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しおりを挟むザフィーロは姉上として慕ってきた実母エスメラルダに少し嘘をついた。
実父ラルゴという男は少女を愛でる性癖があったという。
生きている少女を人形のように無表情に躾け、着せ替えて愛でる性癖だったとか。
少女たちの純潔は、その実父に奪われたわけではなく父が興味を失った後に回された貴族が奪っていた。
実父が襲ったのは実母エスメラルダだけだったらしい。
しかし、そのことは公爵家の僅かな人数しか知らず、王家も知らないので、実父は本来であれば処刑されるほどの罪ではなかったという。
だが、王族として相応しくないと自ら毒杯を希望したらしい。
死んで詫びても意味はないのだが、王族が関わっていた犯罪として幕引きに相応しい。
ザフィーロは実父と同じ性癖は確かにない。
だが、これも一種の性癖ではないかと思うことはある。全くないと言ったのは少し嘘になるのだ。
ザフィーロは、7歳のリルベルの泣き顔に一目惚れした。
他の子の泣き顔にいい感情を持ったことはない。
リルベルだけなのだ。
もちろん、笑顔も可愛いと思っている。泣き顔はキッカケだったのだろう。
でも、16歳になった今、違う欲情を抱いている。
リルベルを性的に攻めて泣かせたいと思っている。
きっと、本能的に察知したのだろう。
将来、この子が苦痛や悲しみではなく、悦びの感情で見せる泣き顔が一番美しくなる、と。
まだ幼いリルベルを襲う趣味はない。そこは実父と全く違う。
だが、結婚まで何もせずに待っていられるかと言えば、さすがに無理だろう。
最後まで交わらなくとも、リルベルを泣かす方法などいくらでもある。
15,16歳になれば少しはいいだろう?
口づけなら14歳くらいからでもいいか?
ならあと三年は優しい王子様のような婚約者でリルベルがもっと僕に夢中になるように仕向けるさ。
演じるのは得意だから。
誰だって、好きな相手にはいいところを見せるだろう?
誰だって、好きになるキッカケは人それぞれだろう?
それが一人の人にだけ向いていれば、婚約者を一途に愛する男となるじゃないか。
それを、誰も性癖とは言わないだろう?
だから、これは実母エスメラルダが恐れた性癖とは違うと思うんだ。
だけど、確かに7歳のリルベルに抱いたにしては後ろめたい思いもあって、少し嘘をついたんだ。
安心してほしくて。
リルベルと結婚したいと言った時、姉上は驚くほど血の気の引いた顔をした。
その時にはもうクリスタと15歳で婚約解消する方向で姉上とは話を済ませていたので、次の婚約者の希望を言っても問題ないと思っていた。
『内々に打診しておいて、クリスタとの婚約解消が済んだ頃合いを見て新たに婚約を結びましょう』
そう言ってくれると思っていた。だが違った。
『リルベルって……まだ6歳か7歳の幼女じゃないの!嘘でしょ?!少女どころか幼女趣味?』
ザフィーロに向かって首を横に振った姉は、フラフラっと部屋から出て行き、翌日にはレイリーとの結婚を決めていた。
姉とレイリーが何年も付き合っていることには気づいていたが、結婚する気はないようだったのに。
つまり、この時までザフィーロを跡継ぎにするつもりだったのだと気づいた。
だが、リルベルとの結婚を望んだことで、姉上は僕の何かを恐れていた。
偶然知ったのが、姉の元婚約者、元王子殿下の性癖のこと。
姉の歳を考えるとまさかと思ったが、あの拒絶具合を考えると自分が姉の子だと思うとしっくりきた。
あぁ、失敗したなぁ。言うのが早すぎた。せめて、クリスタとの婚約を解消してから言えばよかった。
実父のことを知っていたら、僕なりにリルベルを望む理由を尤もらしく説明したのに。
それからは、僕的には姉に子供ができてくれれば、面倒な公爵にならずに済むかなって思うからしばらく様子見したんだ。
だけど、やっぱり僕が跡継ぎかぁ。
可愛い妹には苦労させたくないから、仕方ないね。
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