従姉の子を義母から守るために婚約しました。

しゃーりん

文字の大きさ
6 / 16

6.

しおりを挟む
 
 
領地へ帰ってきた。
シャルロッテは元気にしてるかな?
そう思いながら屋敷に入ると、シャルロッテが勢いよく走ってきて抱きついてきたので、思わず抱き上げてしまった。

「ジェット、お帰りなさい。」

そう言って首に抱きついてきたシャルロッテは少し成長したように見える。

「ただいま、シャル。少し大きくなったかな?」

「うん。5歳になったよ。」

ズレた答えがまた可愛い。微笑ましく思っていると声がかかった。

「シャルロッテ様、ご挨拶をお忘れで?」

あっ!と声を出したシャルロッテが腕から下りようとするので下ろしてやると、僕の前に立ってカーテシーをした。

「シャル、上手に挨拶できたね。」

頭を撫でてやると嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「シャル、紹介してくれる?」

「はい。こちらはマナーを教えてくれるトロル先生です。」

上手に紹介してくれたシャルロッテの頭をまた撫でてから、トロル先生に向き合った。

「初めまして、ラビート伯爵家のジェットです。シャルロッテをよろしくお願いします。」

「初めまして、アレッタ・トロルと申します。ひとまず一年契約でお世話になります。」

トロル先生は30歳過ぎのように見える。
シャルロッテの様子から、問題はなさそうだった。
まぁ、問題があったら侍女からの報告で即刻違う人に替えられるだろうけど。

後で聞いたところによると、トロル先生は礼儀作法の講師の資格を取って、年単位でいろんな貴族家を教えて回っているそうだ。結婚する気は全くなく、仕事が生きがいらしい。



荷物を置いて着替えるからまた後で、とお茶の時間に会う約束をしてシャルロッテと別れた。


シャルロッテは元気だ。
それがウォルトの唯一の希望なのだろうけど、ウォルトの結婚生活を思うと気の毒だった。
 


お茶の時間、シャルロッテのおしゃべりは止まらない。
一生懸命に話してくれる姿がとても可愛くて、兄のような父のような気分だった。

「ジェットはずっといる?」

「そうだね。ここは僕の家だからね。
 また王都やどこかに出掛けることはあっても帰ってくるよ。」

「またお母様のお話してくれる?」

「いいよ。」

「ジェットもおじ様と一緒にお仕事するの?」

「そうだよ。僕もこの領地のために働くんだ。シャルもお勉強が始まっただろ?」

「うん。字の練習もしてるの。」

「そっか。じゃあ、書いたものをシャルのお父様に読んでもらおう。
 お手紙を書けるようになれば、喜んでくれるよ。」

「そっか。がんばるね。ジェットにも書くね。」


父親となぜ一緒に暮らせないのか理解できるのはまだまだ先だけど、親子の繋がりはなくしてほしくなかった。






 

 


 


 



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染と結婚したけれど幸せじゃありません。逃げてもいいですか?

恋愛
 私の夫オーウェンは勇者。  おとぎ話のような話だけれど、この世界にある日突然魔王が現れた。  予言者のお告げにより勇者として、パン屋の息子オーウェンが魔王討伐の旅に出た。  幾多の苦難を乗り越え、魔王討伐を果たした勇者オーウェンは生まれ育った国へ帰ってきて、幼馴染の私と結婚をした。  それは夢のようなハッピーエンド。  世間の人たちから見れば、私は幸せな花嫁だった。  けれど、私は幸せだと思えず、結婚生活の中で孤独を募らせていって……? ※ゆるゆる設定のご都合主義です。  

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

元公爵令嬢、愛を知る

アズやっこ
恋愛
私はラナベル。元公爵令嬢で第一王子の元婚約者だった。 繰り返される断罪、 ようやく修道院で私は楽園を得た。 シスターは俗世と関わりを持てと言う。でも私は俗世なんて興味もない。 私は修道院でこの楽園の中で過ごしたいだけ。 なのに… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 公爵令嬢の何度も繰り返す断罪の続編です。

執着はありません。婚約者の座、譲りますよ

四季
恋愛
ニーナには婚約者がいる。 カインという青年である。 彼は周囲の人たちにはとても親切だが、実は裏の顔があって……。

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

冷たい婚約者が「愛されたい」と言ってから優しい。

狼狼3
恋愛
「愛されたい。」 誰も居ない自室で、そう私は呟いた。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

魅了魔法が効かない私は処刑されて、時間が戻ったようです

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私リーゼは、ダーロス王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約破棄の際に一切知らない様々な悪行が発覚して、私は処刑されることとなっていた。 その後、檻に閉じ込められていた私の前に、侯爵令嬢のベネサが現れて真相を話す。 ベネサは魅了魔法を使えるようになり、魅了魔法が効かない私を脅威だと思ったようだ。 貴族達を操り私を処刑まで追い詰めたようで、処刑の時がやってくる。 私は処刑されてしまったけど――時間が、1年前に戻っていた。

処理中です...