7 / 16
7.
しおりを挟む2日後の夜、ウォルトに教えてもらった家を訪れた。
僕が来ても来なくても専属娼婦の契約は始まっているらしい。
とりあえず、挨拶だけでもと思いやって来て驚いた。
「えーっと、あなたが雇われた専属の?」
「はい。マリンです。よろしくお願いします。」
「…何歳?」
「20歳です。」
「え?本当に?15歳くらいかと…」
「童顔ですよね。小柄ですよね。でも20歳なのです。」
「ああ、ごめん。」
「いいのです。では行きましょう?」
「どこに?」
「ベッドに。抱きに来られたのですよね。どうぞ。」
そう言って、奥の部屋に入っていく。
え?マジで?
部屋に向かうと、マリンは服を脱いでいた。
小柄の割には胸はそこそこある。
「あのですね、私、初めてなのです。
なので、ご迷惑かもしれませんが、今日は優しくしてほしいです。」
「は?初めてなの?本当にいいの?僕で後悔しない?」
「いいのです。
ワケあって結婚はできないし、でもその辺の男や娼館で初めてを経験する気もなくて。
でも、この歳になっても一度も経験しないまま過ごすのも何かモヤモヤして。
つまり、経験してみたいと興味はすごくあって。後腐れなく楽しみたいのです。」
「っはは。女性もそう思うんだね。
正直言って、僕もそんなに経験豊富ってわけじゃないんだ。
だから、痛かったり嫌なことがあれば言ってくれたらいい。
契約は一年かな?一緒に楽しもうか。」
女性を初めて抱いたのは学園に入ってすぐの頃。
毎年、新入生を相手に閨での行為を教えてくれる未亡人や高位貴族の愛人を辞めた裕福な女性が何人かいるらしい。
爵位も何も関係ない。ただ希望に沿った男を探してもらうそうだ。
僕は先輩から声をかけられて何も知らずに連れて行かれた。
お金を取ることもしない。娼婦なわけでもない。
ただ、若い子に教えて数回遊ぶだけ。それが一つの楽しみでもあるらしい。
1回~数回で終わることがほとんどだが、僕は相手の希望で10回ほど続いた。
これ以上続けると別れがつらくなると言われて、さよならした。
挨拶に来たつもりが、結局そのまま夜を過ごしてしまった。
純潔の女性は僕も初めてだったので、時間をかけて優しく抱いた。
彼女は満足してくれたようだ。
次は10日後に訪れると、遅いと言われた。
10日毎だと月に3回しか来ないのか?契約金を貰いすぎて申し訳なくなると言われた。
じゃあ、週に一度?と聞くと、結局3日に一度と押し切られた。
来る回数が少ない方が楽でいいと思うのに、マリンは興味が勝っているみたいだ。
そんなに楽しみにされると、僕としても嬉しくなる。
回数をこなすと、マリンの感じやすいところがわかるようになり、マリンもどんどん敏感に反応するようになった。
だけど、お互い情事に溺れないように気をつけた。
この家以外では会わなかったし、朝まで過ごすこともしなかった。
そうして一年が経ち、マリンの契約期間を終えた。
最後の夜もいつも通りに楽しんで、笑顔で別れた。もう会うことはないだろう。
3日後、家に行ってみた。違う女性がいた。
マリンとはまた違うタイプの女性だった。18歳。彼女も初めてだった。
優しく抱いた後、結局彼女とも3日毎に訪れる約束になった。
どうやらウォルトは、お金には困っているけれど娼婦になっていろんな男に抱かれることに抵抗がある女性を選んでいるのではないか?
初めてなら病気持ちの心配もない。
一年だけ同じ男と肌を重ねるのは、恋人と別れるようなものだ。抵抗は少ない。
こうして僕は一年毎に替わる専属娼婦の純潔を奪うことから始まり、積極的に快楽を求める女性へと仕上げるような情事で終える流れで何年も過ごした。
190
あなたにおすすめの小説
幼馴染と結婚したけれど幸せじゃありません。逃げてもいいですか?
鍋
恋愛
私の夫オーウェンは勇者。
おとぎ話のような話だけれど、この世界にある日突然魔王が現れた。
予言者のお告げにより勇者として、パン屋の息子オーウェンが魔王討伐の旅に出た。
幾多の苦難を乗り越え、魔王討伐を果たした勇者オーウェンは生まれ育った国へ帰ってきて、幼馴染の私と結婚をした。
それは夢のようなハッピーエンド。
世間の人たちから見れば、私は幸せな花嫁だった。
けれど、私は幸せだと思えず、結婚生活の中で孤独を募らせていって……?
※ゆるゆる設定のご都合主義です。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
元公爵令嬢、愛を知る
アズやっこ
恋愛
私はラナベル。元公爵令嬢で第一王子の元婚約者だった。
繰り返される断罪、
ようやく修道院で私は楽園を得た。
シスターは俗世と関わりを持てと言う。でも私は俗世なんて興味もない。
私は修道院でこの楽園の中で過ごしたいだけ。
なのに…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 公爵令嬢の何度も繰り返す断罪の続編です。
半日だけの…。貴方が私を忘れても
アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。
今の貴方が私を愛していなくても、
騎士ではなくても、
足が動かなくて車椅子生活になっても、
騎士だった貴方の姿を、
優しい貴方を、
私を愛してくれた事を、
例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるゆる設定です。
❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。
❈ 車椅子生活です。
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
魅了魔法が効かない私は処刑されて、時間が戻ったようです
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私リーゼは、ダーロス王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
婚約破棄の際に一切知らない様々な悪行が発覚して、私は処刑されることとなっていた。
その後、檻に閉じ込められていた私の前に、侯爵令嬢のベネサが現れて真相を話す。
ベネサは魅了魔法を使えるようになり、魅了魔法が効かない私を脅威だと思ったようだ。
貴族達を操り私を処刑まで追い詰めたようで、処刑の時がやってくる。
私は処刑されてしまったけど――時間が、1年前に戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる