いくつもの、最期の願い

しゃーりん

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デボラが部屋で死んでいた。

アドレー伯爵は、息子ケントにそう告げた。


「え……?デボラが?どういうことです?」

「わからない。しかし、包みがそばにあった。あの毒だと思う。自殺なのか、あるいはローザに何かあれば飲めと渡されていて毒と知らなかったか。あの子は毒を見たことはなかっただろうから。」


妻の時は、ローザが飲ませた。
エステルの時は、サリーがデズモンド家で飲ませていた。
だからデボラは毒がどんなものかを知らないはずだ。


「ローザはあんなことを言っていたのに、結局は主であるデボラと共に心中しようと?」 

「そうかもしれない。」

「……父上、ローザとサリーは秘密裏に処分するつもりですよね?
それよりも、あの二人に自ら毒を飲んでもらってはどうでしょうか。エステルに毒を飲ませたことを気づかれて捕まり、隠し持っていた毒で自殺。
デボラも殺そうと、前もって部屋に毒を置いておき、それを口にしたデボラも死んだ。 
そういうことであれば、あの毒も堂々と届け出られるのではないでしょうか?」
 

なるほど。
デボラの名前が漏れては家名に傷がつくのでローザたちを私刑にするつもりでいたが、どこであの毒に気づいたか説明が難しかった。
下手をすると、我々が妻やエステルを殺したと間違われかねない。
 
だが、デボラもローザもサリーも死人であれば、ローザとサリーにだけ罪を押し付けられる。


「よし。それでいこう。デボラの幸せのためになら死ぬのは本望らしいからな。」


アドレー伯爵家の名誉はデボラの幸せにも繋がるのだから。

エステルの最期の願いも叶えられる。
ルイスがデボラに危害を加えられることは、もうない。
アドレー伯爵家の家名をデボラの行いで傷をつけることも、もうない。 

デボラを殺した罪は私自身が知っている。
たとえ、ケントや領民を守るためでした行為でも、罪は背負うつもりだ。

いつか……

そう思い、毒の包みを握りしめた。





未知の毒を使っての殺人。 

犯人は、アドレー伯爵家侍女のローザ及びサリー。
アドレー伯爵夫人、エステル、デボラの三人を殺した後、犯行がバレたため自殺。

動機は、アドレー伯爵夫人及び次期伯爵夫人になるため。

話の流れから、そういうことになった。
 

ローザは伯爵の後妻になりたくて夫人を殺害したのに、十数年も相手にされなかった。
そこで、娘のサリーを長男ケントの嫁にしたいと考えたが、長女エステルに反対され続けていた。
その恨みでサリーがエステルを殺害、デボラも感づいた可能性があるため頭痛薬の中に毒を紛れ込ませて殺害。

犯行がバレて捕まったため、隠し持っていた毒で自殺。

そういうことになった。



また、ローザをアドレー伯爵家の乳母に紹介した貴族家も徹底的に調査されたが、当時の当主が亡くなっており、ローザたちとの関係や彼女たちの本当の素性がどこかは判明しなかった。
 
念のため、解毒剤は開発された。
徐々に毒を摂取させられた場合には、間に合う可能性があるかもしれないから、と。


しかし、この毒を一気に摂取したと思われる変死体も、体が棒のように動かなくなる末期症状も、これ以降、誰にも現れることはなかった。


 
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