は取らなかった。
なぜなら、まだ婚約中であるザフィーロとソンブラ侯爵令嬢の婚約解消後のことを早々と取り決めるべきではないし、どこからか情報が洩れて伯爵家が被害を被ることになっては困るからである。
しかしその間も、伯爵はリルベルに高いレベルの教育を施していたらしい。
ザフィーロが公爵家の跡継ぎになれば、リルベルはその妻になるかもしれないからだ。
そして婚約は現実のこととなったが、エスメラルダは伯爵に確認した。
『ラース公爵家の跡継ぎをザフィーロにするかはまだ決めていません。二年半後、学園を卒業する時に判断しようと思っています。なのでリルベル嬢は次期公爵夫人とは確定していませんが、よろしいでしょうか?』
エスメラルダは妊娠している。もう誰が見ても妊婦なのはわかる。
要するに、自分の子供を跡継ぎとするか、弟であるザフィーロを跡継ぎにするかを二年半後に決めると言ったのだ。
伯爵は答えた。
『構いません。リルベルはザフィーロ様が自分の王子様だと頑張ってきました。公爵夫人を望んでいるわけではありませんので』
王子様、と聞き、エスメラルダは一瞬顔を引きつらせた。
ザフィーロの実父はラルゴ殿下。いわゆる王子様だった。
ザフィーロの存在が認識されていれば、王位継承順位が一桁の王子様であるとも言えたのだ。
まぁ、犯罪者の息子なので放棄していたに違いないが。
こうして無事にザフィーロとリルベルの婚約は結ばれたのだ。
当初は内定で済まし、リルベルが13歳になってから正式な婚約にしようと思っていた。
しかし、エスメラルダはリルベル以外に興味はないと言ったザフィーロを信じたかった。
信じきれないが、息子を信じたい思いが上回った。
だから、正式な婚約にすることで、ザフィーロを信頼している証にしようと決めた。
……ただし、ザフィーロの怪しい行動は報告するようにしてもらっている。
夜の外出、予定にない行動、行方がわからない時間、知らない交友関係、手紙など、学園にいる以外の時間で侍従が把握していないことが対象となる。
信頼したいと言いながら逆の行動のようにも思えるが、これも公爵家の跡継ぎに相応しいかどうかを見極める一環という思いからである。……多分。
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