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6.
しおりを挟む領地へ帰ってきた。
シャルロッテは元気にしてるかな?
そう思いながら屋敷に入ると、シャルロッテが勢いよく走ってきて抱きついてきたので、思わず抱き上げてしまった。
「ジェット、お帰りなさい。」
そう言って首に抱きついてきたシャルロッテは少し成長したように見える。
「ただいま、シャル。少し大きくなったかな?」
「うん。5歳になったよ。」
ズレた答えがまた可愛い。微笑ましく思っていると声がかかった。
「シャルロッテ様、ご挨拶をお忘れで?」
あっ!と声を出したシャルロッテが腕から下りようとするので下ろしてやると、僕の前に立ってカーテシーをした。
「シャル、上手に挨拶できたね。」
頭を撫でてやると嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「シャル、紹介してくれる?」
「はい。こちらはマナーを教えてくれるトロル先生です。」
上手に紹介してくれたシャルロッテの頭をまた撫でてから、トロル先生に向き合った。
「初めまして、ラビート伯爵家のジェットです。シャルロッテをよろしくお願いします。」
「初めまして、アレッタ・トロルと申します。ひとまず一年契約でお世話になります。」
トロル先生は30歳過ぎのように見える。
シャルロッテの様子から、問題はなさそうだった。
まぁ、問題があったら侍女からの報告で即刻違う人に替えられるだろうけど。
後で聞いたところによると、トロル先生は礼儀作法の講師の資格を取って、年単位でいろんな貴族家を教えて回っているそうだ。結婚する気は全くなく、仕事が生きがいらしい。
荷物を置いて着替えるからまた後で、とお茶の時間に会う約束をしてシャルロッテと別れた。
シャルロッテは元気だ。
それがウォルトの唯一の希望なのだろうけど、ウォルトの結婚生活を思うと気の毒だった。
お茶の時間、シャルロッテのおしゃべりは止まらない。
一生懸命に話してくれる姿がとても可愛くて、兄のような父のような気分だった。
「ジェットはずっといる?」
「そうだね。ここは僕の家だからね。
また王都やどこかに出掛けることはあっても帰ってくるよ。」
「またお母様のお話してくれる?」
「いいよ。」
「ジェットもおじ様と一緒にお仕事するの?」
「そうだよ。僕もこの領地のために働くんだ。シャルもお勉強が始まっただろ?」
「うん。字の練習もしてるの。」
「そっか。じゃあ、書いたものをシャルのお父様に読んでもらおう。
お手紙を書けるようになれば、喜んでくれるよ。」
「そっか。がんばるね。ジェットにも書くね。」
父親となぜ一緒に暮らせないのか理解できるのはまだまだ先だけど、親子の繋がりはなくしてほしくなかった。
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