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しおりを挟む王太子殿下に少し怒りを込めて聞いてみた。
「なぜ、私が愛妾になることが勝手に決められているのですか?」
「……それは、私が望んでいるからだ。」
「私が望んでいなくても?」
「……ああ。君を逃がす気はない。」
「どうして?私はあの3年前の夜以前も殿下とはクラスメイトとしてしか接していません。
それに、ほとんど話をしたこともありません。」
「そうだね。明確にいつというのはわからない。だけど、私の意識は常に君に向いていた。
そして、ハイネもそれを知っていた。というか、ハイネに指摘された。」
「妃殿下も?……でしたら私がここにいることはよくないのでは。」
「いや、違う。彼女は応援してくれている側だ。
私たち夫婦に恋愛感情は全くないんだ。この国を豊かにするための、仲間だな。
彼女にも他に自分の思い人がいる。」
……え?誰もが憧れた二人はニセモノ?
「王族や公爵令嬢はしがらみが多すぎて自分の気持ちだけで結婚できない。
子供の頃から教育されてきているんだ。
上に立つには相応の覚悟が必要になる。
婚約も貴族のバランスを考えて選ばれている。
それを崩せば、国も不安定になるんだ。
身勝手な行動を取れない私とハイネは同士だった。
跡継ぎを設けた後は愛妾を囲っていいというのが王族の暗黙の了解なんだ。
だから、ルーチェ。君は今ここにいる。」
「だからって言われても。私は侍女として働こうかと思って……」
「ん?逃げるつもり?鎖がいるのかな?」
「鎖?」
「手は不便だから、足に鎖をつけて部屋から出ないように監禁されたい?」
は?監禁?っとんでもない。首を横に振るしかない。
「そうだよね。3年もルーチェを待ってたんだ。
ようやく毎日会えるのに、気づかない間にいなくなるなんて許せないからね。
私の心の平穏のために、ここにいてくれるよね?」
ここにいる選択肢しかないじゃない。でも、ここで何をして過ごせばいいのよ。
「愛妾って普段は何をすればいいのでしょう?」
「出ていく以外は何をしてもいいって言いたいけれど、とりあえず慣れてくれたらいいかな。」
「ここでの生活に?」
「そう。私に抱かれる毎日に。」
え……愛妾だからそうなんだろうけれど、さすがに毎日はないよね。
「今すぐにでも抱きたいけれど、メイクと髪色を元に戻そうか。」
浴室に連れて行かれると、お湯が溜まっていた。……準備万端すぎて怖いわ。
殿下が出ていくのを待っていると、『一緒に入る』という。
冗談じゃない。無理やり追い出して一人で入った。
髪と顔を元に戻しながら殿下への接し方が雑になっている自分に気づいたけれど、どうでもよくなった。
お湯に浸かりながら考えていた。
卒業パーティーで元夫が私との婚約破棄を狙い、襲うという計画がなければ普通に結婚できたのだろうか。
……いや、殿下は何らかの方法で結局は元夫と取引をしていた気がする。
あれから3年、殿下がハイネ様と結婚してからは2年。
2年を過ぎると側妃が娶れると聞いたことはある。愛妾もそうなのだろうか?わからない。
第二王子殿下との一晩が王太子殿下との毎日になってしまったけれど、そのうち飽きるだろう。
その時は新たな仕事を紹介してもらうか、遠くに逃げることにしよう。
服を着ようとしたがそこに置いてあったのは先ほど服の下に着ていた夜着よりもさらに煽情的なスケスケの夜着一枚だけだった。
コレを着て出てこいってことね。はいはい。わかりましたよ。
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