5度目の求婚は心の赴くままに

しゃーりん

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それから少しして、オリバーはパトリックと話す機会を得た。

パトリックは今はエメット公爵家を訪れることはなく、婚約者のルナセアラがハリールス侯爵家を訪れているため、なかなか顔を合わせる機会がなかった。

そこでルナセアラに、パトリックがルナセアラを公爵家に送り届けた際に話がしたいと書いた手紙を渡してもらった。

ルナセアラが馬車から降り、オリバーがハリールス侯爵家の馬車に乗り込んだのだ。
 

「やあ、パトリック。こんな形で悪いね。」

「いえ、お久しぶりです。オリバー殿下。」

「もうすぐ私たちも義理の兄弟になるんだ。そんな堅苦しくなくていいよ。」

「ありがとうございます。それで何かお話が?」

「あるような、ないような?君を間近で見てみたかった。」


パトリックは意味がわからず首を傾げていた。
それはそうだろう。男相手に何を言うのかと戸惑っても仕方がない。
 
だが、あの絵本を見てから、パトリックの顔をちゃんと見てみたかったのだ。
そしてやはり納得した。

うん。とんでもなく美形で輝いて見える。

ミルフィーナが恥ずかしくて逃げたくなることも分かる気がした。
やはり彼女はパトリックを一人の男と認識することを避けていたのだろう。憧れの王子様でよかったのだ。

そして、ルナセアラが惚れるのもわかる。
こんな美形な男に優しくされたら、あまり他を知らないまだ学園に通う前の令嬢が惚れないわけがない。


「王子顔が悲運だったか。」


金髪碧眼の男は他にもいるが、パトリックほど王子顔と言える男はいないだろう。


「……髭でも生やしますか。」


オリバーが何の話をしているのか察したのだろう。王子から遠ざかれと言われたように感じたらしい。
 

「いいや、お姫様になれなかったことで令嬢は現実を見ることができるようになった。君が一人の生きている人間だということをね。」

「……それは何よりです。」


落ち着いた返しに、おや?と思った。


「君は気づいていたのか?」 

「いえ、後になって考えた時、彼女はとんでもなく天の邪鬼な性格だったのではないかと思ったことがありました。
ですが、オリバー殿下の言葉で、彼女が私自身を見ていたわけではないとわかりました。」
 
「なるほど。天の邪鬼か。そう思ったのも不思議ではないな。」


ミルフィーナのエメット公爵家側から婚約を打診し、しかも公開求婚を望んでいたのだ。
ミルフィーナはパトリックに好意がある。そう思って当然だろう。
なのに断られ続ける。そして来年も求婚を望まれる。

求婚を受けたいのに、思わず違う言葉が出てくる。ひょっとして、天の邪鬼なのか?

そう思うのはわかる。
しかし、ミルフィーナはそれ以前の段階で止まっていた。
パトリック自身を見ずに、憧れの王子様に似た外見だけの好意で。

結果、パトリックは現実的なルナセアラを選び、憧れを夢のように見ていたミルフィーナは目が覚めてオリバーに落ちてきた。 

3人共、興味深いものたちではあるが、やはり突出しているのはミルフィーナで、オリバーは満足だった。 

 

 
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