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しおりを挟むエステルにはケントという二歳上の兄と、デボラという三歳下の妹がいる。
デボラはまだ学生で、忙しいはずなのに毎週エステルに会いにやってきていた。
「お姉様ー。お元気?」
病人に対し、”元気”かと毎回聞く無神経さ。
今思えば、こういうところもちゃんともっと注意してやるべきだったと思う。
母を亡くしてから末っ子のデボラは甘やかされてきた。
いや、亡くしてからではない。その前からずっと。
『お母様が亡くなったのは私のせい』と言ったデボラを家族全員が心の傷にならないようにと我が儘を許してきた結果が非常識な令嬢の出来上がりとなったのかもしれない。
「……デボラ、試験前じゃなかった?」
「今更頑張ってもわからないもの。それに将来役に立つものだとも思えないし。楽しく会話ができれば社交なんて問題ないものでしょ?」
そんな単純じゃないわ。
でも、デボラなら馬鹿にされてても気づかなくて幸せかも。
「ねぇ、デボラ。サリーを連れて帰ってくれない?」
「サリーを?……どうして?」
「元々私の侍女でもなかったし、デズモンド侯爵家の侍女がいるから。ただ寝ているだけの私に多くの侍女はいらないのよ。サリーをあなたの侍女にしてあげて?」
デボラは少し考えた後、笑った。
「そうね。お姉様にはもう不要よね。サリー、可哀そうだから私の元に置いてあげるわ。荷物を纏めて来なさい。」
「はいっ!デボラ様っ!!」
サリーは嬉しそうに部屋から出て行った。
エステルに挨拶をする気もないらしい。
「ねぇ、お姉様。アイザックお義兄様は?」
「今日は出かけているわ。」
「そうなの?残念。一緒にお茶をしたかったー。」
アイザックは無口だから、一方的にデボラが話しているだけらしいけどね。
「……デボラ、婚約者は決まったの?」
「まだよっ!でも、もうすぐ、もうすぐ決まるの。楽しみだわっ!」
「……そう。どちらの方?」
「ふふ。内緒。」
「内緒なの?」
「だって、お姉様、羨ましがるに決まっているわ。あ、ショックかもしれない。」
多分、そのどちらでもないわ。
あなたの婚約は、うまくいかないから。
デボラ、あなたの社交界での評判を知っている?
私がこうして臥せっている間に、更に悪くなっているのでしょうね。
お父様とお兄様が気の毒だわ。
「じゃあ、サリーは貰って帰るわね。お姉様、さ・よ・う・な・ら。」
「ええ。さようなら。」
またね。ではなくて、さようなら。
私が死ぬまでもう来る気はないってことね。
これが最期。
可愛かった妹は、もうとっくにいなかったのね。
もう私もあなたの顔を見なくて済むから、笑顔で別れを告げられたわ。
……さようなら。
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